0025:獣の様に
「自分の……生活していた世界では、性行為=子作りでもあるのですが、性行為=快楽を感じる行為でもありました。えーと、この世界に自慰行為は……」
途端に、ファランさんの顔が赤くなった。
「な。お前は何を」
「よかった、自慰行為に関しては女性が口にするのも恥ずかしいことなのですね? つまり、享楽、快楽を得るモノとして認識されていると考えてもよろしいですか?」
「あ、ああ、そればかりしていると馬鹿になる、堕落してしまうと言われているな」
「自慰行為を誰かに見られることは?」
「恥ずべきコトだな。異性に裸体を晒すのと変わらん。だが、行為をすることでぐっすり眠れるようになるとも言われてもいる。なのでそのようなことはベッドの中でするのが相場だ」
「あの、子作りの詳しいやり方、それと心情的な部分を教えていただければ」
「子作りは愛する者との崇高な使命だ。如何に触れあうことを避け、如何に早く終わらせるかが大切となる。これは昔から言われていることだ」
「精を放つという意味では男性は子作りも自慰行為も一緒ですよね?」
「ああ、男は精を放つ瞬間に快楽を感じるからな。同じだな」
「じょ、女性も自慰行為はしますよね?」
「それと子作りは関係ないではないか、恥ずかしい」
え? えーと。なんだ? それ。
「子作りのやり方を細かく教えてください」
「お前、普通は男女であまりこんな話は……」
「大事なことなんです。教えてください」
「……男が女の寝室へ行き、張形に精を放つ。放ったらスグにそれの外側にユミルの油を塗り、女性が中に挿入して、中に入っている精を押し出す」
んん? 張形っていうのは、えーと、文字通り、ディルドとかこけしとか、バイブレーターで良くあるヤツのことか! え? 直接挿入はしない……ってこと? 押し出すって事は……注射器? みたいな?
「あ、あれ、男性のモノを女性の膣中に挿入はしない……んですか?」
「ああ、確かに太古の昔には、男のモノを女の中に収めて精を放つというのが子作りの基本と言われてはいた。古文書などにはそんな表記が見受けられるしな」
スゴいな。この人。この手の事は専門外なんだろうに、古文書を読んでちゃんと覚えているわけで。
「が、それは子作りの定義として、そういう仕組みであると書いてあっただけだ。確かに、私の祖先の……今から五百年前くらいまでは、どんなに嫌でも、そういう直接なやり方しか無かったそうだ」
なんていうか、ファランさんは忌々しいそうな顔をしている。
「男が精を出しそうな寸前まで自慰を行い、直前で女の中に収める。どれだけ、その接触の時間を短縮出来るかが重要とされていた様だ」
うーん。まあ、そもそも、異性の裸体に興奮するという感覚も無いみたいだしなぁ。俺とは性に関する感覚自体が違うんだろうなぁ。
「だが、その後、張形を使った方法が普及し、それでも普通に子供が作れることがわかると、一気に廃れていった」
まあ、それはそうか……触るとなんだかイヤな感じがするんだもんな。相手がどれだけ好きな恋人だとしても。
うーん。確かに、現代日本なら体外受精とか、精子や卵子を採取してそれを冷凍保存しておいて……というのも問題無く行われていたわけだから、このやり方でも妊娠は可能なんだろう。
それにしたって効率良くないよな? コツとかもあるのかもしれないけど。出生率……低めな気がする。そう言われてみると……都市や村の子供の数が少ない気もするな。
「モリヤ、この話とまっさーじの話はどう繋がってくるのか?」
ファランさんが真剣な目で尋ねてくる。うん、きっと何が何だかサッパリわかっていないんだろうなぁ。
俺が行っている行為でイリス様が気持ち良くなっている、快楽を感じている時点で、俺にとってはマッサージは愛撫と一緒だ。
当たり前だが興奮してしまう。別にそこまで暴れん坊ではないが、きかん坊ではあるのだ。
さらにさらに。イリス様もそうだが、ファランさんも超絶と言って良いほど美人だ。
現代に連れて行ったらそのまま女優、モデル、外見勝負の職業に即就けること間違いないレベルなのだ。少なくとも御近所レベルで見かけることはできない。
当然だが、この世界の人はみんながみんな美男美女というわけではない。
俺と同じ、いや、大胆に薄毛どころかハゲ散らかしてる人もいるし、太めな人、スタイルが残念な人もいる。女性だって結構アレな感じの方もいる。
なのでこの二人レベルの美しさに慣れるのは難しい。
ああ、でも、この屋敷で雇われている使用人の女性は、結構可愛いな。デアさんも小動物系だし。未亡人だけど。
「自分のいた世界では……性行為と快楽は密接な関係を築いていました。意外かもしれませんが、性行為をすることは子作りをするということなのですが、それと同時にお互いが快感を感じるモノでもあったのです」
「お互いが?」
「ええ、何よりも大きく違うのは……自分のいた世界では愛し合ってる者同士がお互いの身体を触り合うのは当然な行為でした。当然、公共の場、他人の目のある場所で過度にいちゃつくのはマナー違反でしたが、二人きりの密室=寝室などでは抱き合うのは当たり前というか。軽いキスを挨拶感覚でする国もあるし」
「キスとは?」
「口と口を合わせ、吸い合う行為です。これもコミュニケーションの一つで、恋人同士の親密な関係の目安みたいなものというか」
「なんと」
「さらにマッサージ自体は、身体の疲れている部分を揉みほぐすことでそれを癒す行為なのは間違いありません。ですが、身体の特定の部分を刺激すると、快楽にも代わります。自慰行為で触って気持ちの良い部分は、愛する人、好きな人に触られることで、更なる快感を呼び覚まします。つまり、性行為に繋がっていく行為になり得るということです」
「そうか、かなり密接な関係の場合に発生するのだな? それは」
「ええ、少なくともこの世界のように簡単に切り離して考えられるものではありません」
「まあ……動物のようなものか」
「え? 人間以外は……性交いや、交尾はあるんですか? 普通に?」
「普通では無い。動物や魔物は女神を理解しないからな。影響はないのだろう。我々にしてみれば、アレは野蛮でおかしい行為なのだ」
「まあ、確かにそういうことかもしれません。自分のいた世界でも「ケダモノの様に交わり合う」なんていう表現がありましたし。ああ人間同士でも、当然、性行為は愛し合っている者同士だけで行う訳では無くて……乱暴狼藉、力尽くで押し倒すとか、金銭の為に泣く泣くとか、風俗としてそういう行為を金銭で売るということもあります」
「そうか……ということは、我々がこのマッサージをお前から受けていると、我々はともかく、お前がケダモノになって襲いかかってくる可能性があるということか」
「はい、そうです、その通りです!」
やっと伝わった! か?
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