0014:弛緩
とりあえず、ズボンの上からふくらはぎに手を当て、力を入れる。とんでもなく柔らかい……。
ズボンの上からだからイマイチハッキリしないが、さらに弾力がスゴイ。筋肉はしっかりと付いている。その肉が異様に軟らかいのだ。
膝下から、ふくらはぎ、そして足の裏と力を入れていく。髪が若干濡れているので、多分、俺と同じで風呂に入った後なんだろう。筋肉は緩んでいる方がほぐしやすい。
まあ、ふくらはぎから足先以外は……うーん。腕と掌くらいか。肩も大丈夫かな。
上司である上に、命の恩人。失礼が無いように、エロくならないように注意しながらもんでいけばいいか。
とりあえず、そういう理由から……セクハラ的な部位……腰も、太ももも触れないので、リンパの流れを良くするマッサージは中途半端になってしまう。まあ、全体的にあまり強くしなければ、揉み返しも起こらないだろう。
それこそ、足の裏だけでも多くのツボが存在する。丁寧に、ゆっくりともみほぐしていけば、確実に足が軽くなる。特にイリス様は基本冒険者的な革のブーツを履いているため、常に負担は掛かっているハズだ。ハイヒールほどじゃないにしても。
ふくらはぎの上から下へ。さらにそのまま前の骨と肉の間。足首、足裏。丁寧に、凝っているっぽいところを中心に刺激する。
しかし……長い足だ……筋肉質ではあるが、太ももそこまで太くはない。ふくらはぎの筋肉はしっかりしているのは当然だが、柔軟性に富んでいる。
足首から下、足の裏が唯一素肌を晒している部分ではあるのだが、その部分だけですら美しい。
だからではないが、力も入る。入念に。ツボの場所周辺から揉み初めて、ちょっとずつ、ちょっとずつ、核心に迫っていく。
足裏を丁寧に揉んでいくと、じんわりと汗を感じた。うん、代謝が良くなって熱を発し始めているのだろう。イリス様はうつ伏せになって、顔をソファの奥側に向けているので表情は見えないが、まあ、文句は無いはずだ。でなければ拒絶の言葉かとっくにやめさせられているだろう。
さらに、足の指の間を揉んでいく。あまり強く無く、かといって弱くも無く、根元から指と指の間を広げたり閉じたりしながらほぐしていく。
ちなみに、手の指と同じ様に、足の指周辺にも性的に感じる部分、性感帯は多い。
以前、アレの最中に口に含んでみた所、それまでいまいち鈍かった彼女が異様に反応したこともあった。
ってそんなことを思い出してしまうと、主に下半身が邪な方向へ思考が向いてしまうので意識をずらすことにする。静まれ自分。これは仕事だ。仕事なのだ。
「イリス様、どうですか? 痛くないですか?」
「……」
あれ? 寝ちゃった? かな?
「寝られました?」
「い、いや……うん、き、気持ちいい。もっとしてくれ。こんなのは初めてだ」
へ? やっぱり、マッサージって無いのかな?
「こういうのをマッサージっていうんですが……体験ありませんか?」
「他人に触られることは無いな」
「え?」
あ、そうか、宗教的にか……この国ではなんか、露出を嫌うだけで無く人と人との接触もあまり行わない。
言われてみれば、ハグしている、キスしている風景も見たことが無いな。隣り合って話をしながら歩く男女は見たことがあるが、手を繋いでいる男女……は……見たことないな。それすら禁止されているのだろうか?
あれ? ってことは恋人同士は……どうしてるのだろうか? 男女の性があるのも、身体の造り的にも、子供を作る方法は自分の知ってる日本、世界と一緒の様だとは思っていたのだが……。
ま、まあ、うん、この世界の性生活の探求は別の機会にするとして。ご依頼とあれば頑張らねばなるまい。丁寧に足先を伸ばすと、次は肩に手を伸ばした。
ビクッ!
とんでもない勢いでイリス様の身体が跳ねた。え? いま、肩に手が触れたか触れないかってくらいだったと思うんだけど……。
「だ、大丈夫……ですか? こ、これくらいでやめておきますか?」
「い、いや、だ、大丈夫だ……続けてくれ」
「はい……」
まあ、なんか過敏な反応がちょっと恐かったが、うん、続けてくれと言われれば、続けねばなるまい。
そもそも、役得だ。
超絶美人の身体をまさぐっているのだ。笑。あの凄まじいまでの強さを目の当たりにしていなければ、普通に理性が飛んで、襲いかかっていてもおかしく無いレベルの美女だからな。
もし彼女が気に入らなければ、指先一つでダウンする自信もあるしな。俺。
肩をもみほぐしながら、首筋から背中にかけて、親指でなぞっていく。
案の定、ふくらはぎに比べて、肩から背中の背筋は分厚く、硬い。こちらも少しずつ揉みほぐしていく。少しずつ、押すように揉みほぐしていけば筋を痛めるようなこともない。
時間はそれなりにかかるが、プロのマッサージ師や整体師ではないので仕方が無い。
背骨に沿って、そのまま親指で腰骨の辺りを押してゆく。少し調子に乗ってみた。
ビクククッ!
また、反応がトンデモナイ……カツオがビチビチと跳ねるかの如く、イリス様の身体が跳ねた。……いきなり腰を触られて、ビックリしたのだろうか?
「こ、ここはやめておきましょうか?」
念のためお伺いを立てる。
「は、はあ、す、すまん、ちょっとビックリしただけだ……問題無い、やってくれ」
うん、まあ、そう言われれば……はい……うーん。快く思っていただいているのであれば、問題無いんだけど。
ちょっと怖い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます