0189:責任
まあ、後ろめたいこともあって、目を背けていたけれど。
判っている、判明していることが一つある。ミアリアがこうなった直接の原因。それはもう、そりゃ、アレですよ。肉体の関係ってヤツですよ。うん。彼女が強くなったのは、致したから……しかない。理由なんてそれくらいしか思い浮かばない。うん、違いない。イリス様はキスをしただけで、抜きん出た気がしていた、怪しかったわけだしね。
そんな予感もあって……怖いからって、他にイロイロ理由を付けて我慢してたってだけだしな。無知な彼女たちをいいようにするっていうのも、ちょっと自分の性格に合わないなとは、今も思っているし。
当然、責任は取りますよ? そのつもりで一線を越えましたよ? そりゃもう。
でも、副作用……というか、追加付与で、さすがにここまでっていうのは予想外。多少体調が回復すればいいな……くらいには思ってたけど。
「鑑定……しました。おかしいレベルでパラメータが上がっています」
「何をした? モリヤ」
はい、手を出しました……とは言えん。恥ずかしい。
「子種をいただきました」
ええー言っちゃうのー。そんなストレートにー?
「お館様の世界のやり方で。上からも下からも豪勢に」
セリフが痴女レベルよ! ミアリアさん!
「なんだと! それかっ?」
くわっ! というのはファランさん。
それに合わせたわけじゃないが、くねっというか、しなっというか、ポッというか。顔を赤らめながら、掌を頬に。まあ、可愛い。ってミアリアさん。
違うし。そうではなく。そんなラブコメな展開は今、求められて……いや、いいのか? 俺らしかいないし。この場には。どでかい、百tハンマーとか登場してもおかしく無い感じで。
って! ああ! 思い切り睨まれた! 怖いんだからな! ファランさんの女上司的なキリッとした視線は! 我々の世界ではそれはご褒美です……と言うヤツもいるだろうが、俺には針視線としか言いようがない。い、虐められて感じる趣味は無いのだ。どちらかといえば、虐めたい。のみ。
「は、はあ。あの責……」
「私にもしてもらおうか」
「……」
ドン!
ファランさんが腰に手を当てた仁王立ち。背後に書き文字。
そんな、超デカい擬音が書いてあるのが見えた。なんかディジャブ。既視感というやつね。そのセリフ、聞いたことある~。
「セタシュアの時といい、イリスの時といい……全てはお前なのだからな」
そうかもしれませんけど。しれませんけど。
「あのですね、ファランさん、前にも言いましたが、その手のことをする場合は、それくらい相手のことを思っているのが大切だと思うんです」
「ああ」
「正直、自分は……躊躇していました。そういうことをするのを」
「ああ、そう言っていたな」
「自分の世界でその手のことをする場合、お互いが愛し合っていることが前提となります。それこそ、子作りなのですから、夫婦として結婚しているのが理想です。つまり、愛し合っている者同士が一緒に居たいと思ってそういうことをして、そのまま結婚し、子供ができる……というのが普通というか」
「それはこちらの世界でも似たようなモノだと思うが」
「そうでしょうか? まずは家同士や親同士で決めた許嫁との結婚とか、経済力があればいくらでも伴侶を増やせるとか、出す男よりもそれを受け容れる女の方が立場が低いとか……変に歪んでいるんですよね」
「歪み……」
「他人に触ると嫌悪感を抱くっていうのが……ねぇ。おかしいですよ」
「だが、それは仕方ないのだ」
「ええ。癒しの術が効きにくくなるわけですしね。仕方ない。相手のことを思えば思うほど、触れなくなる。なんでしょうね、そのジレンマ。矛盾。そりゃ親と子、家族の関係が希薄にもなりますよ」
「そう……なのか」
「まあでも、この世界の現実、常識がそうなんですから、そこは仕方在りません。でも自分は……なぜか、その常識から外れてしまっている。これは……良いのか悪いのか判りません。そんなあやふやな状態で女性に手を出すというのは……相手に失礼かなと考えていましたし、今も考えています」
「だが、ミアリアに」
「ええ。言い訳はしません。あの時……自分の手で実際に人殺しを体験して、情緒不安定になっていました。だから、ではないですが、それを抱きしめてくれたミアリアが非常に魅力的で大切に思えました。ただ、元々、昔から魅力的だなとは思ってましたからね……今も思っています。なので、これは俺の中で「有り」なのです」
「くそう。なんかズルイぞ、その理論は」
そうですね……ズルイですよね。結論として、俺の都合でミアリアを巻き込んでしまった。なんていうか、同意っていうのはなんなんだろうと。考えて考えて結論の出ない問題だとは思うんだけど。
でもな~理論とかそういう問題じゃ無く。そういうことは、ね。ちゃんと恋愛を重ねて、お互いがきちんと好きな人とね、しましょうよ。お願いしますよ。ってこちらの世界だと言えないんだよなぁ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます