第9話

脳に管を差し込まれる。

管はカラフルで虹の様できれい。水の中にいる感覚だけがあってまるで人魚になってしまったみたい。

痛みは不思議となくてただ脳の裏が熱い。何かが体の中から出てくる感じが何回もあった。


妹とテレビを見ていた。本当、退屈だ。妹は魔法少女になりたいなんて言って笑っている。こんな日々がずっと続くと、僕ら双子はずっと一緒だと思っていた。


日曜朝にやっているアニメに出てくるようなマスコットのような空飛ぶ小型のミックス犬に命令される。「おめー助けてやったんだから役に立たんかいコラ」そんなあんな化け物相手に逃げないなんて無理だ。絶対。

敵は全身とげまみれの人型のうにみたいな宇宙人。しかも棘を飛ばしてくる。こんなの逃げるしかないだろ。できることなんて、石を発射する程度。武器もないし。しかも力の調節をミスると石が破裂する。なぜか飛べるから何とか逃げられているけど。いまいち決定打になる攻撃がない。周りは田んぼだし電波塔くらいしかない。電波塔はさすがに動かせない。

「武器ってないですか」

「あ?武器だ?そんなもん、、、あ、ごっめんあったわ、それとめっちゃ怪我しても時間たてば治るから安心して」

それを聞いて完全に人間ではないことを理解した。でもそれだけが分かればこっちのもんだ、武器ももらったし。杖だけど。きっとなんかすごい力があるに違いない。勝てる。

杖をウニ男めがけて打つ。破裂してあっさり死んだ。地面は円形に削り取られたようになる。さすがにあっさり過ぎるけど。勝てたのなら何でもいい。地面に降りて死亡を確認する。死骸から出てきたとげに貫かれる。とげは溶けて、僕の体に死骸が入ってきた。寄生された!?体の内側で何かがうごめいている。

マスコットキャラみたいなやつが焦った顔で言った。

「変身って言え!」

全身からとげが生えて腹のあたりから切断された。

「変...身...」

アイドルみたいな服になって怪我が全部治った。ウニ男はきれいさっぱりいなくなってしまった。完全勝利だ。そして僕は気を失った。


ある日、UFOを見に行こうと妹が言った。妹の友達の3人と僕の友達一人を誘って、学校でUFOの目撃情報の絶えない近所の山に入る。時刻は夜中の7時こんな時間まで遊ぶのは初めてでワクワクする。僕は妹の友達の一人のまいちゃんが好きだった。まいちゃんは不思議な子で、他人に対して興味が薄いというか自分の世界に入り込んでいるタイプでそれがすごく魅力的に見えた、反対につかさとあきらのことは初めて会った時から嫌いだった。人を小ばかにしたような態度、口の悪さ、妹に向けている感情が透けて見える感じが特に。僕の数少ない友達のひまりをいじめていた奴らだ今更謝ってきても絶対に許さないし仲良くするつもりもない。ただUFOの噂を良く知っているのは彼らだったから妹も仕方なく、仲良くしているようで会話はあんまりなくて、それぞれが1番仲のいい一人と話していた。妹はまいちゃん、僕はひまり、つかさ&あきら、やっぱりひまりとは気が合う、あいつらみたいに人に悪口も言わないし、頭が良いのに威張ってもない、何より趣味が合う、お互いに絵を描くことと読書が好きで面白かった本を貸しあったりしては感想を言い合って語り合っている。一緒にサボテンのスケッチもしたことがある。サボテンのスケッチはひまりのがうまくて少し嫉妬した。

でも気が合うやつがそばにいるだけで安心する。必要とされている気がして。一人じゃない気がして。


しばらく歩いていると、開けた場所に出た、地面は芝生の様で人工的なように感じた。

その芝生よりも明らかにおかしなものを見つける、僕よりも前を歩いていたあきらとつかさはそれに真っ先に近づいた。それは明らかに地球外から来たものだった。UFOだ。二人は1000体は乗れそうなUFOの扉を蹴っている。すると扉は開いた。二人は足をつかまれ、首と肩が同じ太さで手足が異様に細い生き物にさらわれた。その生き物たちは、僕ら4人に気づいて追いかけてくる。数は大体5,6体。幸い坂道だったので逃げきれそうだった。一人なら逃げきれていたと思う。僕は足が速かったから。でも3人は足が遅くて、しかも、完全に腰を抜かして座り込んでしまっている。ひまりが泣いて、縋りついてきて動けない。もうすぐそこまで宇宙人たちは来ている。僕らは団子になってその場から動けなかった。

あの自分の世界にいつも入り込んでいるまいちゃんですら普通の子供みたいに泣いて震えていた。妹は泣きながら皆を励ましていた。本当に強いなあ。そのかいあって、みんな立ち上がって、逃げようとした、頃には遅かった。宇宙人は細腕に見合わない力を持っていて僕らは首を絞められて気を失った。


目覚めたら、周りにみんなの姿はなかった。隣には同じ高さの手術台が並んでいて、台の上には真っ二つになったみんなの服と、血液があった。たくさんの手術台の近くには、大きなミキサーのような装置と大きな鍋のようなものがあった。机の上には、料理に使うバットのもっとおおきな物の中には、明らかさっき取り出したばかりのような小ぶりの五臓六腑が4セットあった。溢れそうになる吐瀉物を飲み込み目を伏せる。

大きな鍋の中からは聞いたことのある、こしょこしょ声が聞こえる。そして鍋に棒が入り叫び声が上がる。火が入りついに地獄の釜茹でが始まってしまった。叫び声がきこえる。声はすぐに聞こえなくなった。代わりにお湯の沸騰する音だけが聞こえた。

溶けたそれとバットの中のものをミキサーに入れた。ミキサーが止まると這い出てくるものに驚いた。犬だ。ゴールデンレトリバーくらいのサイズの。犬たちは宇宙人たちを蹴散らして僕を背負い走り出した。無事宇宙船から脱出する。まだみんなの意識が残ってるのかななんて思った。

まだ宇宙人は追いかけてきて走っていた僕の手足をレーザー中で吹き飛ばした。そしてすぐに気を失った。

目が覚めると周りにいた宇宙人は消えていた、どころか家のベットだった。夢ではないのは洗面所の鏡を見て悟った。鏡に映っていたのは完全に別人だった。肌は黒くて髪は白い、眼は赤い見たことのない人種だ。吸血鬼みたいな人間離れした雰囲気もある。鏡に映っているのだから吸血鬼ではないのだけれど。僕は本当に僕なのか記憶だけ移植されたクローンじゃないのかと怖くなる。ただ確かなのは僕の名前は千歳優で妹のはるがいるということ。そういえばはるがいない。いつもみたいに友達と遊んでいるのだろうか。不安だ。そんな気持ちでシャワーを浴びる。凹凸の少ない体をまじまじと鏡で見つめる。あるはずのものがないのは新鮮だ。隅々まで褐色、黒人ほどではないけれど、自黒って感じだ。お風呂を上がると小型犬みたいなマスコットキャラが言った。

「行くぞ」

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