0222:正面広場②

「貴様っ!」


 さらに複数人、結構存在感を感じる騎士が城から出てきた。肩の部分が白く塗られている鎧。……目立つ。戦場でもこれだとしたら、狙われて当たり前の世界だろう。つまり、今出てきたヤツは、命がけのバカ……ということだ。傾き者というか。この世界でそんなバカは、準強者、強者クラスと考えて良いだろう。直結してるからな。暴力が。

 まあ、でも、それ以前に。撃ち掛かる直前に声を掛けてくれるのはどうなんだろうか? 掛け声? 隙を付いた方が良いんじゃ無いかと思うけど……。


 武器も……一般の騎士が使用する片手剣、騎士剣ではなく、ゴツイメイス……いや、鎖も付いてる。モーニングスター……だっけか。の変形というか。鎖で出来たけん玉? 


 彼は、ついさっき行われた惨状を見ていなかったのだろう。アレを見ていてなお、あの勢いで突っかかってこれるのなら、それはそれで逸材だ。まあ、その方向の逸材はうちの領ではいらないけど。


 モーニングスターを器用に取り回している。かなり振り回しが高速だし、当たれば痛そうだ。が。イリス様視点で見ているからか……まったく怖さを感じない。所詮手の延長に或るだけの武器は……その射程は鎖の長さまで。それを隠す素振りも見せないのでは脅威にならない。変幻自在な訳でも無いし、振り回している時点で、どうしても隙ができる。


 振り終わり、若干身体が流れる。その流れた身体と逆にイリス様の踏み込んだ右足。それを軸に右手の剣が振り抜かれる。大して力は入れていない様に思えるが……まあ、多分、その角度を維持するだけで大変なのだろう。これまで見たことも無い綺麗な軌跡を描いて、刃が振り抜かれる。


ゴズ……


 身体の前半分、胸元から頭部半分がそげ落ちた。それまで勢いよく振り回されていたメイスが、その勢いのまま、手から離れて飛んでいく。


 その直後。襲いかかる二人の騎士。丁度、モーニングさんの身体で死角になっていた場所から、挟み込まれた様だ。まあ、お判りの通り、モーニングさんよりは賢いタイプなのだろう。さりげなく、気配もできる限り消して近づいて来ていた。


 が。ごめん。それも見えていた。というか、今のイリス様は全方位で敵意を感じ取っている。かなり高位の隠蔽系の術やスキルを使わない限り、見破られてしまうだろう。


グヌッ……


 両者同じ場所。振りかぶり振り下ろした右腕の根元……脇の下にイリス様の両方の剣が突き刺さる。そのまま……あまり力を入れた様には見えなかったが、剣が両者の胸を貫き……背中から生える。


ガバッ!


 上へ振上げるように剣を抜く。凄まじい出血と共に、多分ショック死したのだろう。……二名の騎士が地に崩れ落ちた。

 

「何をした……オベニス伯」


 いつの間にか白ジジイ……王国騎士団騎士総長。オベリック・モルド・アーウィック。「聖騎士」オベリックが正面に立っていた。


「その技量……この腕を奪った時も既に我が力量を超えていたのは判っていたが……何をした?」


 それほど大きな声じゃないのに、妙に響く。既に広場に動く者はいない。尽く息絶えてしまった。と思う。死んだフリをしている気配も感じることが出来ない。


 既に連れ帰ってきた騎士は使い尽くしたのだろうか? ああ、モリヤ隊の他のメンバーが裏から仕留めてしまったのか。なら仕方ない。


「なんだぁがぁぁぁあぁぁああっぁーーーー!」


 あー判る。判るよ~白ジジイ。お前の気持ちは良く判る。いきなりだしね。強者としてだけなら、まあ、うん。自分よりも強いのは気に入らないかもだけどね。


 マッサージして……さらにしちゃったからね。強さで言えば二段階上がっちゃってる。正直、ここまでとは思わなかったかな。こういう戦場だと戦闘力が染み出てくる感じ? 止められないみたいですから。


 でさらに、どう考えても知能派として行動してるからね。脳筋に見えなくて脅威だよね。入れ知恵しちゃってるからな~。


 強い上に知恵も回ると思ってるでしょう。うん。そう思って死ぬと良いよ。というか、黒ジジイの目論んだ結構遠大な策略を、尽く撃ち返してさらに、ぶっ潰しちゃってるからね。第1弾の第二王子っていう犠牲、さらにあり得ない、第2弾の今。どれだけの犠牲がでるんだろうね。


 白ジジイの中でイリス様は……とんでもない存在になっているハズだ。本人そんな気は全く無いだろうし、どうでも良いと思ってるだろうけど。


シャッ……。


 聖剣が抜かれた。最初から魔力が込められている様だ。鎧も仄かに光っている。本気なのだろう。


「いあぁああああ!」


 振りかぶった聖剣が、綺麗な軌跡を描き、イリス様に突き刺さる。凄まじい足捌きだ。瞬間で間合いを詰めた。多分、俺が目の前でやられたら、何が起こったか判らないうちに斬られているところだろう。


チッ! リィィーン……


 イリス様の右手の剣が、逆手に刃を合わせている。これまで……剣を合わせること無く戦ってきていたのが、さすがに……この国最強と言われた強者の一撃は避けられなかった。


 聖剣の効果で……何でも無い普通によく出来た剣でしか無い、イリス様の剣は。受流しただけで刃が削れ落ちてしまっていた。


 いや……ワザとかもしれない。戦っている最中の表層部分……気持ちの上辺は伝わってくるのだが、その攻撃を繰り出した理由なんて深いところ(いや、反射での行動なら浅いところ?)は判らない。


 伝わってくる表層意識だと、イリス様は大抵、邪魔だとか、どけとか、そういう風にしか敵を捕らえていない……。


 さらに、何も感情は無いまま。


 メールミア王国で最も強いと言われた男の首があっさりと飛んだ。片手でくりだした聖剣は流されて、身体も若干流れている。だが、その形のまま、聖剣を流した、イリス様の右手の剣で「聖騎士」の首は落とされていた。


 多分、自分がどうやって首を斬られたかも判っていないだろう、その顔は……妙に穏やかに見えた。



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