0229:居住特化

 ってあれ? そういえば、ここの迷宮……最終階って何階なんだろうか? 地下五階以降は手が入ってないんだよな。確か。確認してなかったな。……九万六千階? 何それ。おいおいおい。クリアさせる気無いだろ。

 ちぇっ。判るのは階数だけ……か。どんなボスが居るのかとか、どんな宝箱設定になってるのかとか、一切見えない。そもそも、地下六階以降がさっぱり見えない。


 それ。っていうか、いや、ちょっと待て。茂木先輩も弄ったのは上の方の階だけで……とか手紙に書いてあったような。この迷宮の最深部とか……何がいるの? 誰が作ったの? 最も深く暗き穴ってこと? 手紙……手紙にヒントが……。


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 で。300歳になったとき、すべてが煩わしくなって、無性に一人になりたくなってさ。誰も来ない場所に引きこもる事にした。そう、使い方が良く判らなくて放置していたスキル、迷宮編集を使って。


 迷宮編集は文字通り、迷宮の構造や、出現する魔物をいじくれるスキルだ。多分、神様は、だから地下に迷宮のあるオベニスに、俺を連れて行ってくれたんだろうけど。実はすっかり忘れてたわ。

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 神様は茂木先輩を地下に迷宮のあるオベニスに出現させたってことだから……迷宮自体は、先輩がこの地に出現する前から存在していた。で。迷宮編集というスキルでイロイロ弄った……。


 というか、最初から、神様から迷宮の所有権を譲られていたんじゃないだろうか? このさりげなく巨大で遠大な迷宮を。だってなんか、聞いてた迷宮のイメージに比べて規模が大きすぎる。通常の迷宮は多くても百階くらい。十階までしかない迷宮とかもあるって言ってたもんな。

 

 で。俺は当然、神様からこの迷宮の所有権を譲られたりしていない。けど、現在迷宮編集機能が使えている。つまり。


茂木先輩からは「日本人男子」に彼の遺産は譲られるようになっていた。

俺が扉を開けた時点で、継承者と認定された。

俺は迷宮編集というスキルを持っていないので、新規で何か作ることはできない。

だが、迷宮編集用の端末は継承されているので使える。


 こういうことだろうか?


 出来ないことは、新規で何かをいじる、生み出すってことだけで、茂木先輩が彼の長かった独り暮らしの際にイロイロと弄っていたオリジナル要素はありがたく活用できるのだ。


 階層的には五階層までか。たった、だけど、広さまでカスタマイズできるのだから文句は言うまい。


 大きいのは配置出来るオブジェや建造物、魔物だろうな~、


 そのサンプルは膨大な数だ。元からあったっぽいものは極めて少数で、先輩が産み出したと思えるモノで溢れていた。漫画といい、彼がどれだけの時間を……持て余していたのかが伝わってくる。くそう。友だちに、いや、せめて話し相手になれたら良かったのに。


 よく見たら、塔の中にバベルの塔モドキとか、五重塔モドキとか、東京タワーモドキとか、スカイツリーモドキとかもあった。巨大建造物の中には、東京都庁モドキも。橋も無駄に大きい東京ゲートブリッジモドキとか。


 そんな特殊な建造物どうするんだ? と思ったら、床面積を狭めて、高さを生み出せば、かなりの天井高を稼げることが判明した。というかそもそも、迷宮編集のスキルがあればフロア自体を新規で生み出すことも可能だったみたいだ。膨大なダンジョンポイントと引き換えに。


 そういえば、一部商人からこの魔道具は売り物にできないのか? と問われた、地下居住区の近代設備……灯り、コンロ、冷蔵庫、クーラー等は、迷宮の罠などの魔道具と同じ造りになっている。迷宮の罠は基本、迷宮外に持ち出すと崩れて消失する。実際にやってみたら、そんな感じだった。


 前にも言った通り、チェックを外して持ち出し可能にするには消費ダンジョンポイントが三倍なんていうのは優しいもんで、三十〜四十倍必要になる。モノによっては百倍とかも。それはさすがにDP消費が大きすぎて、コスパに見合わない。


 まあ、なので確かに、脅威のパイセンの謎技術力が集結しているのだが、実際に訪れて自分の目で見て、触ってみなければ、この地下都市の姿は伝わらないと思う。


 情報漏洩というか、そこまで一般的に隠すつもりもないのだが、それ目当てだけで集われても対処が出来ないからね。


 とりあえず、地下を有用活用しない……という選択肢は無いようだ。民意ってヤツが無言のプレッシャーがとんでもない。


 なので地下は居住区に特化しよう。コンパクトにまとめすぎたせいもあるが、簡易住宅では如何ともし難い。オベニスの人口や、周辺の街や村からの避難民を収容しても、余裕ある戸数を用意したい。

 まあ、人口は今後、この数倍、数十倍に膨れあがる可能性が高いので、色々考えないとなのだが、当面、現在の約三倍の収容人数が確保出来れば問題無いかと思う。


 再稼働するまで、最大で一週間と言ってある。地下での豊かな暮らしを気に入っていた住民も渋々退避したようだ。


 ちなみに、この迷宮編集のシステム、建物や階層自体をいじったりする場合、人が居ると操作ができない。これはDPの入出、変動があるかなしかで判断している様だ。今はいろいろといじれる=地下に人は居ないってことになる。


 大体で言うと、オベニスは半分以上が燃え、都市機能を失っている。瓦礫の撤去が大変過ぎたが、魔術を使用して強引に地慣らししてしまった。


 そこに、大きめの天幕(サーカス的なヤツ)を幾つか、迷宮持ち出し可能に設定して設置する。これは主な部品が布系で、機械的な要素が少ないからか、比較的安価だったのだ。


 これまでの快適な生活から一転、テント生活になる者が多かったのでちょっと気の毒だったが……だが、このままではどうにもこうにも行き詰まるのは目に見えている。


 ということで、余裕のある都市計画ということで、簡易住宅のちゃんとした版というか、五階建て版みたいなマンションというか、住宅建造物があったので、住宅区に指定した部分にそれを建てていく。

 

 細かく設定するのは面倒だし、そもそも新規は生み出せない。なので、パイセン仕様のワンルーム、2LDKを中心に、3LDKを上限にフロアを設定する。


 この世界の世帯人数は、接触禁止の風習? からか、比較的少ない。オベニスは独身者、夫妻、夫妻+子供が一人。っていうパターンが大多数を占めるかな。年長者は死ぬし、子供は生まれにくい。さらにオベニス領は大氾濫で多くの男が死んでいる。


 イレギュラーは後で対処するとして、団地群の間取りは定番で埋めよう。


 飾りなどの仕様は団地のちょい上のランクって感じだろうか。こちらの世界で考えると五階は高層建造物に入る。城砦都市では考えられない、スッキリした住宅街だ。


 公園とか……空き地とか……まあ、今後、いろいろな領の庁舎とか、倉庫とか、さらに施設が必要になるだろうからね。余裕を持って緑を配置していった。


 ちゃんと昼夜があるので、日当たりとか考えないといけないから結構大変だが、隙間を確保しつつ、大体五倍ちょいの収容人員となるハズ。置いてある設備等はこれまでと変わらない。


 さらに残りの半分の土地に、緑化地帯、病院、孤児院、教会、各種学校など想定予定した建造物も用意していく。道もそこそこ幅広に設定しておかないとだからね。




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