0216:城砦都市オベニス住民談話記録①
城砦都市オベニス住民談話記録
■第一守備隊隊長 ノーラン
もうな。とにかく、強ぇんだよ、イリス様は。おかしいくらい。最近、オベニスの周辺で魔物に襲われた……っていう話を聞いたことがあるか? ねーよな? そりゃもう、全部イリス様のおかげだ。イリス様が領主になってくれて、本当に良かったよ。
そもそもな、良く考えてみろ? 領主自らが魔物を狩りに行くって……聞いたことがあるか? ねーよな。領主なんて、良くて守備隊にどうにかしろと命令するくらいだ。そのためにかかる金とかそういうのは一切話題にもならねぇ。
大氾濫の時だって、自分の騎士団からは人を出さずに、冒険者と守備隊に丸投げするヤツだって多い。まあ、それ以前に逃げちまう最低の領主もいるけどな。げはははは。
イリス様のすげぇのは、自らが魔物狩りをする上に、守備隊が魔物を狩るとそれに合わせた報奨金を支給してくれるところだ。それを書面で報告できるようになったのもビックリしたけど、それがそのまますぐに報奨金になったのはもっとビックリした。普通はいろんな人を経由して、時間がかかったあげくに俺たち下っ端には、ほんのちょっとっていうのが当たり前だからな。
さらに、守備隊の仕事中に怪我をした場合、医療院に行けば「ただ」で癒しの魔術を掛けてもらえる。まあ、擦り傷とかかすり傷ならどうってことないが、魔物に囓られたとか、骨が折れたなんて時はもの凄く助かる。
傭兵団の襲撃がある……って言われた日にゃぁ焦ったけどな。丁度、戦争でイリス様が召集されちまってたからな。なんてったて三つ首竜討ちの勇者だからよぅ、それがいないのはやべぇと思ったもんよ。
でも、日頃からロザリア隊長に仕込まれてた新型の弩弓ってヤツな。アレもあるし、元ギルド長のファラン様もいるから問題無いって言われて城壁で構えてたんだけどよ。本当にどうにかなっちまったからな。そうそう、ロザリア隊長も戦争に引っ張られてて、ミリア隊長しかいなかったのにな。
ミリア隊長の指揮の元、弩弓を交代で撃ち続けていたら、攻めて来た傭兵団の五百人だかがバタバタ倒れちまった。ミリア隊長も可愛い顔してスゲーんだよな。強者候補だって話だから、当然なんだけど。イリス様もそうだが、最初は「女なんかに従えるか」って気持ちがあったんだけどよ。もう最近じゃ全然だな。男だろうが、女だろうが、スゲーやつはスゲー。
盗賊団は倒したんだが、敵もやるヤツがいたらしくて、っていうか、魔術士がいたんだよ。で。門の中に火を放たれちまってな。なかなか消えねぇ、あっという間に燃え広がる、なんかおかしい火でな。一面が火の海になっちまって。
貧民窟のヤツラも全員、地下に避難してたからな。慌てはしなかったが、消火活動は厳しかったな。水を掛けても掛けても広がっていくしよ。空き地を使って、周りの家とかをぶっ壊すくらいしか出来なかったな。
でもその作業中、もっとヤバイ魔物が来るとか言われてよ。慌てて全員で地下へ避難よ。燃えてるのにだぜ? 自分の家が燃えてる……ってヤツもいたからな。そりゃもう、泣く泣く階段を降りてみればよ。このオベニスにこんな場所があったのか? っていうくらいスゲー街があってビックリよ。
オレら守備隊は、入り口の階段の側の守備隊宿舎ってとこに案内されてよ。使っていいって。二人でひと部屋。このひと部屋ってのがスゲースゲー。なんだっけな。そうそう、簡易住宅とか言ってたか。簡易って簡単ってことだろ? もう、そんなもんじゃねぇくらいスゲー。
オレなんてここを永久に宿舎にして欲しいくらいだな。外に出るのにちょっとかかるから、通うのがちょっと遠いけど~問題ねぇな。
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