第3話
5月2日
私には好きな人がいる。今日も彼女の後ろをついてまわった、しばらく歩いてこんな崖っぷちまで来てしまった。いつもの崖っぷち、でも今日は違った。彼女が飛んだ。そして音もなく消えてそのあとから波の音がサーと聞こえる。うるさくて耳をふさぎながら今日は帰った。天気は雲一つない海と同じ色の晴天だった。
5月3日
今日は彼女はいなかった。いないときは大抵病院にいる。だから私は病院に行った。するといた、彼女と小一時間話して帰りに小袋を貰って小松菜と大根をスーパーで買って帰った。
5月4日
今日は波の音が聞きたい、そう思って海に来た。天気は曇り、今にも雨が降ってきそうでアクセルをべったべたに踏み込んだ。彼女の飛んだ崖の下を見たい気持ちもあったと思う。どうせ何もないけど。砂原をこえて湾磯につくと傷一つない彼女によく似た人魚が横たわっていた。私は二日前の彼女が人魚になったのだろうと考え連れて帰ることにした。人魚の肌は白く陶器の様に透き通っていた。ざわざわとした波の音が彼女の肌を突き刺さないうちに家に帰った。
5月4日
人魚は浴槽に入れた。ぬめっとしていて入れにくい。日は既に赤く染まっていて二人きりの浴室を太陽は覗かなかった、動かない彼女の目は虚ろ、水を入れるとぷかぷかと浮かんで嬉しそうに見える。それを見送るとこちらも嬉しい気持ちのままシャワーを浴びて布団に入った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます