ep.15 純愛に溺れし死線、帰りは無い浮世の台にて


『星は見上げるものだと、忘れないで欲しい。

 が。

 でもだからと言って羽化を待つ必要はない』


月光藍げっこうあいの憂いを帯びる雫を舐め、吸い寄せて。深い闇の中に、輝く貴女を見つけた。

例えこの巡り合わせが、星の煌めきに雲をかける行為だとしても。

何千光年も先の光に手を伸ばし、依然と、そのともしびを掴もうとする無粋者がいる。



「ん、ちゅ、ん""ッ、ははっ、はぁ…可愛すぎる……♡」


生温かな獣の吐息がアソコを掠めるたび、まるで陸に打ち上げられた魚のように腰がしなる。

未だ現実が理解できていないような音を上げる番に、男はくつくつ喉を鳴らした。


「口先ばかりやだやだってしても、でもそう言いながら、俺の舌にこんなに『甘えておしあてて』…指まで」


今にも、引き千切られそう……。

舐めても舐めても、まるで泣いている様に、とろとろ蜜を垂れ流すソコに、自身を入れるのだと想像しただけで、全身に甘い痺れが走った。


「こんな、締め付けて…」

「っひ♡ ひ、ぁっ♡♡ そこ、ばっか、だめっ……!!」


これは絶対、男殺しの名器。


自ずと、そんな下世話なことを考えながら、明るい分ハッキリ見える嫁の媚態に、旦那の■■■■■はもうバキバキである。

昨日、昨晩は主に後ろから抱え込んで『お世話』していたので、捲れ上げたスカートから覗く、薄く白い腹が跳ねるのを目の当たりにすると、今にも我を忘れ、この情念のまま捻じ込みたくて仕方がない。


……このほっそりとした腰を掴み、それこそ盛ったイヌのように、待ち望んだ『口』を前にした男の"本気の腰ふり"というやつを教えワカラセてやりたい……と、レオくんは思った。


「ほら、また逃げ腰になる。もっとこっち来て。俺の舌、指だけで…こうも……」


ハハっと笑う声は酷く色っぽいのに、その顔は少年然として、ひどくミスマッチなのが。


「かわいい」


———これ以上、どれだけ『可愛く』なれば、気が済むの?


