0087:地下迷宮第四層その③
一息ついたところで……撤退、又はイリス様、ファランさん、リアリスの3名での探索継続を提案した。
というか、階層ボスの部屋に入るのは上記3名。ロザリアとミリアはボス討伐まで待機なら行けるのでは無いかとも伝える。まあ、この辺はファランさんが過去の古文書から入手した情報として、ロザリアとミリアには伝えている。
「この第四階層は、階層ボスクラスの敵が連続するだけで無く、多数の敵が一度に襲いかかる可能性が高いらしい。敵が1体であれば問題無いのだが……複数の場合、いかんせんどうにもならない可能性が高い」
「それは何か、あたしとミリアが足手まといになるってことかい」
「ああ、そうだ」
イリス様が言い切る。
「2人をパーティに加えたのは「迷宮」に詳しい人間が必要だと思われたからだ。だが、この先は純粋に戦力が必要ということになる。自分で自分の身を守るというな」
敵魔物の数が10匹程度であれば、まあ、どうにでもなるだろう。階層ボスであるさっきのヤツですら、6匹なら何てことは無かった。が。これが、数百、数千だった場合……どうだろうか? イリス様が本気で襲いかかって数百を引付け倒したとしても、残りの数千がパーティに襲いかかった場合。ファランさんとモリヤ隊であるリアリスは、倒すことに拘らず、しのぐことに専念すれば生き残ることは可能なハズだ。永遠にという話では無い。イリス様が自分の担当を殲滅するまでだし。
「ランク8も舐められたモノだ」
「別にお前をバカになどしていない。万が一を考えると、な」
「ふざけるな」
「判りやすく言ってやろう。ロザリア。お前は貴族のボンボンからの依頼で、迷宮での護衛を引き受けた。階層ボスの場所まで辿り着いたが、そのボスがザコを大量に召喚することは判明している。ボス部屋での戦闘は乱戦になるだろう。どう判断する?」
ロザリアの顔がさらに歪む。自分がその貴族のボンボンだということに納得がいかない様だ。
「もしも私がその依頼を受けていたら、貴族のボンボンは階層ボス部屋の扉の前に残し、残りの4名でボス戦に挑む。万が一を考えるとそれが一番だからだ」
「あたしたちは貴族のボンボンじゃ……」
「判った。ロザリア、ミリア。リアリスに斬りかかってみろ」
「あ? 何を」
「納得がいくはずだ」
リアリス小さく頷く。イリス様の命を受けて、短剣を抜き構える。彼女は回復の術が必要だからとこのパーティに加わったハズだ。つまりは、ロザリアとミリアからは、武力的にこの中で一番弱いと思われている。
「本当にか?」
「あたしも同時にですか?」
二対一。しかも森や建物などの遮蔽物もなし。
「いつでもいいぞ」
「ちっ」
ロザリアの舌打ちと共に、まずはミリアが襲いかかった。フェイントを入れながら、死角へ回り込む。両手斧を大きく振りかぶったロザリアの動きを囮にもしている。旨いやり方だ。
が。ミリアの短剣は、リアリスに一切届かない。逆にミリアの後ろ、これまた死角にいつの間にか移動されていた。喉元に刃が当たる。
「え?」
ミリアは、自分がリアリスにやろうとしていたことをそのままやり返されて、唖然とした顔をする。が。ロザリアは、その一瞬を逃さなかった。ミリアを巻き込まないギリギリの位置、リアリスからだと丁度見えにくい角度から、斧を振り下ろす。
が。当然の様にそこに既にリアリスはいなかった。振り下ろした両手斧が空振ったと判った瞬間に、それを強引に横へ跳ね上げて、横回転を加える。重量のある両手斧が大きく回転する。それに合わせてリアリスは、中心部分に滑り込む。
横からの斬撃にして当てようとした両手斧が、さらに空を切る。さすがのロザリアも連続して完璧に攻撃を躱されてしまってバランスが崩れる……と同時にそこに短剣が突き出されていた。
ガシャ
両手斧がロザリアの手を離れる。これ以上回転すると短剣が身体を貫く所だったので、強引に遠心力の元を手放したのだ。
「なんだ……これは」
リアリスの実力。というか、強さは確実に、ミリア、ロザリアよりも上だ。今のでハッキリした。
だが。
一見すれば。そして雰囲気、冒険者としての貫禄? から判断すれば、十中八九ロザリアが勝つと思われるらしい。ランク8っていうのは伊達じゃ無い。それはロザリア本人が良く判っている。そういう強さとか弱さとか、力量差について即座に判断できなければ、生き抜いてくることは不可能だったのだから。
ミリアも、ロザリアほどじゃないにしろ、修羅場はくぐってきている。目の前のノルド族の女性が、ロザリアは疎か、自分にギリギリ勝てるかどうかくらいの強さである……と判断していた。にも関わらずだ。
「そういうことだ。リアリスだけでなく、我々3人は、通常、いや、迷宮に入って今までも、本来の力を隠してここまで来ている。さらに、連携の訓練も行って来たからな。多人数相手の戦闘に慣れているということだ」
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