0139:師匠
よほど無理をさせて来ていたのか、ゴバンが飛び降りた馬が、そのまま倒れ込んだ。まあ、ヤツは結構重そうだしな。体格良いし。
潜入先へのミッション状況をここまでモニタリングできるのは初めてだった。まあ、だって、大抵、遠いからね。オベニスから。塀を乗り越えて街に侵入した時点で、彼女たち……かなりムチャをしているんだなっていうのが本音という正直な所だ。正直これは危険だよなぁ。
(王城など、魔術的な結界が仕掛けられている場所などは、潜入までにもっと時間がかかります。ここは何も仕掛けられていないので)
シエリエの意識が伝わってくる。まあ、そりゃそうか。王がここへ来ると決まったのだってギリギリだったんだろうし。警戒体制がイマイチ甘いのも仕方ないか。
前庭に向いているアプローチを薄青色の髪をしたワイルド系のオヤジが将軍に近づく。フルプレートでは無いが、急所に高そうな金属の鎧を装備している。腰には普通にロングソードを佩いている。
あ。ちなみに、ロングソードというのは、ショートソードに対してのロングソードだ。主に片手で使う片手剣の代表的なサイズと言える。両手で扱うのは大剣……グレートソード、バスタードソードとかだろうか。
「緊急故失礼します! 王よ! 大至急王都へ帰還を!」
「何があった、ゴバン」
これがアーガッド王……アルメニア征服国を建てた男。始祖王ってヤツだ。確かにもの凄い貫禄だ。若いのに。威圧感が溢れ出ている。おおう。これが……これが本物の王か~。凄いな。さすがっていう何かがある……けど、イリス様もこんな感じあるしな。うむ。負けてない。
アーガッド・×××・××× ヒーム 男
平均的な能力。器用が低め。
統率、剣術、風の魔術、その他
おお……統率。さすが、国を率いてるだけあるね、な、スキル構成。
ちょっと待て。風の魔術があるってことは……やはり……。うちの人たちと同じ、風の術を駆使することであの大峡谷を跳び越えたのか……ロープを片手に。まさかのド直球ストレート路線。ちゅーか、多分、バカだな。うん。王なのに。
瞬間移動のスキルとか、魔道具を所持されてなくて良かったという感じか。そうだな。うん。そんなのあったらイリス様でもヤバイかもだもんな。
「大渓谷脇に設定された各騎士団の合流地点で急襲を受けました! 「剣聖」ホウジョウ、「魔剣士」アーバック、共に敵の刃に討たれ、既にその命は無いモノと。さらに、大峡谷脇で我々の到着を待っていた騎士団も半壊。既にここオバルに撤退中であります」
それまで余裕のあったアーガッド王の顔色が大きく変わる。顔色どころか、表情が無くなった。
「……
「剣聖殿が。し、師匠が……」
「判った。ホウジョウが言ったんだな? お前に俺に伝えよと」
「は、はっ!」
「俺に逃げろと」
「其れがしに王と合流して、さっさと尻尾巻いて逃げろ。ここは俺がなんとかしてやる……と」
目を瞑ったアーガッド王。
「判った。王都に帰還する」
「はっ!」
「軍師。読み違えたな」
アーガッド王の後ろから痩せ細った男がヨタヨタと、口を押さえながら登場した。まあ、軍師と言えば……うん。背は高いのだが、全体に骸骨かってくらい顔も細い。黒い髪。長髪。黒い魔術士のローブを身に付けている。
ミルベニ・×××××× ヒーム 男
腕力、体力に欠け、知力、精神力が高め。
闇の魔術、召喚術、その他
「軍師」ミルベニ……っておい。コイツ魔術士なのか。良かった。事前に鑑定できて……知らないで戦場で対峙したら危なかった気がする。
「まあ、アンタは昔から小狡くてツメが甘かったからね……」
「何者だ!」
「んーそこのバカの師ってところかい」
前庭の三人の手前。若干離れた位置に……いつの間にかオーベさんが出現していた。シエリエも驚いている。仮面も付けていない。素顔だ。
(気配が……一切感じられませんでした。自分の術だと感知できない技か術だと思います)
そう言われてみれば……戦場からいつの間にかいなかった……な。というか、シエリエとほぼ同時に追った? のだろうか? うーん。オーベさんも大概チートだからなぁ。
「し、師匠! まさか貴方が!」
「くくく、アンタが牢獄に入れられたっていうのは聞いてたからね。気にしてたのもあるやね」
「王よ……申し訳ありません。欠片でもこの情報があれば……このような事態には……まさか師匠がセズヤと共にいるとは……」
「軍師の師……ということは、「召喚妃」オーベシェ殿か」
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