0188:唯一

「ミアリア! ……へ、平気なのか?」


「はい、お疲れ様です、お館様」


「え、はい、お疲れ様です」


「なぜだ……なぜ……倒した……のか?」


「ええ……しぶとかったですが……多分。すでに存在を感じません」


 なぜそんなあっさりなのか。なぜそんなに落ち着いて……我々の、いや、ファランさんの愕然っぷりから、あの警戒態勢は別に間違ってなかったハズだ。うん、だって俺ですら感じる違和感。武威というか、圧倒感というか……あれ? そういうのじゃなかったのかな? というか、化物であった以上、そういう違和感を感じても仕方が無いかもだけど。


「モリヤ、ヤツの強さは?」


「それが……最初見てたのって、使い魔越しに監視してるファランさんと感覚共有してたじゃないですか……あの状態だと鑑定が出来なかったんですよ。ミアリアで見た時なら簡易鑑定できたかもなんですが……移動中で、あっという間で……」


 まあ、そもそも、感覚共有している人とイロイロと同化できるってだけでおかしいからね。使い魔と俺は一切関係が無いし。共有も共感も得られなくて当然。


「ミアリアが戦ってる途中にここに着いて、立ち止まってからなら出来たと思うんですが……走りながらはさすがに……」


「まあ、そうだな。私も急いでいたしな」


 それにしても、なんだ? 少なくとも、あのプレッシャーはおかしかった。主に使い魔ごしではあったが、確実にヤバイ雰囲気が漂っていた敵だった。それこそ、これまでの強者なんて比べものにならないくらい。というか、言葉が通じない分だけ、イリス様よりも恐ろしいと思ったくらいなのに。


 俺とファランさんの二人がかりでもどうにもならないな……と思ったから、しばらく放置するしかなかったのに。


 どういうこと? ということで、ミアリアに鑑定をかけた。相変わらず30分以上必要なのは変わらない。ミアリアは何か不具合があったらマズイので休憩。ファランさんが改めて周辺の索敵を行っていた。


「モリヤ隊」ミアリア

モリヤ 女 力487 躯641 器543 敏657 知498 精453


敵性感知

感覚鋭敏

気配察知

螺旋修復1


剣術6

弓術7


魔力制御7

→風7

 光6

 癒4


 こういうことでした。


 え? 何これ……おいおいおいおいおいおいおいおいおいおい。


 うわうあうわうわうわ! なんだこれ。異常高スペック。新規能力、スキルてんこ盛り、いやいやいやいや……俺の知ってるミアリアじゃない! ミアリアはこんなムチャな数値じゃなかったハズだ。ミアリアたちノルド族の10人はほとんど一緒というか、同じ様な数値で……。微妙に使えるスキルとか術とかが変わっていて……という感じだった。


「ミアリア……なんだ……よな?」


 と言った瞬間にファランさんが術を更新した。多分、防護用のモノ。念のためだろうけど、気持ちは判る。


「ええ、大丈夫です。お館様。問題ありません。私です」


 ……う、うん。見た目は彼女だし……ええ。さすがに……あの、一晩を共にした相手を見間違える程、男子レベルは低くないとは思うんですが……でも……その、パラーメータは語るといいますか。訴えてきていると言いますか。


「ミアリア……お前から違和感を感じる。それはモリヤのセリフからも判ろう」


「はい。ですが……そうですね。自分でも判らないのです。ファラン様」


「モリヤ隊」フリアラ

ノルド 女 力267 躯197 器105 敏328 知197 精132


感覚鋭敏

気配察知


剣術3

弓術3

魔法制御4

→風4


 これが傭兵団と戦う数日前のフリアラの数値だ。これこれ。えーと、この数値は、確か、ああ! アレだ、「漆黒の刃」のしなる槍を使ってた強者……と戦闘してた時に参照したヤツだから、ちょっと前の最新の数値だ。


 彼女だってこれくらいだったのに……。


 さらにミアリアのスキルが……。


敵性感知←new

感覚鋭敏:これはフリアラと同じで前から持ってた。

気配察知:これも持ってた。

螺旋修復1←new


剣術6:剣術は確か3くらいだったはず。 

弓術7:弓も3か、いっていても4だったはず。


魔力制御7:えーと。魔力制御7て。ファランさんが5だ。それを遙かに? 凌駕している?

→風7:見た事も聞いた事も無いスキル値。

 光6:これも……無い。6って。

 癒4:フリアラは元々多少であれば癒しの術も使えた。


 おかしくね? というか……一番ヤバイというか、ムチャというか、気になるのが。


 何? 種族「モリヤ」って。俺の名前……のモリヤ? ってこと? そういうこと? くそう。この手のスキルは名称を強く思うと、詳細が浮かぶことがある。


敵性感知:所属する眷属、一族の敵を感知出来る。


 こんな感じに。だが……螺旋修復1ってなんだ? こちらは何も浮かばない。螺旋。階段とか、ネジじゃなければ……DNAだろうか? DNAの修復? どういうこと? 


 さらに種族名の部分に表示されている「モリヤ」は何一つ浮かばない。見れば判るでしょ? ってことなんだとは思う。まあね。俺の名前だしね。


 だが、意味が判らない。ミアリアのこの部分にもちょっと前まで「ノルド」と入っていたハズだ。それがモリヤ……ってモリヤという新種族ってことなのか? なんだよ、種族って! 一族って……って「敵性感知」の説明の……所属する眷属、一族……という単語、カテゴリがこのステータスのパラメータに存在するのか。


 OK、了解した。ミアリアの種族は「モリヤ」。種族名は「杜谷」。……って何だよ! なんなんだよ! 叫びてー! すげー叫びたい。


 だって、俺は……まあ、こちらも良く判らなかったし、答えも出なそうだから放っておいたけどさ。種族名「界渡り」のままなのよ? なに、「界渡り」って。この世界からしたら、異物のまま……ってことなんだろうか。分類されないから、界渡りという行為に紐付けられた名称のままっていう。


 そういうこと?

 



  

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