0132:剣聖
「こいつは……俺がもらった!」
叫びながら振り下ろした大きめの青竜刀? の様な緩い湾曲した形状の剣。
この振り下ろしは……思い切り振りかぶった状態からの日本刀での斜め斬り下ろしに近い。踏み込みの初速が異様に速く、長い。さらに踏み込んだ右足を斬らないように剣尖が斜めに降りている。
これ、次の技へ繋がるんだよなぁ……って、何で知ってるんだろう? あ、そうか、俺の読んだ事のある剣術系の漫画で登場してた形なのか。この剣術もアレか、界渡りが関係してるのかな? いや、もしかしたら自力かもしれない。剣聖だったし、確か。
剣聖の青竜刀は凄まじい破壊力とともに、連続技へと繋がった。それはまるで必殺技の様な連続攻撃。当然、イリス様に叩き込まれようとはしている。
が。当たらない。別に何をしているわけじゃない。イリス様の実力だろう。
おかげで何をしているかが良く判る。って、普通に自分で見てたら俺の目じゃ多分追えないんだろうけどね。当然の様にイリス様なら可能だ。
振り下ろしを絶妙な見切りで避ける。初見で、さらに剣の長さが判らなかったので、ちょっと余裕を持って避けたようだ。
いつの間にか、イリス様の背後にミアリアが戻ってきてる。
(剣聖の後ろ。魔剣士も動いてます。既に詠唱状態です。ご注意を)
(将軍は兵の待避優先で動いています。が、こちらに来るようなら、私が足を止めます)
周囲警戒をしていたシエリエが崖際の将軍を相手にしてくれるようだ。この辺のメッセージを全員に伝える。連絡網ばっちりだ。
やはり……この五天王の内の武闘派の三人はやる。というのがイリス様からも、モリヤ隊の二人からも伝わってくる。自然に警戒値が上がっている。
ああ、くそー。こういうときに鑑定が使えれば……ってあれ? 鑑定って俺の見ている視界にいる人物や生き物じゃないと使えないんじゃ……ってアレ? 「繋がっている」状態、イリス様やミアリア越しに見えている剣聖の鑑定もできる……のか? マジか? というか、魔力制御が「使える、MPは足りている」と返してくる。使えるかどうかと聞いたと判定された様だ。……ってことは……今、これだけ離れている人物の鑑定が……。
ホウジョウ・××××
種族:ヒーム
腕力がなんとなく高め。
スキル:
剣術理解
他にもあり。
うはっ! バッチリじゃないですか! よし。即イリス様たちとも共有する。完全に鑑定するには三十分以上必要なのだ。それじゃこういう、リアルタイムな現場ではあまりにも使いにくい。なので、なんとなく鑑定結果は適当で良いから、何か返してくれと思いながらやってみたら、使える様になったのが、この、簡易鑑定だ。
パラメータとかスキルは曖昧だが、ファーストネームと種族はほぼ数分で表示される。
剣聖。強さ的には判らないが、これだけ混戦の只中、名前から本人だと判る時点でチートだよな。
当然、数値とかが判れば、もっと便利だろうけど……30分くらいじっとしててっていうのはちょっとな。無理があるよな。
(さすがに、こいつら相手に手加減はできないぞ)
(はい。倒せるなら倒してしまってください。魔剣士? はミアリアが。将軍? はリエリオが押さえています。しばらくは大丈夫でしょうけど、イリス様が如何に速く剣聖を倒せるかが戦況を左右するかと)
(分かった。急ぐ)
イリス様の構えが変わる。というか、今まで長くて重い戟を片手で持ってなかったか? 両手で構えた瞬間、その隙を狙っていたかのように、剣聖の青竜刀が牙を剥く。
(そう簡単に発動させませんよ……)
イリス様の後ろからいきなり、飛び出したミアリアの蹴りが魔剣士に食い込んだ。避けられない……発動のために集中していたんだろうし、まあ、防げるはずが無いか。
いつもなら……多分、剣聖がガードしてくれていたのだろう。残念。剣聖はうちの大将の重い重い一撃を防ぐのに精一杯って感じだ。
さらに今のは厳密に言うと、詠唱中断では無くて、発動中断だ。多分。魔力は消費したのにっていうのは……悲しいよなぁ。霧散したのは……火の魔術か。というか、こちらの魔剣士は魔術を戦闘に使うとはいえ、普通に攻撃特化っぽい。
名前:アーバック
種族:ノルドハーフ
器用、敏捷、知恵、精神高め。
スキル:
剣術、火の魔術、他
(ノルドハーフ……)
俺の伝えた鑑定結果の種族に対して……ノルド隊から……悲しい反応、意識が帰ってくる。
(ノルドの……森で暮らしているノルドの元で暮らすのであってもノルドハーフは、ノルドと同じ様に生活出来ない事が多いです……それがヒームの街や村で暮らしてきたとしたら……辛かったでしょうね)
(この剣術と魔力。どちらも、普通に鍛えたのでは身に付かないハズです……)
(マッサージ前であれば、確実に、我々では太刀打ちできなかったでしょう)
(苦労したのでしょうね……ここまで来るのに)
うーん。戦いにくい同情票がゾクゾクと集まってくる。
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