0101:理想
呼ぶとすぐに、セタシュアが部屋に入ってきた。
うん、確かに。なんとなく彼女の周りが……彼女の輪郭から光が溢れている気がする。この鈍い感じ、光り輝いていない感じは俺の見る能力が低いということなのだろう。
セタシュアは……超美少女というほどではないが、普通にかわいい女の子だと思う。ちょっと前まで虐待を受けてボロボロで、さらに痩せすぎてただけで。
キチンとまとめ上げた黒髪、ちょい細めだけど黒い目。日本人的……とまではいわないが、イリス様たちに比べれば若干、アジア系な顔立ち。最近は食事環境が良くなったせいか、それなりに肉も付いてきている。誰だ……誰に似ている? んーとアイドルさんでいた気がするけど……うーん。そもそも俺、グラビアとかほとんど見なかったしな。まあ、俺には正直、まだまだ子供にしか見えないわけだけど。
「さて……セタシュア……何があったか話してもらおうか」
「……」
「ああ、もう、別に彼女が悪いことをしたと決まっているわけじゃないんですから、そんな言い方をしたら」
「うむ、そうだな」
「セタシュア。えーと。昨日今日……いや、最近、何か変わったことはなかった?」
「御主人様が御倒れになりました」
「うん、ああ、そうだね。いや、キミ自身に……何かなかったかな?」
セタシュアは……何を聞かれているのか良く判らないのか、若干すでに泣きそうだ。まあねぇ。やっと馴れてきたところだったからなぁ。こういう詰問系は厳しいよな。
「わ、私に……です、か?」
「うん、何かこう、やりとげた! とか、やってやった! とか、これはスゴイ! とか、そういうのとか、変わった! これは違う! とか、何か閃いたとか」
「モリヤ、何を言ってるのだ」
だってさー魔力について何一つ判ってないし、さらに言えば、溢れ出ているなんてことを知らないからこそ、こういう状況でも何一つ態度を変えてなかったわけで。
彼女は幼少時から奴隷として扱われていたらしいから、一般的な初等教育も受けていない。地頭が良い、賢いのでメイドの仕事は出来ているし、教えればいくらでも吸収しそうだ。
でも今は、まだ、無理だ。わかりやすいとはいっても。論理的に言葉を並べてもピンと来ないと思うのだ。
「あの……先ほどまで、自分は部屋で寝ていたのですが、なんとなく、御主人様が起きられるような気がして、前室に入りました。あの、その予想が当たったときに、スゴイ、よかったって……思い……ました」
ああ、そりゃそうか。深夜だし、やっぱり、前室にいたのはおかしいと思ったんだよね。
「そういうのは初めて?」
「は、はい、あの……」
「続けて」
「前から、あの、なんとなくうっすらと……御主人様が呼ばれているかも……と思って部屋に来ることはありました。でも、昨日のはもの凄くハッキリとしてました」
「そうか。判った。それは、魔力による感知、予知、予感の能力が上がっているから起こったのだと思う」
「……」
「セタシュア……貴方、なんとなく自分が光っている感じがしないか?」
「は、はい、なんだか、変な……自分の手が白く見える様な……」
「いつから?」
「その、御主人様の部屋へ来る時に初めて気付きました」
「それは貴方の中の魔力があふれ出している状況なのだ。そしてその現象は普通に生活していては現れない。昨日、何をしたか覚えてるか?」
「え……あの……御主人様が起きられたので、お湯とタオル、着替えを用意して……その後、御主人様がお食事をなさってファラン様の御部屋に向かわれたので、掃除、洗濯をして部屋を整えていたら……また、御主人様が御倒れになったということで、前室待機していたのですが、朝まで目が覚めないのでは? ということでしたので、自分の部屋に戻り休みました」
「そう……か。そう考えると、モリヤとほぼ一緒にいなかったわけだな?」
「は、はい、昨日はそうでした」
「ね? 俺は何も出来ませんよ?」
そんな、なんていうか、14歳の女の子に手を出した的なそんな危ないこと、日本人として出来るわけが無い。というか、前の世界で未成年に手を出して人生終わったヤツラがどれだけいたことか。奴隷だからそういうことをしてもいいのかもしれないけどさ。って、こっちの世界、非接触だった。触っちゃダメだ。
俺、元々ロリではないしな。セタシュアが成長して……うーん。大人の女になったら……っていや。モリヤ隊の人たちみたいになったら……ちょっと。うん。アレは大人になりすぎか。うむ。
あれ? 俺の好みは二十代後半のハリウッド女優系……だったよね? うん、そのはず。しゅっとした人がいいのだ。あれ? この仕事、職場……理想郷じゃね? 理想郷……のハズなのに。なのに。
主にノルド隊の外見は異国美人、中身はオバはんの方々のせいで、理想のタイプが効果を失い始めている? なんてこった!
問題は、以前と同じように、ロリ&年下は×。日本の婚活系肉食女子はトラウマ有り。熟女もイマイチ。そんななのに! ここに、異国美人も加わってしまったら、俺は、何を、目的に生きてゆけば良いのか……。
まあ、そもそも、そういうのに淡白なんだよな。ハーレム野望とか無かったし。社長になって、成り上がってとか、一切考えなかったなー。
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