第2話 イケメンはナンパの現場を目撃する




「どうしたの、イケメン君?」


「えっ......」


 気が付いたら、俺は教室にいた。


 理由はよくわからないが、目の前にはあの唯がいる。



「まさか、イケメンになっただけで自分は変われたとか思ってないよね?」


「なっ......」


 

 俺は、まさにそう思っていた......


____だって、印象変わるじゃん、モテまくるじゃん......



「だとしたら、本当に気持ち悪いですね、子豚君」


「___イケメン、嫌い......」


「はっ......?」


 すると、今度は教室に女子二人が入ってきた。


 茶色髪のハーフアップ。

 大きい二重の瞼。

 天使のような声。

 そして、清楚な姿。


 椎川楓音......


 

 そして、その隣は......


 しなやかな銀髪。

 黒曜石のように綺麗な瞳。

 かわいらしい小顔。

 綺麗にまとまった長い髪。


 朝霧梨乃のだ......



 この三人は、この学校でもトップクラスに入る美少女たちだ。



「あのさー、きもいよ」

「ここから近づかないでください、豚」

「___こいつ、きもい......」



 くそ......何なんだこいつらは!?


 俺は、お前らに【復讐】するためにこんな努力したんだぞ!?


 なのになんで.......



「なんなんだよ、おま、って、あれ......」


 目が覚めると俺はベッドに寝ていた。

 辺りを見渡す......



「じ、自分の部屋......」


 じゃあ、さっきのって、夢!?





~~~~~~~~~~



「はーい、ここは絶対に今度の定期テストで出るから抑えといてねー」


「りょうかーい、せんせい!」


「よし、じゃあちょっと早いけど今日の授業は終わりよ!」




 七時限目.....あ、あれ?もう授業終わった?


 やべ、また寝てた......


 はあ、今日見た夢のせいで、まともに寝れてないんだよ......



「ねえねえ、黒瀬君?なんでそんなに痩せたの?」


「え、えっと、別に毎日筋トレし続けただけだよ......」



 うっ......教室にいたら、また質問攻めにされるな......


 一回、廊下に出るか。 



「ふぅ、なんか新鮮だな」


 

 イケメンになって二回目の学校だが、やはり全然違う。


 なぜか、廊下で騒いでいる女子たちはいつもこちらを見てくる。


 

「はあ、本当にこういうのって慣れないな......」


______ドォン......



「うおっ......」


 すると、後ろから誰かにたたかれた。

 しかも、結構痛い......


「よっ、純也!」


「な、なんだ、蓮れんかよ」


「おいおい純也ー、なんでそんなに暗いんだよ!」


「べ、別に何でもない」


 彼(宮一蓮)は、俺の唯一昔からいる親友だ。


 こいつだけは、俺がデブの時でも毎回話しかけてきてくれた。


 しかし、彼はそこそこ学校では有名だ。


 金色の髪は整ってるし、普通にイケメンだし、運動神経もいい......


 しかし、頭だけは馬鹿だ。


 だから、いっつも定期テストでは赤点を取りまくり居残りになっている。


「というより、どうやったらあんな脂肪がここまでなくなるんだ!」


 彼は、そういうと俺の腹を触りまわった。


 そして、服をめくり俺の腹筋を撫でまわした。



「お、おい勝手に人の服をめくるな!」


「ちっ、つれないやつだなぁ、相変わらず」


「俺がつれないんじゃなくて、お前がおかしいだけだよ」


 はあ、いつしかこいつは痴漢魔とかになりそうで怖い......


「あ、ヤベ、もうこんな時間じゃん!?俺、部活だからまた明日な!」


「お、おう、また明日」



 そして、彼は手を振りながら足早に廊下を駆け巡った。


「ねえ、見て見て」


「うお、すご、イケメン同士の話し合いじゃん」


「二人のどっちが好み?」


「内は、あっちの黒髪かな~」


 うっ......

 さっきの会話を聞いていたのか、またもや周りの女子たちが騒ぎ始めた。



「はあ、やっぱり、まだ慣れないな、この学校生活」


 そんなことを思いつつ、俺は校舎を去った。



~~~~~~~~~


「ねえ、お兄さんたちと一緒に来てよ」

「____やめて、気持ち悪い......」


「塩対応も可愛いな~」



「あれって、朝霧さんだよな」




 それは、下校中のことだった。


 いつも、帰り道に通っている公園の近くで数人の男と女子が話し合っているところを目撃した。


 この銀髪、黒曜石のような瞳、この性格、間違いない、朝霧さんだ。


「これって、もしかしてナンパか?」


 見ればわかる通り、これは明らかにナンパの現場だ。


 そして、男たちはなんか結構チャラそうな服を着ている。


 やっぱり、ナンパをする人たちってこういうやばそうな人たちが行うんだな......


「これ、止めたほうが良いのかな......」


 普通だったら、絶対に俺は止めに入っていた。


 しかし、少しだけ『止めに行くな』という言葉が頭によぎった。


 なにより、朝霧は俺をいじめていた女子たちの一人だ。


 これはこれで、俺の気持ちが少しわかるんじゃないかな......



「___ちょっ、本当にやめてください!」


「もう、そういうのいいからさー」


 朝霧の手を男たちは無理やりつかんできた。


 うっ......本当に止めなくていいのかな.......


 今、行かなければきっと朝霧はきっと......


 でも、これはきっと俺の【復讐】とは言わない。


 俺の努力が無駄になってしまう......


「おい、お前ら、無理やりでも連れていけ」


「___や、やだ、お願い、誰か助けて......」


 ああ、もう。


 これを見捨てるわけにはさすがにいかないだろ。


 よし、いくか......


「よし、じゃあコイツの口をふさ___って、誰お前?」


「あのー、さすがにこれはやってはいけないことですよ」


「ああ?何言ってんだよ、てめぇ」


 そして、俺はふと朝霧のほうを向いた。


 「今、助けるよ朝霧さん」



 「___えっ......黒瀬君?」



___彼女の瞳には、光り輝く希望、正しく【俺の姿】が見えたのであった。







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