第5話
私が朝起きると、子供、それも女性とまではいかない子供になっていた。誰が、何のために。こういった秘薬があるという噂は聞いていた。ネズミが部屋の隅で死んでいる。空もベットもいつもより大きい、ホテルマンたちもいつもより優しく子供もいい物だななんて楽観的になり始めていた時事件は起きた。ホテルから出られないのだ。子供一人では。
部屋に戻るとザリガニも死んでいた。不気味だった。家が恋しくなり始めて泣きだしてしまいそうだった。そこで脳まで子供になり始めていることに気が付いた。天井の虫がころりと落ちて死んだ。
客が部屋から消えているとホテルマンたちは騒いでいる。私を子供にした犯人も見つかっていないのに、また騒ぎが重なる。ホテルから女が飛び降りて、死んだ。死体からは死んだカタツムリしか見つからなかった。
結論から言おう、私を子供にした犯人は死んだ女だった。女は部屋で薬の調合をし、僕に飲ませた、たったそれだけ。理由なんかは死体が喋りでもしなければきくことはできないだろう。
部屋の隅のザリガニを踏んだ。抜け殻だった。水が無くても脱皮ができるのだと感心した。その夜、次の犠牲者、と言っても私の助手が子供になった。
僕は彼女を殺した。犯罪者を裁く職業の人間が最大の罪を犯すなんて全く滑稽だ、滑稽すぎて飛び立ちそうになる。なんてことを、してしまったんだ。死刑囚や極悪人に飲まれてしまったのだと思う。僕が弁護士を始めてから性格が変わったと彼女も言っていた。今となっては何も言わないが、全く清々するうるさい女がいなくなって清々するよ。違う、これは僕の心から出た言葉じゃない。
僕は刑事だ、僕は刑事だ、僕は刑事だ、僕は刑事だ。思い込まなくてもわかっている。
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