0114:重複発動
目が覚めた。既に午後……15時くらいか。多分、魔力は回復している。……と思う。なんとなく思うところがあったため、まずは自分に鑑定を行った。
名前:ショウイチ・モリヤ
種族:界渡り 性別:男
腕力:93(26) 躯体:98(63) 器用:72(15)
敏捷:64(58) 知恵:527(23) 精神:531(42)
スキル:
言語理解
能力付与
感覚共有2(11)
→能力強化
魔力制御1(57)
風1(48)
予定通り、いや、予想以上の数値。前見たときよりも、若干だがイロイロ上がっている。さらにこれだけ風の術を使っていれば当然、風1もゲットしている。見えないが、魔力総量も増えていることだろう。だといいな。
ファランさんの魔力制御は5。この国で二番目に魔術を極めている人が5なのだ。生涯掛けてもそれくらいしか上がらないということは、なかなか成長しにくい能力なのだろう。
と。前置きはそれくらいで。こないだ、一番最初に自分を鑑定したときは、魔力制御は1(16)だった。メモってあるので間違いない。それが……やっぱり、1(57)。経験値がグーンと伸びている。
いや、ね、そもそも、このパラメータ脇の経験値って上がりがもの凄く鈍いと思うんですよ。だって、朝訓練のちょっとした筋トレとかに参加してるのに、腕力とかフィジカル系の経験値は1~2しか上がってないし。
っていうか、それも実はスゲーんじゃないかと思い始めているけどね。たった一日、二日の訓練だ。それで経験値が貰えてるから。イリス様は実戦じゃないと力は伸びないと言ってたもんな。
と、そこまで考えた時点で気がついた。俺、通常の訓練はほとんど毎日、それこそ王都へ行った時とか以外、参加してた。真面目にやってた。ボコボコにされてた。にも関わらず、現状この数値とは……。元の、この世界に跳ばされて来た当初の俺の数値って……どれだけ低かったんだろうか? トホホ。腕力無いのは仕方ないけど、無さ過ぎなのは引くわ。マジで。
で。にも関わらず。目立って異常なのが。
知恵 526(67)→527(23)+56
魔力制御1(16)→魔力制御1(57)+41
風1(48)+48 new!
知恵と魔力制御、風の経験値が異様にアップしている。うん、そりゃそうかなーと、ぶっちゃけ心当たりがある。だって、なんとなく頭が重くなったもの。風裂の2つ同時発動、使用で。
頭がズーンと重く疲れる=鍛えていたから……という仮説は成立しないだろうか? 筋肉が付く際に大抵は運動後で、筋肉痛があるから……なワケだし。単純過ぎるかな?
それの考え方を正解と仮定して、とりあえず、鑑定で既に目減りしている魔力総量を〜風裂同時発動チャレンジし、とっとと使い切る作戦である。
昨日と同じ様に風裂を展開させる。1つなら、なんてことない。2つ。ぐおう。一気に負担増。やはり脳への付加が凄まじい。空に浮かんだ回転している風の丸鋸。2つ維持したままで、もうひとつ……作ろうとしてみる。出来なくは……ない。3つ目……かろうじて浮かぶ……。
「ぐがはっ!」
あっ。口から良くない感じの雄叫び……いや、嗚咽が漏れてしまった。それと同時に目標である巨石に走る3つの丸い風の刃、が……ほぼ一斉に突き刺ささった。
ハアハアと荒い吐息が漏れる。み、3つはやはり、負担増に耐えられないか。2つの時点で結構ギリギリかと思ったもんな……。
とはいえ。こないだまでやっていた、混乱と不均衡の術をかけられて放置される……という拷問……いや、特訓に比べれば、正直なんてことはない。
何よりも、前と同じ感じで、既に頭が妙に疲れている。アレだ、2つ同時に比べて2~3倍の負荷がかかっているんじゃないだろうか?
当然、魔力の消費は3発分でしかない。にも関わらずこの消耗っぷりは……うーん。魔力制御が上がってなかったら悲しいのう。俺の勘が見事に外れていても、まあ、それはそれで。
ということで、残りの魔力をなかなかしんどい思いをしながら消費していく。途中から3発同時は気持ち的に厳しくなったので、2発に切り替えたりして。
魔力がほぼ無くなった時点で、いつの間にかファランさんがそこにいた。
「一番簡単な最初の呪文とはいえ、二つの呪文を同時に、自在に操るか。もはや界渡りだから、としか説明がつかんな。成長の速さもおかしいしな」
だ、そうだ。俺の中で厳密には同時詠唱じゃ無いんだけどな。一つ二つと、順番に唱えて発動タイミングを合わせているだけだ。
「お、魔力が切れたな?」
の、一言と共に……今日一日のトドメとばかりに混乱と不均衡が! 俺の心を抉る! 疲れてる脳をさらに酷使させる! 不安な気持ちとか、怖い部分とか、部屋の隅に気になる影が……とか、もう、訳がわからない感情がダダ漏れというか、流れすぎていく!
「あ、この修行。終わりじゃ無かったんだ……」
と、つい呟いてしまう。しばらく(残念な事に、最近では一時間以上保つようになってしまっている)して。毎度、猛烈な吐き気と共に……意識を手放すことになった。
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