寝台に上げられ、アレから、どれ程の時が経ったのか。

今までは"文体でしか知らなかった"感覚に、もはや

霞みかかる思考、そんなオフィーリア、嫁の息の根を……。


「ッ、」

「ふふ、今ね、君の中すっごいうねったの、分かる?」


コイツは何だと思ってるんだ。


……反射的にそう文句の一つでも、投げつけてやりたかった。

が現実、自分の咽喉から出たのは、男を更に喜ばせ、人によっては女ですらひとたまりもない。"性ある人間いきものそのもの"を酩酊させるような色っぺぇ艶声。

「可愛いって言われて、甘イキしたんだね、ほんと可愛い……」とうっとりした眼差しで見下ろしてくる雄に、彼女ははくはく、口で呼吸をする。


然し、その思いは兎も角、傍から見れば、まるで餌を強請る雛か金魚のようなその様に、旦那の頭は「これはキッスの催促だな」と判断し。


「ふっ、ん♡ そんな可愛いことされると、俺のサイズにはまだ少し狭い、かな? と、んっ、言うのに…」


我慢できなくなる……と。


番の中に埋め込んだ左手の中指と薬指で ちゅぷ…♡ じゅぷ……っ♡ 緩慢な出し入れピストンを繰り返しながら、親指で■■を優しく捏ね回し、愛でる。

急性で、如何にも性的な動きだのに……それでも「初めて」である、こちらを気付かう素振りを見せるものだから、実に憎い上手い演出だ。オフィーリアは思った。


「ぁ、んんんっ、そこ、だからそこ…もうやぁ……♡」


今生であろうと、前世だろうと、いわゆる『そういう店』。そういう性癖の人でもない限り、誰だって独り善がりな行為をされるのは嫌だろう。それが年頃の娘、女なら猶の事。

度を越した押し付けはただの暴力だし、そんなプレイで心置きなく楽しめるのは、結局「創作物」の中だけである。


……ただ、いくら最新の研究上、人間の脳が『恐怖』を快楽だと思い込む質を持つとはいえ……。


「りぇ、れおぉ……♡」

「なぁに」


———もしやこれが噂に聞く美女と野獣を現代的な視点で見た時のアレ、「ストックホルム症候群」というやつだろうか。


今にもフルショートしそうな、意識朦朧とした頭でそんな馬鹿みたいなことを考えながら、ぐったりとした手で、又もや自分の■に綺麗な顔を埋めようとしていた相手の頭を押し、舌ったらずな声で名を呼ぶ。


するとふんわり笑い、すぐさまやめて、視線を合わせてきた雄に、ぎゅってして欲しいと手を伸ばせば、目を見開くような一拍のち、真綿で包むかのように抱き込まれ、『体面座位』となった。


……言わば、相手に捌かれるのを待つ他ない正常位マグロから、多少自分の意思を持てる赤子の形になるような。

そんな謎の安心感に、オフィーリアが(体臭すらイケてるメンズのそれである)レオくんの肩に頬を擦り付ける。


「~~~~~~~~~~~ッ!!」


と……声にならない悲鳴が、全てを物語る。

努めて大人の男ぶった態度を見せるも、ただでさえ荒かった旦那の吐息が、ことさら熱っぽいものとなったのは、言うまでもない。


自分のナケナシの理性、気遣いを無下にしてるとしか思えない嫁の仕打ちに、レオくんは上も下もイライラして、額に筋を浮かべると。

このアマどうしてやろうかしらと思いながらも、努めて優しい声を出す。


「……いつもはあんなに大人びてるクセに、末の子属性というやつなのか。時折り姉なのか妹なのか分からなくなる、君ってそんなとこあるよね」


こんな支配者Dom、俺初めて。

一昨日からほんと、なんなの、もう……。


たかがこの程度・・・・・・・でこうも"ふにゃふにゃ"になっちゃって、先が思いやられる」


何時もの『根性!』はどこ行ったんだ。


「いくら慣らしてるとは言え、これではこの後、『俺のコレ』挿れちゃうと……どうなっちゃうんだろうね?」


今まで君が俺の■■■■■を気持ちよくしてくれたように、君の勃起■■も、中も、もっとぐちょぐちょのぐずぐずになるまで、よしよし『お世話』してあげたいのに。

そんな時に、"こんなコト"されては……。


「俺のこと、年上の男を舐めてる?」

「? ———————ッ♡♡♡♡!?」


『今』以上にもっと愛して、全力でご奉仕したくなる♡


「だろ……♡♡」

「!?」

「もっと甘えて。もっと、俺だけ…甘えて欲しい……」


甘いきもちいのいっぱい教えて、可愛がってあげるね。


無意識なのか態となのか、それとも偶然当たりドコが悪かったよかったのか、もはやどうでもいい。

自分の肩を少しはだけさせ、小さな口で甘噛みはむはむしながら、男の怒張に下の口を擦り付ける嫁に、プツリ、ふつり。

本日の勝利を確信した旦那の中で、とうとう最期のナニカまでもが事切れる……。


「……ン""ッ、じゅっ、ン♡」

「んぁッ!?」


片腕で抱きかかえ、この子は頭を撫でられるのが好きだからと、(いつもより確実に硬い、でもやはり)ふわふわ、さらさらしている髪をすくっていた手で後頭部を抑え、唇に噛みつく。

なので、そう『口封じキス』したまま押し倒せば、学園から与えられた休憩室、据えられた寝具まくらからボフンと、今の自分の理性を弁明するかのよう、中の羽毛が爆ぜる音がした。


