0223:黒の塔②
「うふふ」
……いきなりの爆弾発言に何が起こったのか、というか、何を言われたのかよく理解出来てない顔をする黒ジジイ。うん、初めて俺も同意するわ。娘が突然あんな感じであんな告白してきたら、呆然とするしかないもの。
「母さんを金で身動きできない様にして、自分の子どもを産ませる。まあ、愛情など何一つ無い親子関係に、親殺しも子殺しもありませんものね。そもそも、貴方は……私を逃がそうとした母さんを殺した。憎き母殺しの仇だ」
「……」
「貴方くらいの魔術士になれば、何一つ証拠を残さずに格下の魔術士を殺すことなど、造作もないこと。それが判ってしまって、私は……一人で生きるという選択が取れなかった」
バスケットボールくらいの大きさの火球が一つ。黒ジジイの右奥の空間に生まれた。
「父上。確かに……私は貴方に刃向かう事が出来なかった。ですが。我が夫に命じられたのです。貴方を、跡形もなく消し去るように……と」
もうひとつ。二つ目の火球が浮いた。黒ジジイの額に汗が浮かぶのは……純粋に熱いのだろう。
「貴方の策は……私の夫を怒らせた。我々に対して……正面から戦う道を選んでいたら。もしかしたら夫は、貴方を殺さずに、生かすように言ったかもしれません」
「バカな」
「くくく。我が夫は貴方と違って根底が優しいのですよ。貴方には理解出来ないでしょうけれど」
さらにもうひとつ。三つめの火球が浮かぶ。高さも違う。囲み込むように配置された火球は……既に逃げ道を塞いでいる。
「ですが。我が同僚を殺したこと。大氾濫を導く魔道具の使用したこと。この二つを重ねてしまったのはマズかった。無理です。どちらか一つであれば……」
「そんなものは」
「ええ、そうです。そちらにはそちらの理由があったのですからね。仕方在りません。貴方はメールミア王国という国全体の事を考えての行動でしたから。ですが、それに巻き込まれ、理不尽に命を落とすことになった身からしてみれば、知ったこっちゃありません。なので。こちらの理由で貴方が今から死ぬのも仕方在りません」
さらに二つ。火球が浮いた。その火球が次第に大きくなる。
「な! この状態から、術を拡大するなど! 貴様!」
「ああ、大した理屈ではありませんよ……同じ場所にもうひとつ先ほどよりも大きく魔力を与えて火球を生み出し、前のモノを消しただけです」
「なんだと?」
「そうですよね。魔術の同時発動、並列発動は父上の研究目標、さらに理想でしたからね。その謎を知りもせず、無知のまま。無能のまま。最新の魔術理論を理解することもなく! 貴方は未練を残して、ここで息絶えるのです。ほら。大事な資料が次々と燃えていきますよ? ってええ、いいですよね。貴方の研究等、このように既に時代遅れ、数世代前の遺物と成り果てるのですから」
汗がダラダラに流れ落ちている黒ジジイは自分の机や後ろの本棚の本やメモ、羊皮紙などが発火していくのを驚愕の顔で見つめていることしか出来なかった。周囲に配置された火球は、さらに大きくなっている。
「では父上。永遠にサヨナラです」
ゴウ!
風と共に生まれた巨大な火球が、塔の最上階の約半分に広がった。一瞬で黒い影と化した黒ジジイは……黒い塵と化して、周囲の机や本、本棚、石で出来た塔の外壁などと一緒に消え去った。
「まだ」
吹き飛ばされた塔の最上部約半分。外の様子が見える。呟いたファランさんは床に魔術紋を生み出した。
踊るように細かく動く指先に従って、緑の光が鮮やかな紋様を描いていく。
「エーディリア!」
黒いネコのような小動物。獣。がいつの間にかファランさんの肩にいた。何か頷くように頭を下げると……エーディリアが光る紋様へ飛び降りた。スッと消える。
(これは?)
(以前言ったな……父……いや、黒ジジイは肉体を失ってもエーテル界に逃げられるようにあらかじめ術を用意していたハズだ。それを……仕留める)
ああ、そういえば……エーディリアはエーテル界での戦闘能力があるんだったけか。
(いくら黒ジジイでもそう簡単にこちらの世界へ戻ることは出来ない。あとはエーディリアへ任せるのみだ)
(見えてるんですか? 今も)
(いや、ただ、戻れば……何をしてきたかは伝わってくる。時間の流れが違うからな……数日はかかるだろうが……)
(こんな感じでいいんですか? 父親ですよね?)
(ふっ……問題無いよ。語った通り、願った通り、誓った通りだ)
(判りました)
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