0117:説明

「界渡りが珍しいスキルを持っているという記録はご存じですか?」


「ああ、界渡りが特異で特徴的なスキルをイロイロと持っているのは有名な話だ。だがモリヤはパッと見た感じで判るような何かは無さそうだったからな。何か理由があるとは思っておった」

 

 そうだよね。分かりにくいよね。だからこそ、俺が狙われなくて良いのかもしれないけど。


「現状……俺が界渡りであることを知るのは、イリス様、ファランさん、ミスハル、モリヤ隊の10名のみです。気付いたこと……とかおありですか?」


「ん……モリヤ隊というのは別邸にいる昏き森のノルドの女たちか。全員揃った所を見たわけではないが……確かに破格の能力を持つ者たちだな。一人や二人ならまあ、国単位で考えればいないわけでは無い。だが……ここまで揃っているのは……そうか。やはり、それがお前の力か」


「はい。俺のスキルは能力の付与です。限界はあるようなんですが。どれくらい強くなるとかその辺はまだ、検証できてない状況です。それどころではなかったので」


「ふむ、では我にやっ……」


「今すぐにやれというのは無理です。ファランさんと同じ展開ですよ……今の。さすが師弟関係ですね……。施術に時間がかかりますし、その結果が出るまでにも一晩ほど時間がかかります」


「なんと、面倒な」


「魔術じゃないですしね」


「何か負担はあるのか?」


「俺にですか? うーん……今のところ無い……というか、気付いてないかもですね。その辺の検証もしないとなのか。確かに」


 そうか。鑑定でパラメータが見える様になったのだから、マッサージの効果とか確認していかないとなのか。時間をちゃんと取ってやりたいなぁ。鑑定して、マッサージ、朝鑑定して、検証。2回目のマッサージは、その日の夜まで待って、また寝て起きてから鑑定。……これを繰り返してって感じで。


 まあ、やっと魔力総量が増加して、鑑定が安定して使えるようになっただけだもんな。回数ももっと増やさないとだし。


 それにしてもイロイロ不便すぎる。ちゅーか、茂木先輩の魔力総量がトンデモなかったのがいけないんだ! くそう。チート野郎め! 出来るなら風裂と同じくらいの消費魔力で使える様にしてくれれば。こんなに辛い思いをしなくて済んだのに!


「ならば、領主様が……三つ首竜を倒したのも? それがそのおかげという事か?」


「いえ、それはイリス様本来の実力です。自分がこの地へ着いたのはイリス様が三つ首竜を討伐し、その時受けた傷も治り、リハビリをしていた時ですから」


「元々比類無き強さを所持していた者がさらに……ということか」


「そうなりますね」


「うむ。とりあえず、我が主様の尋常成らざる力の理由は納得いった。そういう理由が在ってなお、信じられぬ強さだがな」


「イリス様は……どれくらい強いと思いますか?」


「ん? 戦いは場によって変化するからのう……だが……正面からであれば、自分が見た者の中で並ぶ者はいないな。というか、人類で他にこのレベルの者がいる……とは思いたくないのう。我が勝てぬ。ああ、今回のアルメニア征服国だったか。その国の猛者は見たことも無いので比較はできんぞ」


 読まれた。

 

「とりあえず、ここまで説明した以上は……状況次第でオーベさんの強化も有り得るということでよろしいでしょうか?」


「今でも構わぬと言っておるのに」


「時間がかかると言ったでしょう? せっかちですね。そして……大変なことになりますし、声も出るので、安全で安心出来る場所じゃ無いと施せませんよ」


 ちゅーか、俺は良くても、ロリババアよ……貴方の方が良くないんじゃ無いでしょうかね……もしもファランさんと同じ結果になるとしたら。オーベさん……困ったことになるのは自分ですよ? 


 そういう言いながら歩いていると。山間の谷間、若干開けた場所に木造の建物がちらほらと見えてきていた。谷、岩と土、さらに木々による断崖絶壁の組み合わせのような場所が削られて、所々に家が建てられている。隠れ里と言う通り……これ以上はないというくらい隠れていた。


 よくもまあ……こんな所に里、村を作ろうと思ったよな。でも、だからこその落人の里……か。建築資材はこの場所から切り出したのかもしれないが、それ以外は運んできたんだよな……。すげーな。人間って。井戸も無いみたいだから、下の沢から組み上げてくるのか。それだけでも重労働だ。


 日本の平家落人の隠れ里っていう街とか温泉地も、当時はこんな感じだったのかな? そういえば、社員旅行で行ったな~。こんな感じの村。


 下の方には渓流が見える。もういっそのこと、ずーっとここに籠もってれば攻めてくる方はかなり、面倒くさいんじゃ無いかな? どうなのかな? 要害って言葉が相応しいくらい、攻めにくい場所だぞ? ここ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る