「ごめん、ごめんね。君に痛い思いさせたくないから、本当はもっと……でも、もうむり、我慢できない」

「!」


そう言いながら、カチカチ爪でベルトの金具を引っ掻き、ようやく外れたそこからボロン、嘗てないほど精をため込んだ雄、男の象徴が飛び出す。

……ただそれでも、ハジメマシテ見るわけでもないのに、何時もと比べ雄雄しく観えるソレ。ぽんやりしていたオフィーリアの顔が一気に引き攣り、青ざめた。


例えこの世界では「そういう仕様」とされるも、元日産、亜細亜系からすれば、漫画・同人誌でしかお目に掛かれない。

昨晩に引き続き? とにかくマァ、今日も今も見るから物理法則をブチ破ろうとしている…そのグロテスクなデカさときたら……。


「ほら、見てよ、既にこんなに我慢汁が。君の声聞いて、舐めて、見ただけで……♡」

「ふぇ……っ」


漫画などの紙媒体だけでなく、実写AVの心得もある、オフィーリアには分かる。


男の人が、性的に興奮してイキそうになってくると、ぱおんの先から無色透明な分泌液が出て来る。正式な名称「カウパー腺液」、尿道球腺(カウパー腺)から出ている弱アルカリ性、我慢汁というのは元来、無色透明であるはずだ。


……だのに。


「君を前にした時、いつもそうだったけど、俺の■■■■■正直でしょ」


もう嫁を孕ませるつもりしかない、ぱおんから流れ出る液体が、白い糸を引いて、だらだら垂れ流している。

まるで大洪水の様だ。


(潮は潮? でもそっちが先に吹いたのかい……!)


然もズボンの中で、触らずに……。


思わず見ちまったそのご立派な様子に、慄き8割。残り2割、実はイケメンが口でコンドームを破く絵にグッとくる女だった、オフィーリアはコンドームの(概念すら)ないこの世界に二重の絶望を感じた。


いくら帝王切開しなければ、小ぶりスイカが通れる? とは言え、15の膣口では先っちょですら危うそうなほど、成長した目前のぱおんから目が離せないし。

そしてこれも同人誌等でよく見かける、男のデカさに「あらやだ、おっきい……♡」の眼を向ける女共の気持ちも、心底分からなくなった瞬間だった。


「今からできるだけ優しく、ゆっくり入れるから。■きたい時、■■■■する時は、ちゃんと可愛い声に出して、俺に教えて……ね?」

「…ッ!! ?! ~~~~~~~~~~~ッ!!」


声にならない悲鳴が、全てを物語る。

ただでさえ絶え絶えだった嫁の根が、ことさら震えたものとなったのは、言うまでもない。

百年の恋も冷める現象である。


「デッ、は、はぁっ……! だ、だめっ……!!」


なので、ストックホルムから目を覚ました嫁が「そんなのいらない」「絶対入らない」「私まだ死にたくない」とここまで来て首を横に振る。その余りもの剣幕に、旦那は首を傾げた。


知識あれど、これまでのオフィーリアが結局のところで男のアレコレの匙加減が分からないように。メスになれるも、結局生物学的な雌、女の子ではない、レオくんに乙女の事情は理解できるはずもなかったのだ。

……昨晩の風呂場でもそうだったが「いくら大は小を兼ねる。というも流石に……」となる嫁の感覚が、レオくんは分からぬのである。


———だから。


「じ、時期尚早……」


青い顔で自身の囲いから抜け、そう言いながらジリジリ後ろに下がろうとする番を引き戻す。その愛らしい抵抗に、旦那は笑顔になった。


然し、やはりこればかりは分からない。


いつの世であろうと、それこそどんな第二性であれ、デカイぱおんは強い雄の象徴。普通の雌なら悦びを覚えるこそすれ、そこまで嫌がる理由が理解できぬのだ。

男である自分の尻に指や細い棒エネマグラなるものを突っ込んだ時、まるで迷いがなかった様に見えた分、なお分からなくなる。


———ので、自分の下。

今も目分量で雄の怒張と自身の膣から腹までの長さを比べ、内心「これは腹ぼこ、子宮口ブチ破るどころか、きっと赤ちゃんの部屋を貫き、胃のあたりまで到達する(言い過ぎ)」と目の前の巨ぱおんから目が離せない、わなわな震える嫁に、旦那側は「別にいいけど、瞬きもせず、そんなにマジマジ見詰められたら、流石に照れるな」と思いながら……。


「だめ? あー、もー…ダメじゃないでしょ?? ———だって、」


さっきまであんなに気持ちよさそうなかわいい声上げて、これが欲しかったんだろう?


