0038:目的

「となると純粋に、王子が自己判断で勝手に動かせるのは第四王国騎士団のみ……ということですか?」


「そう……なるな」


「そう……だろうか?」


 この人たちは……いや、問題はそんなコトじゃ無い。王子たちが団長を務める騎士団は遊軍の様だ。自由度が高く動かすことができる。


 戦力はさっきファランさんが言っていた通り、騎士が200。従騎士が400。合わせて600。さらに従者などの供回りの者たちが400くらいはいるらしい。一つの騎士団が1000名程度の人間で構成されている様だ。


「まあ、まともな騎士団は、だがな。各領の守備隊などに騎士団と名前が付いているようなところも多い。その場合は騎士が2~30程度ということも多いな」


 うん、それでも。だ。


 兵隊の数が……少なくないか? 騎士団の直接戦闘力は騎士の200。従騎士も歩兵として戦うらしいが、戦場では大抵、後ろに控え、従者たち非戦闘員を守ることになるらしい。


 王国騎士団は第六まであるとはいえ、200×6で1200。それ以外に王都守護隊が第一~第四まであるらしい。こちらは騎士ではなく、隊士が600ずつだそうだ。アレだな、騎士団と軍の関係なのかな? 600×4で2400。それが王都の戦力だそうだ。


 他に隠されている隊などがあるのかもしれないが、一国の最大戦力が千単位……というのはどうなんだ?


 いま、俺たちのいる領都オベニスには約1万人の住民がいる。領内の他の街と村を合わせて3万……といったところだろうか? 他の領でも同じ様な感じらしい。


 ただ、王都は違う。王都メールミアは規模がオベニスの10倍以上、貧民窟などの周辺の住人を合わせれば、人はもっといるかもしれないという。確か、こういう時代は大都市に人口が集中しやすいんだっけ? 人は。なので、20万人、もしかしたら、何十万人の都市かもしれない。オベニス領は貧しい領で人口も少ないとも聞いた。


 つまり、王都の人口は少なく見積もって20万。スラムなんかを合わせれば40万くらいはいるかもしれない。にも拘らず兵は最大でも5千程度。うーん。確か「三国志」の軍は1万人単位だったよなぁ。


 関ヶ原は20万vs20万とかだったか? あーもう。わけわからん。


 王都に20万、加えて、15の領……各領最低でも4万とすれば、この国の人口は約60万とか70万人となる。少ない……よな。現代日本だと中堅の地方都市……といったところだろうか? って戦国時代初期の日本全体の人口が1200万人だっけな? で、江戸の人口が100万だっけか? うーん。比較の仕方が良く判らないけど少ないのは確かだ。


 まあ、俺の知っている地球世界と単純に比較はできない。この世界には魔物という人類の天敵が存在するからだ。人の手の入っていない土地は多くても、開拓できないのでは発展のしようが無い。


 過酷な環境故に、人口増加し続けていた地球とは違い、人口の大幅低下もあるのかもしれない。大氾濫なんて良い例だよな。

 あ、そういえば地球もあるわ。中世には流行病とか、大飢饉などで大陸の人口が大きく減ったなんていうのを伝記で読んだ気がする。


 そういえば、さらにこちらには……脅威に対抗する冒険者や英雄、勇者、魔術士……なんていう超人的な能力者も存在する。ああ、だから軍人が少ないんだろうか? 少数精鋭ってことなのかな?


 それよりも……どう考えても王、国の意思としての領の調略。


 うーん。ああ言ったけれど、今ある情報だと動機が小さい。


 うちの領は貧しいっていうのは誰もが知っている事実。今後、魔石をキチンと流通させれば、ある程度状況は良くなるだろうけど、まあ、その程度だ。

 何か……わざわざ王領に召しあげたい理由があると思うんだが……うーん。こちらも判らん。


「この地は……何か重要な……記念的な場所、王国建国の地だったりとかしませんか? でなければ、実は金山とか銀山とか鉱山が隠されているとか」


 領地の基盤として鉱山は大きい。ミスリルとか稀少鉱石を産出する鉱山があるのなら、王家が手に入れたい理由になると思うのだが。


「そんな話は聞いたことがない……な。まあ、確かにオベニスは古くから存在する城砦都市だ。地下水路などはいつ造られたのか伝わっていないしな。……いや、何か……あるのか? 地下水路の奥にとかに?」


「あるのか?」


「……調べて見るが……そんな資料は見たこともない」


 この都市の地下……か。まあでも、普通に正体不明の水路っていうだけでちょっと怖いよな。それこそ、冒険者に詳細を調査させていないのはなぜなんだろう?


「昔、何度か地下でグーブル系の魔物が繁殖して調査のためにクエストが設定されたことがあるんだが……水路の詳細な地図は作成したことが無かった気がするな。そういえば」


「なぜです?」


「実はこの街の水路は幾層にもなっていて、奥が見えなかったのだ。キリが無いということで早々に引き上げた」


 怪しいけど……その時の冒険者たちからしたら、そんなくらいしか価値を見いだせなかったわけで。それくらい情報が無いってことなわけだし。まあ、うん、理由は後で調べるとかしないと、新情報が無いとどうにもならない。


 大事なのはそっちじゃない。


「現在、我々はどん詰まりです。どう転んでも押し潰される。多分、これは王族、つまりこの国の意志だと思われます。イリス様……は優しい。魔物に食い殺される直前だった俺を助けてしまうほどに。この先抗っていくには無辜の民も無事では済まない」


「覚悟が必要だということか」


「はい」


「私は……別に優しいわけではない。出来ることはしないと目覚めが悪いだけだ」


「ええ」


「国と事を構えるか……」


「正直、考えたこともなかったが、潰されるのであればやるしかないか」


 ファランさんも頷いた。


「何か策があるんだろうな?」


「あるわけが無いですよ! 今さっき話を聞いたばかりなんですから。なんですが。とにかく足りないモノは判っています。人です」


「まあ、そうだな……平民から何人か雇いはしたが、役人は未だに足りていない。この領に忠誠を誓う土着の騎士もそういない」


 現状、この領地の運営は俺とファランさんで回していると言っても過言では無い。正直、法衣貴族とか、下級貴族が一切いないからな。知識層=官僚が皆無なんだよなぁ……。


「ええ、それもですが。それ以上に必要なのは……我々の目と耳になる人材です。これから国に挑む以上はとにかく重要になるのが情報。探索、偵察の出来る者たちです。本来冒険者に依頼するのかもしれませんが……敵に捕らえられれば酷いめに合うこと確定という、ね。ある程度口も堅くなければならない。どこかにあてはありませんか?」



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