第23話 泡沫の夢を抱いて、そしてまた眠るの
『一度覚めてしまえば、たかが一夜の悪夢。
されど、その死がもたらす「次に」訪れるのは———更なる
全ての『嘗て』は奪われ、気が付けば一度上りきったはずの階段に、又もや真新しい階段が出来上がっている。
狂気と理性の間。夢と現の彼方を、今日も当てなく彷徨い続け。
そうやってあの冷たい部屋の記憶をかみ砕く度、まるで煮詰められ過ぎて。煮詰めた
一度死んでも夜空の星になれず、だからと無邪気な子供のままでもいられない。
けれど光は、未だ遠く。
真っ暗な世界に、絡め合う指の感触ばかりが残る。
だから、そんな
大輪の
例え変わり果てても、創り続けるの。
種まく神の過ちは、きっと……『今』と呼ぶべき世界に、『私』という『
□
———どれだけ頑張って背伸びをしても、幸先が見えない。
可哀想な生い立ちでも、誰よりも美しい
一見恐ろしくも、何より物悲しい過去を抱く
どちらも小説・映画等関係なく、『創作物』自体によく用いられる題材だ。
定番の中でもド定番。
されどそのテンプレさをどう生かすかは作者次第で、そんな中、特にこの二つはよく掛算される組み合わせでもある。
引き裂けて、縫われて。嘗ての古傷と『今』で新たな跡を残す、あたしの『
完璧とまで行かずとも、私が楽しければそれでいい。
例え仮想上の空論になろうとも、「こんなの」があれば楽できるな。
前世の知識と今の世界観。
日常生活の合間合間にて、時折そうやってぽろっと零れる、子供の戯言。
揺り籠から墓場まで安楽に息の根を張り、いくら『権利』に『代償』は付き物とは言え。
それこそ外聞・公式・展開構わず、問わず、例え一生実家の太ももに縋りつくことになろうとも。
今生こそ楽に生き、天寿まで(できるだけの)楽をして。
適度の親孝行はしつつも、テンプレなき人生を送り。普通のまま普通に世を去りたいし、去る(予定)。
「どうせ一度死んだのだから、とにかく楽がしたいでござる」
何はともあれ、少なくともあの日からの現段階まで。
事の始まりは、全て、たったそれだけの欲求故だった。
「———初めまして、眠り姫」
だった、はず、なんだけどなぁ。
神様大丈夫?
主に頭らへん。
本当に意味と現状が訳ワカメなのだけれども、何だこれ。
「レイチェル・ローズブレイド。今日から貴女の師匠となる、未来の上司よ」
「なん…だ、と……」
初めましての開口第一声で師匠なのか上司なのか、どちらか一方に絞ってたもれ。
と、ツッコむ前。「上司」という響きに真っ先過剰反射して「神様、殺すぞ」と思ってしまう———今日この頃。
え?
私そんなに悪い事した??
どの世の中でも一難去ってまた一難とよく言うが。どう前向きに考えても、もう詰んでない??
やはり現実はクソ。
折角ベッド住民からクララになって、ママに「紹介したい人がいるの」と言われたものだから「おっとぉ? もしや略奪か? 略奪なのか?? 何やってんだよ、
そう思うとマジで殺意が湧くが??
最悪。
神様、ホント嫌い。
今なら例のアザラシからメロスに進化して、この怒りのまま各地の暴吏を(実家を盾に)引き千切り、暴君を(実家の権力で)殺し、神様さえ(実家の威光で)堕とせるかもしれない……。
は?
殺すぞ。
【魔力暴走】リターンズ()からのマジオコお嬢様再臨。
芸術は爆発で、映画に爆発シーンがないと盛り上がらないとはいうものの、誰も現実世界にまで求めていないが??
神様、マジで頭大丈夫??
異世界枠の前に自世界産のイケメンを連れて来れば何でも許されると思ってない??
確かにイケメン・美ショタ、美丈夫、美女に囲まれたいのは世の
は????
本当に意味が分からない。
何だこの現状?
誰でもいいからいっぱい説明して。
馬鹿でも分かる様に、
「お姫様にはこれからウチで冒険者登録してもらって、精霊・魔物使いを目指してもらうから、覚悟なさい」
「いや、あの、いきなりそんな在りし日のポケットなモンスターのマスターになろうぜ! みたいなことを言われましても……」
「あら? まだ何も聞いていないのね、貴女」
「?」
なので、そんなこんな思いつつ。頭に嘗てないほどの「?」を浮かべ、小首を傾げるアトランティア。
その姿につられ相手も首を傾げ、目を見開き。
そんな奴らの姿を見た周囲の人間までも首を傾げだすものだから、一瞬にして空前絶後なまでにいっぱいの「?」が屋敷を埋め尽くしたのは言うまでもない。
師匠ともかく、突如の上司発言に引き続き、台詞の文字面からして圧倒的嫌な予感。
家族公認ナマケモノになる大志を抱き。アラーム概念のない世界で、今日も今日とて「明日から頑張る」と惰眠を貪り。
どうせ一度死んだのだから、とにかく楽がしたいと。前世から受け継ぎし引き籠り症候群と、陰キャの性。
なのに、今更。
一体、
見る見る内、アトランティアは青ざめ始めた。
元大人でも、子供の体なんてそんなもんで。体中から冷や汗が噴出し、心臓がやけに大きく嫌な音を奏で出す。
運動しようぜは余命宣告、旅に出ようぜは死刑宣言。太陽は生まれながらの天敵で、体育のペア作りはただの地獄。
恋できるできない
「大丈夫、こう見えてもアタシ、これでも大陸では五本指に入るSクラス冒険者だし。ウチのギルドはそこらのギルドとはレベルも格も違うから、きっとお姫様もお気に召すと思うわ」
ドキドキ、わくわく。私の引き籠り生活は何処へ?
そうだけどそうじゃない問題以前の大問題がそこら中で大渋滞を起こしている、今この時。
これだから異世界転生者枠も楽じゃないし、例えモブ枠でも楽させてくんない現実にして現状という名の惨劇。
神は死に絶え、今生の世界までもが私を見捨てた件について。
これは、詰み。
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