0103:分泌
というか……はい? えーと。と、言うことは?
お、俺の精子になんか力があるってこと? っていうか、マッサージだけじゃなくて?
ん? どどど、どういうこと? セタシュアが魔力的に凄くなってるのはそういうこと? なの? そうなの? ええええええ。なにそれ。俺って何なの? どういうこと? どういう仕組み? あれ? そういう何かってこと?
「あ、あの……ファランさん……誠にお恥ずかしい話なのですが。確かに、そのパンツには……自分の精が付いていた覚えが……二日間寝てしまった後で、良く判らないのですが……あの。朝、夢精しておりまして」
「それか……」
「そういえば、お前、イリスの口を吸ったろう?」
ギクッ! え? 何? 何その質問。今? それは今する質問なの? ……じ、実は……はい。最初にイリス様をマッサージして。意識を失った後。ぐちょぐちょのびちょびちょになった服を脱がせて、素っ裸なのを拭いて、着替えさせて……ってして……角度的に、顔がこう、イリス様の美しい顔がその……目の前になった時があって。つい、その、軽く。ええ。口をこう、ちゅっと。
合わせた……というか、ちょっと、す、吸いましたけど、す、吸いました……調子にのって……。
「実はイリスが他の者よりも格段に強くなっているのは……それが原因では無いかと以前から話していたのだ。何か違いがあるはずだと必死に思い出させた結果、気持ち良くなってふわふわしていて、身体を拭かれて、ぼーっとしていたらモリヤが口を吸ってきたと。イリスはその時、何かがドンと活性化したような気がして……その圧力に意識を失ったらしい。私を含め、イリス以外にはマッサージしかしてないのであろう?」
ガーン。イリス様め……目が、目が覚めてたってこと? 完全に意識失ってた感じだったのに! ズルイぞって、俺か。悪いのは。ってまあ、そりゃそうか。話すよね。ファランさんには特に。
「はい、そ、そうですね……」
「その時、口を介して、涎など分泌液の交換が行われたハズだ。涎でああなるのだから……子種となる精であれば……効果はさらに上がってもおかしく無いな……」
ぇ……なに、その栄養補給食物的な流れ。本当に?
ちなみにこの世界では触るのもNGだが、キスというか、口を吸い合うのも嫌悪感満載になる。とにかく接触はダメなのだ。だが、俺は……うん、なんとかなっている。
「しかし……これはスゴイな。モリヤ。多分お前の血にも同じ様な効果があるだろう。そうなると吸血鬼系の種族にも狙われるな」
えーって、いるのか。この世界にも吸血鬼が。まあ、そりゃ吸い尽くされそうですなぁ。からからに干からびそう。
「それにしても……元からセタシュアには魔術の才があったかもしれん。育てる機会が一切無かったために、見過ごされていただけで」
そんなになのか……。俺にはうっすらともやもやとしか見えないからなぁ。
「モリヤ、まずはセタシュアが魔力を抑える訓練を行う。お前のはその後、または隙間でということになるな。ちと優先順序を落とす。どうせ、あの訓練は倒れた後、丸一日二日は休息が必要だ」
「は、はい」
「セタシュア、モリヤのためだ、命がけでやるぞ。お前の今のような状態を誰かに見られたら、モリヤが危ない」
「は、はい……」
セタシュアは良く判っていない様だ。が、やる気満々というか、俺のピンチっていうのに反応しているっぽい。なんて健気……いや、えっと。好かれている? まあ、俺も良く判っていない。というか、怒濤の流れすぎて、ぶっちゃけ、どうすればいいか良く判らない。頭が上手いこと回っていない。
「漏らすとは思えないが、拷問や告白系の術を使用されて……ということもある。こうなればお前も誓約してもらう必要があるからな。……モリヤには特殊なスキルがある。それは自分以外の者を強くする、強化するスキルだ。これによってお前は今、凄まじい魔力を手に入れた。そんなスゴイ力があることが、外に知れたら……どうなると思う?」
「……?」
そんなことを言われてもね。うん。はてな? って感じですよね。
「セタシュア、お前は既に魔術が使えるようになっている。しかも今後修行すればかなり高位の魔術士になることも可能なくらいの魔力量だ。つまり、元奴隷であろうとも、今後、働く先には困らない」
「はい……わ、わかりました……御主人様がそんなことまで出来ると知られたら……それ目的に多くの人が……」
「ああ、その通りだ。お前の御主人様に、そのスキル目当てで女が続々と近づいてくるぞ? さらに、それに目を付けた貴族、王族、いや、それこそ国そのものに狙われるやもしれん。んー「しれん」ではないな。絶対に、狙われる。幾らイリスが強くても、守りきれない位の敵に囲まれれば、さすがにな」
ま、まあ、それはそう。そういう事だから、マッサージは乱発していないし、下手なことをしないように気をつけていたのだ。
「ファラン様、よろしくお願い致します」
セタシュアが深々と頭を下げた。気合が入ってる。綺麗な御辞儀だ。さすが作法も教わっているだけある。
「うむ。短期集中で特訓するぞ?」
「はい、よろしくお願い致します」
あ。あれ? 直前まで緊張というか、怯えていたのか、おどおどしていたセタシュアがいきなりシャキッとした。なんだ? 目の色が変わったというか。
高位の魔術士って処に引っかかったかな? 彼女が独り立ちして生きていける様になるのは大事な事だ。この世界は奴隷に、元奴隷に厳しい。純粋に力を手に入れるのは大切な事だろう。何よりも、知識と一緒で奪われる事がない。更に身を守る術にもなる。
良く判らないまま。二人は俺の部屋を出て行った。あの、俺が涎や涙やイロイロを漏らしたり吐いたりした訓練部屋に籠もるらしい。
あまりの怒濤の流れに……うん、うーんと。どうすればいいのか、頭が重く、どう考えればいいのか判らなくなって来ていた。もうね、ダメだね。こういうときは寝るに限る。俺の特訓のダメージはまだ残っている。うん。ということで。逃避だ逃避。明日の俺よ、イロイロと考えたまえ。
お休みなさい。
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