0113:総量

「……」


 いやーだって、判らないよ? 正直。とりあえず、今ので2発。魔力総量を調べるためにも撃ち続けなければならない。3発、4発と次々と撃ち込んでいく。正直、薪は勿体ないため、その奥にあった巨石に撃ち込むことにした。


 さすがに石を貫く事は無いようだ。次々に命中して、細い線の窪み、傷を次々穿っていく。20発目を過ぎた時点で表面がズタズタにはなってきていたが、貫いたりとかそういうことにはなっていない。引き続き撃ち込んでいく。


「今、何発目だ?」


「えーと……86ですかね」


「ふう……とりあえず、いいだろう……うちにいるノルド族で一番魔力総量が多いのはミスハルになる。彼女が確か、マッサージ後の計測で56発だったハズだ」


「んーんん? ってことは既に俺の方が多いってコトですかね?」


「ああ、そうだな。確実に多い。ということはだ。その指輪……使えないので検証は出来ないが、一番魔力消費の少なそうな収納の出し入れですら、とんでもない魔力消費量ということだな」


 ガーン


 自分の魔力総量が少ないと思ってイロイロとやって来たのに……実は、この指輪がアホアホ的な魔力消費量だったってオチか……。


 というか、そういえば、この指輪は界渡りでもあった勇者? 茂木先輩御用達というか、専用アイテムだった様なので……と考えれば不思議ではない。そもそも、茂木先輩は凄まじいチートパラメータの持ち主らしいからなぁ。当然、魔力もこちらに来た直後からあっただろうし、多かったのだろう。異常といっても良いくらい。


……とりあえず、魔力総量は知りたい。でも……時間も勿体ないし……これ、同時に2つとか撃てないのかな? 既に呪文詠唱を口にせず、思い浮かべるだけで術が発動するようになっている。これがアレか、詠唱短縮とかそういうことなのかな? 詠唱破棄ではないんだよなぁ。頭の中では唱えてるから。


 お! できた!


 2枚。丸い風の刃が浮かんだ。ぐお。こ。これは維持がツライ……なんだこれ。個別に操作しようとすると凄まじい負担が脳に食い込んでくる。締め付けられるような……やばい、急がないと……。


 もうダメだ! 行けっ! とばかりに2枚を飛ばす。瞬間、同じ様な場所に突き刺さった。巨石がさらに欠ける。

 これ、別の場所にホーミングというか、動く標的に、個別2箇所に当てるなんていうのはもの凄く大変だ。生み出すところまでは時間差生成でどうにかなるが、まず、維持が大変。そして個別の操作がさらに大変。

 

「モリヤ、いまのは……」


「え? あの、2枚にしてみたっていうか」


「それはおかしい……というか、なぜ、呪文詠唱後、放つまでに時間がある?」


「え?」


「魔術というのは、詠唱したら発動するものだ。発動したモノを留めておくというのは、過去聞いたことがない」


「え? でも……」


「ああ、お前は出来るのだな?」


「は、はぁ」


 そうなの? だって、1枚目が普通に、空中維持が出来たからなぁ。うーん。良く判らない。詠唱しながら想像する→詠唱終了→即飛んでいく……ってことか。アレだ、俺のは、詠唱する→想像する→詠唱終了→想像終了→イケー→敵に飛んでく。この、「イケー」っていう部分が無いってことか。


 ん? ひょっとして指示するまで飛んでいかないでってお願いが出来てないんじゃ無いだろうか? 詠唱はキッカケであって実際に発生するモノは想像によって大きく形や有り様を変える。


 ファランさんやノルド族の風裂(きりさき)がクナイというか、ナイフの刃のような形をしているのに、俺のヤツは丸鋸の刃だ。この違いは詠唱では無くて、何を想像しているか? の違いに過ぎない。ということは、その後の行動もある程度、想像しているかしていないか? の差になるのでは無いだろうか? というような事をファランさんに伝えたが……。首を捻っていた。


 なんていうか……風裂が、風の術であるということは認識しているのだが、それがどんな構造をしていて、どういう流れで目標に当たって、切り裂くのか……ということまではトレースしていないようなのだ。むむ……俺だって良く判らない。だって術素人ですし。


 ということで、2発同時に撃ち込むというスピード2倍効果もあって、あっという間に検証結果が求められた。風裂224発。これが現在の俺の魔力総量だ。うーんと。面倒くさいから、仮に魔力総量224とすると、鑑定は二回だから、大体100ちょい消費する……んだと思う。収納の出し入れは24回だったけな? ということは……1回9.2とかそんなだろうか? まあ、余裕を持った方がいいだろうから、1回10消費ってことにしておくか。


 ギリギリまで魔力を消費したため、今日はもう回復のために眠ることにした。そういうのも魔力制御によってちゃんと感じる様になっている。


 魔力総量はとにかく、魔力を総量ギリギリまで使うことで増加していくのではないか? と言われている。なので、無くなったら寝るを繰り返しているだけで、少しづつ成長して行く。まあ、俺の場合はそれじゃ間に合わないから、術をかけてもらって、それに抗って、魔力総量を上げるやり方になっているわけだけど。


 実は。魔力総量を上げる方法と、魔力制御を上げる方法はハッキリと分かれているわけではない。そもそも、パラメータ自体がハッキリと判っていなかったのだ。そりゃまあ、訓練方法だって、ある程度そうじゃないかな? とか、想像部分なんていう要素が入ってきてしまう。


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