第3話 人見知りの乙女






「____く、黒瀬君......?」


「もう大丈夫だよ。今助ける......」


 ここで、朝霧を救わなければ彼女らに【復讐】するための努力は一瞬で消えてしまう......


 だから、絶対に救って見せる。


「なんだ、ガキ?お前、調教してやんよ!」


「おっと.....」


 いきなり、殴りかかってくるのかよ......

 はあ、それなら公園なんかでしないでほしいな......


 そして、この右からのストレート......

 こいつ、ボクシングの経験者か?


 重心のかけ方、力の入れ方がうまい。


「避けてんじゃねえよ!」


「くたばれ、クソガキが!」


 おいおい、3人襲い掛かってくるのはさすがに卑怯すぎるだろ!

____まあ、いっか。




「____シュッ......」


「ご、ゴホッッ!」


 俺は、殴りかかってきたところをカウンターで倍返しにした。


 だけど、あんまり傷つかない程度にだけど......


 まあ、イケメンになるにあたって、空手などの武道は必須だからな......知らんけど。


 今までの努力が、こんな風に活躍するなんてな......


 やっぱり、鍛えといてよかった!


「くそ、覚えてろよ!」


 そういうと、彼らは急いで車に戻ってこの場を去っていった。


「あいにく、俺は覚えられそうにないよ......」


 『覚えてろよ』って言うやつ、本当にいるんだな......

 てっきり、アニメの世界の住人しか言わない言葉と思っていたわ......


 「____く、黒瀬?」


「ん......?」


 あ、ヤベ、朝霧の存在、忘れた......


「____ありがとう......」


「あ、ど、どうも......」


 へぇ、朝霧ってちゃんとお礼はできる人なんだな......


 学校では、【氷の美少女】と呼ばれるほどの塩対応って聞いているのに......


「よく、黒瀬ってわかったね、結構、顔変わったのに」


「____だって、ずっと見てきたから......」


「えっ......?」

 

 ずっと見てきたって、いじめのことか?

 あ、朝霧ってあんまり喋らないし、本当に謎すぎる......


 まあ、いじめも朝霧はずっと横で見てたって感じだったしな。


 あ、ていうか、もう6時じゃん!?


 筋トレの時間が過ぎてしまう!


「じゃあ、俺、そろそろ時間だからじゃあね」


「____あっ......」


 そして、俺は公園から出た。


 そういえば、寄り道したのって久しぶりだな......


 あ、そもそも学校行ってなかったから寄り道なんてできないか。


「はあ、つかれ___うお、なんで朝霧さんついて来てるの!?」


「____私も、こっちだから、帰り道......」


「あ、そうなんだ......」


 てっきり、こっち方面で帰る人は俺一人かと思った......

 それよりなんで、今まで気が付かなかったのだろうか......


「____なんで、学校、来なかったの......?」


「えっ......あ、えっと、まあ急用で......」


「____ふぅん、ほんの少し寂しかったのに.......」


「なんか言ったか?」


「____な、何も言ってない......」


 なんか、小さな声でつぶやいていたけれど全然聞こえなかった。


 まあ、多分、俺の悪口だろ......


「あ、俺、ここだから、また明日!」


「____また明日......」


 あ、手を振ったら返してくれるんだ。


 そういえば、彼女の家はどこにあるんだろ......


 ここは、結構小さめな住宅街だから近所なのかな......


「____バタン!」


「はっ.......?」


 今、朝霧......


 え、えっと、今、隣の家に入らなかったか!?


 う、嘘だろ.......!?


 もしかして、近所どころじゃなくて、お隣さんってこと!?


 えっ、だとしたら、なんで今まで気が付かなかったんだ!?本当に......


 そして、俺は一旦家に入って、考え込んだ。



~~~~~~~~~~



 純也の部屋......


「......498、499、500!ふう、腹筋目標達成......」


「はあ......」


 だめだ、さっきから全然力が入らない......


 もし、本当にお隣さんが朝霧だとすれば......


 これ、ラブコメ的展開じゃん!?


「だめだ、そんなことを考えたら......」


 朝霧は、一人の【復讐】する相手だぞ!


 いくら、とてつもない美少女だといてもだ、だめだろ......


「「ああ、もうなんなんだよ!」」


 俺は、自分の部屋で叫びまくった。


「ちょっと、黒瀬、うるさい!」


 うっ......そうだった、今日妹、帰ってくる日だった......



~~~~~~~~~~~



 梨乃の部屋......


「うぅ、やばい、やばい!」


 あの人、私の唯一好きな人、黒瀬君に話しかけられちゃった! 


「どうしよう、変な人とか思われてないよね......」


 私は、もともと人と話すのが苦手。


 いわゆる、【人見知り】というもの。


 そのせいで、私は中学生の時、友達が一人もいなかった。


 それどころか、話しかけてくれる人もほとんどいなかった。


 みんな、私のことが嫌いなのかなと思ってしまうほどに......


 でも、黒瀬君だけは違った。


 いっつも、私に話しかけてくれたのだ......


 しかも、私が消しゴムをなくした時は黒瀬君が自分のを貸してくれた。


 ちなみに、その消しゴムは今も大事に保管している......


 中学卒業式では、告白しようとも思ったけど勇気がなくて全然言えなかった。

 

 本当に、あの時は情けなかったなぁ......


「うぅ、かっこよすぎる!」


 しかも、あの姿......


 丸かった時も可愛かったけど、今はスタイル抜群でかっこよすぎる。


 しかも、頭は良いし、強いし......


「もう、完璧すぎるじゃん......」



 そうだ、明日、一緒に学校に行こうかな......


 よし、じゃあ今日は早く寝よ!




 


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