0102:くんくんぺろぺろ?
「セタシュア……お前、モリヤには良くしてもらっているな?」
「は、はい!」
「というか、モリヤを好きか?」
「……」
「な、なんてことを……ファランさん」
そんな……酷い。こんなオヤジを好きとか嫌いとか……なんで、そんな、今後の関係がギクシャクするようなことを言うんですか!
セタシュア的に、好きでも嫌いでも、どっちを言っても、俺との関係がギクシャクするじゃないですか! 気を使われても対応が悪くなるし! 何よりも答えがどうであろうとも! 現実問題、俺がどういう顔をして、対応すればいいのか判らない! なのでやめて! やめてください!
「別におかしな事では無いからな。モリヤは妙な反応になっている様だが。お前はセタシュアを地獄の淵から拾い上げた様なものだ。棒で殴られ、使いツブされる寸前だったのだろう? さらに、モリヤは奴隷としてでなく、完全に市民と同等として扱っている。待遇も住み込みの使用人見習い扱いだったな? 確か。食事も自分と同じモノを食べさせてるし、教育も施されているハズだ」
「はい」
セタシュアには文字や計算など、簡単な勉強もしてもらっている。というか、それが出来ないと将来困るかもだし、そもそも俺の手伝いをしたいのでどうすればよいか? と彼女から言ってきたのだ。そりゃそんな願いは叶えるに限るでしょう? ですよね?
「どうだ?」
「……」
「セタシュア、実は今回の件はモリヤの責任問題も絡んでいる。お前が正直に言わなければ、モリヤにも罰が下される可能性は高い。キチンと答えるのだ」
「は、はい、あの、な、なんでもすべて、しゃべります、ですから、御主人様に罰は!」
えぇ……なんでそんなことでこんなことに……というか、セタシュアはその、あまりこう、社交的なタイプじゃ無いのですから、元々。多分。喋るのとか苦手で……あの……。
「も、も、うしわけ、ありません、わ、私を、私が悪いのですから、私を、御主人様は何も、何も」
「……何か思い当たるところがあるのだな?」
ぐす……。
あ。泣かした。ファランさん、泣かしちゃった。酷い。というか、もう、あの、どう対応していいか良く判らない。ヘタレなので。恋愛関係は経験値も少ないし。ご無沙汰だし。どうすればいいんだろう。これ。
「あの……御主人様の下着を……」
え? いま、この可愛い娘さん、もの凄く小さい声で何を言った? 聞き違い? アレ?
「モリヤの下着か」
「はい……その……ご、御主人様の匂いだと思ったら、つい、あの……」
「うむ。匂いをかいだと」
「は、はい……いつもと、ち、違うことといえばそ、それくらいかと……」
あれ?
……なんで普通にこんな話をしているのだろう。この2人は。え? セタシュアさんが、お、俺の下着の匂いをかいだ? え? お、俺、既に加齢臭……? くんくん?
いやいや、まだ大丈夫、そこまでじゃないハズ。というか、当然、汗臭いのはあるかもしれないけど。毎日着替えてるよ? ちゃんと。それこそセタシュアが洗濯して畳んでタンスに入れてくれるし。
「あの、お許しください、あの、それで自慰をしてしまいました……」
「そうか。よく言った。その辺の知識、奴隷は幼少時から覚えることが多いと聞いた。ツライ仕事を紛らわせるために、だそうだな。いま、それを告白するのは、恥ずかしいことでは無いぞ」
泣きながらセタシュアが頷く。……うーんと。うーんと。なんか良い話っぽくなったけど、セタシュアは俺の下着の匂いをかぎながら、一人慰めていた……と。
ほほー興味深い。が、俺はもう、何も話ができん! というか、こんな話を女性としたこともない! 無理! 何それ! どういうこと?
「匂いをかぎながら……いや、それだけではないのではないか? いつもと違う……ということは?」
「!」
ビクッ! とセタシュアの身体が硬直した。ぇーそんな判りやすい図星のリアクションて……。むふう。どうなのよ。それ。まあ、ええ。いいです。後で俺もこれをネタにしよっと。もう、そう考えるくらいしかどうにもこうにも。
「セタシュア。先ほどの話は……罪というのは少々言い過ぎたが、冗談ではないのだ。お前が正直に話さなければ、本当にモリヤに様々な負担がかかることになる。お前の今の状態は、伝説の勇者や聖女に近いかもしれない。魔力を全く感じなかった少女が勇者だぞ?」
「は、はい……あの……あの、はい……し、下着に御主人様の、あの、精が、あの。そ、それを、な、舐めてしまいました……」
ドギャーン!
くんくんぺろぺろ?
漫画の大きい擬音が俺の背後に表示されてるハズだ。絶対。
え? う、うーん……え? なんていうか、え? もう一度言いますけど、え? ちょ、ちょちょっと待って? き、聞き間違いでは……ない。よね?
あの、あれ? 下着っていうから、当然シャツだと思っていたのだけれど。ええ。アレ? 違う? というか、ぱ、パンツの方? アレ? えーと。あれ? 昨日? えーと。2日寝て過ごして、起きた? っていうか、あれ。
そういえば。む、夢精しちゃってなかったでしたっけ? 自分。恥ずかしいから……お湯をもらって、自分の身体を拭いた後にジャバジャバして流してから……と思……ぁ。
ファランさんがとにかく急いで来いと言ってた……とのことだったので、部屋に……身体は拭いたけど……下着はそのままベッドに置いたまま、洗濯してあった新しいのに着替えちゃって……そのままか。
そうか。そうですか。ぐっはー。なんとぉ。それかー。
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