0047:効果覿面
「新しい術を?」
「はい、使えるようになりました。ありがとうございます、お館様」
というか。
「あの、お館様……っていうのは」
「ノルドがまだ、森の外に暮らしていた頃、それを率いていた方の呼び名であります」
「あ、そ、そうなんだ」
「とにかく、このミアリア、一命を賭して使命を完遂いたします。どうか御下命を」
「あ、いや、もう少し諜報活動について勉強してからじゃないと」
そもそも命を賭けないで生きて帰ってきてくれないと。諜報は。
「はい、了解致しました。今日から心機一転、命懸けで当たらせていただきます」
え、昨日までは? って命懸け……か。まあ、うん、そういうことになる可能性のある任務だけど……ってそういう説明は既に散々してたよね?
「あの、それで、出来ればあのお館様の御業をまたお願いできれば……」
ん? 御業っていうのは、マッサージ? ってこと?
「まずは他の人を優先しないとかな」
「それでは順が巡って参りましたらで、お願いします」
「は、はい」
だからグイッと近寄られてると、どうにも緊張してしまうというか。
「では、失礼いたします」
という、先行者の結果が、確実に彼女達の気持ちに影響を与えた様だ。我先にと懇願されたが、最初に決めた通りと押し通した。
ただ、毎日2名くらいと考えていたのを、一日目5名、二日目4名とあっという間に処方してみた。
で。
俺のスキル=マッサージは結果として10人全員にかなりの能力強化を施すことができたようだ。何よりも。ほとんどの者が新しい術を使えるようになったのだ。
特に【しょうしつ】はミアリアさん以外にも2名使えるようになった。
さらに目に見えないので判りにくいが、身体能力、魔力なども上昇しているのは確かな様だ。正直、能力は高ければ高いほど、生還する可能性が高くなる。よかった。
「とはいえ、いや、それにしても、だ」
目の前に再度失神したミアリアさんが椅子に身体を預けていた。10名全員をマッサージし終わり、三日目。本日から2周目に入る。
2周目はさすがに慣れてるだろうと思ったのだが、そんなことも無く。1回目よりも早く、肩を軽く揉み、足の裏を刺激した時点で失禁しながら失神したのだ。
ちなみに、1回目は10人中、全員がマッサージ中に失神。7名が失禁している。
「ミアリア、ミアリア」
軽くペシャペシャ頬を叩きながら名前を呼ぶ。数名にマッサージをした時点で「さん」付けではなく、呼び捨てにして欲しいと懇願された。1人そうなると全員がそうなった。
「お、お館様……申し訳ありません! 私としたことが! これで2度目となるのに」
すぐに意識を取り戻したミアリアが慌てる。ちなみにお館様は完全に定着してしまった。
「いや、構わないよ。1回目よりも、身体が順応したからか、効果が大きいのかもしれない」
「次こそはもう少し耐えてみせます。再度お願いできますでしょうか?」
ええ、まあ、そう言われれば、試してみたいところ。このスキルについては判らないコトが多すぎる。
「ああああ!」
そして、今度はさっきよりも短時間で失神してしまった。なんだこれ。失神してもお構いなしでマッサージし続ければいいのだろうか。
意識のない状態の人の身体を揉むのは……なんか怖いよ。筋肉が緊張していないので、加減がしやすい気もするけど。
「お、お館様、あの服を脱いでもよろしいでしょうか?」
「え? は、恥ずかしくないの?」
「お館様であれば、全てをお見せしても問題ありません」
そのせいか……効果が大きかったのか……何度やっても全員が同じ様に失神を繰り返し、そのたびに全員が失禁を経験。
マッサージ自体を弱くすることで時間を持たせて、ジワジワと揉まれると強化が効果的(というか、気持ちが良いってだけなんじゃないかという気もする)という証言を受けた。
なので今後はその方向でマッサージすることにする。そもそもあまり何度も失神するのは身体に良くないハズだしな。
そしてやっかいなのが、ミアリアの発言の通り……全員がタオル(として使用している布)で隠しながらとはいえ、ほぼ全裸でマッサージを受けるようになった。
まあ、施術中に脱いだ……が正しいんだけど。
さらに、うつ伏せになる際には確実に全部脱ぐ。大事なところは、正面からは見えない、後ろを向いて見ないようにしている。
当然じゃないが……リクエストに応えて、イリス様やファランさんと同じように、腰や臀部へのマッサージも行い始めた。
じゃないと最終的に効果比較して確かめられなかったからだ。
その辺の図々しさはさすがオバちゃん魂だ。
で。確かに服を着ていると汗をかくし、漏らすと汚してしまうというのは判る。だが、スレンダー美女が「全裸」でマッサージをされて、気持ち良くなっているのを目の前で見せつけられている俺の身にもなってほしい。
まあ、既に面倒になって、一度に数人同時にマッサージすることにしている。椅子や長椅子を並べて、他の人が見ている状態を作っているのでどうにかなっていると思う。でなければ……二人きりはさすがに……ね。うん。ごめん。
まあ、彼女たちは愛撫の先にSEXがあるという当たり前の行為が結びついていない。というか、根本的にSEXが気持ちがいいことだと認識できていない。
だからこそ、無防備だし、無邪気に気持ちよさに身を委ねてくる。
鳥の雛が孵って最初に見た大きい生き物を、自分の母親だと思い込んでその後を追いかけるインプリンティング、刷り込みという現象がある。アレだ。
なのでお館様という呼ばれ方は間違っていない。俺のことは確実に、親だと思っているのだろう。この世界初の行為でもあるのだ。
別に据え膳を無視する様な朴念仁でも無いし、恋愛していなければそう言う行為はしちゃいけない! なんて綺麗事を言うつもりもない。若い頃はそれなりに恋愛も経験してきたし、風俗もそれなりに行った。酔っ払って過ち的にそういう関係に……なんてこともあった。
だが、このなんていうか、子供を騙くらかしている様な、無知故のキラキラした目をした彼女たちの見ていると、俺はそんな大した男では無いし、凄くないと叫びたくなる。目の前の裸体にノックアウトされそうになっているだらしない中年男なのだ。
ということで、そんな葛藤は多々あるものの……さすがにマッサージ以上のことは何一つ出来なかった。中身がオバちゃんで、愚痴が……って事を知らなかったら。ヤバかったかもしれない。
こういう所が煮え切らないというか、押しが弱いなんてよく言われた所以なんだろうが~まあ、それならそれで良し。
もう、逆の意味でどうにでもなーれ! 状態だった。
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