「甘えた顔で誘惑し、"これ"に下のお口擦り付けてきたくせに……」


ぼそっと囁くような声で、息を乱し。自分のを軽く扱きながら慰めながら、根も葉も、身も覚えもない言いがかり、いちゃもんを付けて来るレオ・クリシス。

もしこの男が自分の旦那枠ではなく。


(何より、このキャラデザとCVボイスじゃなかったら……)


とうに殴って、あることないこと民衆の面前、身も世もなく泣き腫らして、社会的に抹殺していたに違いない……。


(デスワ)


オフィーリアの中で警報が鳴った。


「君のここも、こんなに俺のこと求めてるのに、強情だなぁ…」


男の声に混じって、"頭の中"で ひゅう、ひゅう 音がする。

耳からですらない、然し「ソレ」が自分の胸が上下するたびに聞こえる。風の音でもない、自分の口から吐き出されている音なのだと『知ったキがついた』……その時。


賢者までとはいかずとも、思わず、少し冷静になる。

この瞬間———



「……雉も鳴かずば撃たれまいに」

「!? なっ、」


昔ヤってた。

そして、好きだったせいなのか、ある程度の限度キャパシティーを超えると、古き良き大和の武士や"その手の人間"みたいな口調に変わって仕舞う、嫁。


暑くて……とても、少々「異常」と感じるほど熱く、何より強制される感じが、夢見心地だった頭や体を、ひどく不愉快なものにする。


目を閉じた一瞬、何故か脳裏に過った……たぶんそれは、嘗ての留学先と思しき場所。

記憶の底で、今の私と同じ金色の瞳・・・・・・・・・・をした黒猫が、バ先の厨房裏でネズミを捕らえた———走馬灯、そんな映像だ。


土地柄もあるし、お互い伊達に鍛えていない。"今の私"の上から、飛び退こうとした男の首に腕を回し、しがみ付いた途端、一回転させる。

警告音の様な耳鳴りが酷く、頭が殴られた気分、世界までもがグルグル回り初めた。のを感じ、オフィーリアは少し吐きそうになった。


「ごうじょう? 強情ですか、"私"は」


二日酔いにも似た、不快感オト

そんな、今の自分が何を吐いてるかすら、分別が付かない、脳裏に浮かんでは沈む昔の断片おもいで

……『私』は未だ、まるで昨日のように……。


「いや」


もう戻れない、過ぎたものにしがみ付いても、虚しいだけだしょうがないから。

綺麗な思い出は、美しい昔話のままで。


……ただ、それでも思うのは。


「 例え『変わり果てても描き続け、手掛けなければ』 」


どうやらここ最近"甘やかし過ぎた"みたい。


と、くふくふ嗤う。

突如反転した視界、逆転した立場に目を白黒させるも、一瞬にして目を潤ませる捕食者の腹に跨り、彼女は覆い被さった。


壁ではないので、ベッド・ドンである。


さらっとこぼれた長い黒髪が、まるで内と外を隔てる、夜の帳を降ろしたようだ。


「———いい加減にして。強情なのは私ではなく、貴方の方だし。場や時、時期と言ったモノは弁えるものよ」


私は。


ワタシは?


「ね、アナタも、そう思いますでしょう? 悪い子ダーリン


一体……(੭ ᐕ))??


その人離れした美しさに見惚れるも、どこか怯えた目をする獲物おとこのこに、チェシャ猫のような口ぶりで、星夜の天女が微笑む。


「ここまでキて、しんでしまうとは……」


敢えて言わぬが、情けない。

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