0176:一線
「お館様、大丈夫ですか?」
「ああ、問題ない」
「問題あると思います、失礼します」
「な、あ……」
いきなり抱きしめられた。え、あれ? あう? な、なんだ、この懐かしい感覚は。ああ、やばい、涙が止まらない。やばい。情けないが、何かが吹っ切れてしまった。
嗚咽。声が出るくらい泣いていると、次第に意識がクッキリとしてきた。
「ありがとう、ミアリア。嫌だったろ?」
これまで、俺が触ったことはあったが、彼女たち、いや、この世界で誰かから、ここまでちゃんと触られたことは無かった。いくら俺に触られるのは平気でも、自分から他人を触るのは勇気がいる。
この世界の人にとっては、そのレベルのタブーなのだ。
「やっぱり、何とも無いですね。逆に身体の中が暖かくなってきてます。気持ちいいです。というか、熱い?」
なら良かった……。
「お館様……お願いがあります」
え? な、何でしょうか? 何か怖い。
「お館様の元いた世界のようにしてくれませんか?」
「ん? どういうこと?」
「お館様の世界では、獣のような子作りが、当たり前で……気持ちが良いモノなのですよね? それをしてくださいませんか?」
え? ええーというか、実は悩んでいたのだ。セタシュアは、俺のアレを舐めてイロイロ目覚めた。
ということは、マッサージよりも先を行えば、パワーアップするのは確定じゃないのか? イリス様が、特別強いのは元々強かったのもあるが、キスのせいでもあるんじゃないか? と。
それをすれば、少なくともシラビスは死ななかったかもしれない。俺の、元の世界の倫理観で、考えたのは間違っていたのではないか?
さらにファランさんが倒れて、ここを生き残るにはミアリアを強化するしかないんじゃないか? とかも思っていた。
「我々モリヤ隊の隊員は、全員、お館様をお慕いしております。お好みの身体でないのは充実承知ですが、お情けをいただけないでしょうか」
ぎくっ! た、確かに……あの、豊かな胸は好きですよ……ファランさんとか凄まじいばかりの性欲視線を向けてしまっているのがバレてる。
「俺は、君たちを利用してるだけかもしれないよ?」
「当然です。私たちは、お館様に暗闇の中から救い出されました。それに優るモノはございません。我々の様な矮小な力であれば利用できるだけ利用していただきたい……と全員が思っています」
あれ? なんかおかしな雲行きだぞ? というか、全員っていうのは……あれかい? モリヤ隊のみんなのことかい?
「あの実は……勇者様の……地下の部屋から……あの時、一部、絵物語を拝借してまして……あの……女性も凄く気持ちよさそうな顔をしていたのですが……本当でしょうか?」
ま、まじか! っていうか、素早いからな~モリヤ隊の人達って。全然気付かなかったや……って! いやいや……あのさ。あの部屋の絵物語、全部、所謂、18禁のエロマンガじゃん! パプテマス白吉先生はエロしか描いてないじゃん!
「あ、ああ。うん……あの、その……」
「あ、あれほど、乱れたりとかするというか、意識を失うといいますか……マッサージの向こう側があると?」
「そ、その辺はちょっと過剰に演出してあるんだけどね。多分。まあでも、子供を作るというのは神聖な行為なのだけれど、それだけだとどうしても行き詰まってしまう。そのためか、そのせいか判らないけど、そういう「気持ち良い」っていう付加価値が付随しているとも言われていたけど」
ってそれにしてもあのお宝を持って帰ってきてたのか! 俺もあの部屋の作品、全部把握してるわけじゃ無いからなぁ。
「なので……あの、こういうこともできます」
うおっ。股間に指が……。いやいやいや、ダメだって。鋼の意志でその辺は無いように頑張ってたんだからさ、っていえいえ、ミアリアさん? 拙い動きがまた、なんというか、スゴイ勢いで反応してしまう。うわうわうわ、やばいて、それは反則だし! 払いのけることとか、俺の様なヘタレに出来るわけないし!
「あ。スゴイ……。え? ……こんなに?」
戦場を経験した新兵は……滾ってしまうので、その手のことをしないと気持ちが収まらないとかそういう話を読んだことがあった。が。これは明らかにあの、いやー。
「こ、子供が出来てしまう可能性があるんだぞ?」
「まあ、それはステキです。私たちはそれが出来なかったから、実家に帰された者ばかりですから。しかもお館様の子を授かれるなんて……優秀な子になりそうです。夢のようです。みんな喜びます」
この世界は一夫一妻という考え方は無い。一夫多妻は当然だし、一妻多夫っていうのも……現実として無いだけで、別にありなんだろう。多夫多妻がおかしいことじゃないのだ。そこに各人の思惑は関係してくるだろうけれど。まあ、本人たち次第だ。
実際の年齢は判らないにしても。乳は非常に微妙だとしても。元々洋ピン好きだし、モデルばりの美女に股間をまさぐられながら、こんなことを言われて、どうにもならない男は……男じゃない……と自分を正当化し始めている。俺。
駅前のキャッチに捕まって、普通のマッサージだと思っていたら、おばさんに耳元で「あと2万円で気持ち良いよ?」とか言われて、ついつい支払ってしまったあの衝動に……。冷静に考えれば、とんでもなく高いのに! しかもおばさんなのに!
「何よりも……私自身がお館様に触られたくてたまらなくなるのです。マッサージも検証が終わった後は一切してくださいませんし。寂しくて寂しくて」
涙が……頬を伝った。俺の指はそれをなぞり。さらに指ごと舌で舐め取った。
ビクッ!
と、大きく、ミアリアの躯が仰け反った。それを倒れないように抱きしめる。
「あ、ああ」
「途中で止めてって言っても……ダメだからな」
「はい……」
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