0228:事前手配
イリス様に意識を失う前に最終決断してもらおうとしたら「細かいコトは判らないけど、好きにしていい。あ。でも、施すのはダメ」と言われたので、王都出発前にその方針で進めることにしておいた案件がいくつか。
だって、目覚めたら即「王都行く」って言い出したからね。それに対応出来る俺たちも準備万端ではあったんだったんだけど。
ファランさんもイリス様に遅れて数時間で目を覚ました。いたしたのはイリス様から一晩明けて次の日だったんだけどね。なんだろうこの差は。
イリス・アーウィック・オベニス
ヒーム 女 力451 躯374 器185 敏386 知121 精229
統率強化
魅力増幅
武芸5
武器7
馬術5
麻痺の呪い
戒めの呪い
鈍重の呪い
こうだったパラメータが、事後になると
イリス・アーウィック・オベニス
モリヤ 女 力667 躯631 器584 敏540 知308 精475
戦之神
統率強化
魅力増幅
螺旋修復1
武芸7
武器8
騎乗6
こうなっていた。で。ファランさんが。
ファラン・ネス
ヒーム 女 力87 躯123 器187 敏154 知274 精254
魔力制御5
→火5
風4
闇3
召3
馬術3
麻痺の呪い
戒めの呪い
これだったのが。
ファラン・ネス
モリヤ 女 力254 躯306 器251 敏337 知561 精542
多重処理
螺旋修復1
魔力制御8
→火6
風5
雷5
闇4
召4
騎乗5
こうだ。パラーメタスゴイ。呪い消えてた。で、さらにいろいろと生えてた。
「モリヤ……今後「鑑定」は迂闊に使わない方がよいかもしれん」
実は。ファランさんも辛かったのだが、イリス様を「鑑定」した際になぜか、これまでよりも時間がかかり、鼻血が出て、頭がクラクラとしてきたのだ。魔力不足ではない。余剰があることを確認して使用したにも関わらず、だ。
なので、同じ境遇? のハズのミアリアも「鑑定」してみようと試みたら、ファラン様と似たようなの負荷がかかったので途中で止めた。そういえば、アルバカイト戦後に森で「鑑定」した時も、結構辛かったのを思いだした。それ以外のモロモロの不安要素やドキドキが混ざっていたので、体調不良の一環と判断しちゃったんだよな。
「純粋に……自分よりも格が上の存在に術を仕掛けようとすると、術者に負担が掛かる。判りやすいところでいえば、竜等の上位の魔物に弱体化の魔術で攻撃しようとすると、術を発動出来ずに死ぬことがある」
「……ファランさん、いや、イリス様は既に格上なので負担が凄かった? と?」
「ファランはまだマシ……という所だろうが、我が君はおかしいくらい強化されている。特にギフトに「神」の文字がある……というのは……本来、ヒームには有り得ぬ。神に近いと言われていたハイノルドですら、神の名を冠するギフトを持つことは早々に無かったと言われているからの」
「……そうですか」
「少なくとも、「鑑定」は便利だから使っておこう……というレベルでは使わない方がよいな。必要に応じてどうしても……という時は仕方ないが」
「判りました」
まあ、イリス様と……オーベさんか。特にこの二人は要注意だな……「鑑定」をする際には命がけと。
「普通の者であれば……それほど不味くはないじゃろ。辛くなりかけたら即、やめておけ」
で。
肝心の幾つかの事前手配案件なんだけど。
オベニスでは給与、日当、支払い、何でも良いのだが、仕事をして収入を得た際に、証明書を発行することにした。雇った側が「誰に幾ら支払ったか」の帳簿と対応出来る「給与明細」だ。
で、その給与明細に応じて、地下住居の家賃が確定する。ぶっちゃけ、低所得者にはかなりお安い値付けになっているので、無理では無いハズだ。
戸籍と住民票など、その辺の登録はキチンと出来ているので、それに情報をひとつ追加すれば良いだけだ。個人情報の漏洩とか、プライバシーがどうのとかあまり関係ない世界なので、よかったと思う。
あ。そうか。もう、給与の支払時に税金天引きだな。で、給与明細を役所に持っていくと、家賃分以外を払戻しされる……ってことでいいか。こうすれば、労働者の収入と、雇い側の支払いの精査も出来るし。
とりあえず、家賃収入を絡めた新しい税の形ということで、それで賄えるのも含めて、地下都市を充実させ、構築する方針で行こうと思う。
地下一階は既に居住区として運営がスタートしてしまっている。これをいまさら違う形に変化させるのは……うーん。結構難しい。なので今のままなんだけど……正直、簡易住宅っていうのはね。うん。ちょっとね。納得がいかない。今後もずっと住み続けるというのであれば、もう少ししっかりした作りに変更したいと思うのだが。
まずは一度、この地下フロアから人を外に出すか。モノを持たせて。家賃を支払うことになるけど、どうするかは貴方次第ってことで。ちょっと強引だが、でないと心構えに変化をもたらせないでしょ。不法滞在者的な、もう、動きたくない人ばかりになりそうで。
一度外に出ないと死ぬよって言えば、まあ、うん。大丈夫でしょ。病人とかその辺は優先して運ぶってことで。あーそうか、病院もちゃんとしたの欲しいし。孤児院とか教会もか。
で。作り直し……だな。うん。とりあえず、此の後も何があるか判らない。王国と事を構える可能性だってまだ無いわけじゃない。
地下迷宮を都市にして、避難所としても使えるようにしていかないと。あー未来の話になるけど、不正入居取り締まりの役人とか必要になるんだろうなぁ。やだなー。ディストピアっぽくて。
とはいえ、今回、俺がサービスしすぎな地下都市生成に心が傾いた一番の理由は、ここが迷宮なので様々な操作が迷宮編集の端末で行えるということだ。
何よりも、やろうと思えば、迷宮の随時監視も可能なのだ。アレです、監視カメラを複数設置、複数のモニターでモニタリングして、現在の状況をリアルタイムで把握するヤツです。この世界でアレが可能なのは防衛という意味で非常に大きい。
迷宮のMAPを表示させて特定の人間だけモニターすることも出来るし、盗聴も簡単だ。さらに、俺がモギ部屋にいれば、リアルタイムで罠や魔物を配置できる。侵入者の特定もおかしいくらい簡単なのだ。
攻撃から防御、そして逃亡まで、自由自在な都市っていうのはめったに無いんじゃ無いだろうか? あと、何よりも、こないだの悪魔の人みたいなのが再度襲ってきた場合。迎撃するのに楽なのは地下都市だ。絶対。あ。思い出した。この地下……第三新東●市みたいな運用が可能じゃん……。
敵が攻めてきたりしたら、各施設の移動とか簡単にできちゃうからね。この変更、その場に人とか生物がいると横にズラされる、強制移動されるらしい。壁を造成している時に巻き込まれても、違うどこかの隙間とかスペースに移動するみたいだ。無駄に死んじゃうことはない。良かった。
まあ、入り口を限定できるし、何よりも、フロア入れ換えも可能なのだ。つまり、現在地下一階にある避難区、いや、居住区を最終階と入れ替えることも可能だ。
とりあえず、面倒だが、いったん外に人を出してもらった。天候は晴れ。地下と違って大切だ。
数日の内に作業を終えてしまおう。
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