ep.14 地獄の沙汰も色次第「———とは言え、」だ。


『春になってから降る忘れ雪であり、不条理で滑稽な例えようもない病。

 一度患えば手の施しようがなく、時には過去へ、時には未来へとふける』


運が神、生が人ならば。

全てを無に帰すか、それとも吉日チャンスだと捉え、生まれ変わるのか。

いつの世も、結局のところで彼方アナタ次第。



「…怒ってる? けどね」


今回ばかりは君の方がいただけない。君も悪いんだよ、オフィーリア。

俺はもう自分を止められる気がしないし。


「———するつもり、ないから」


……と。


「これで何度目の浮気? 今日こそ、"最後"までするから」

「れ、れおくん…」

「んっ」


とは言え。「ソレ」が世界の秩序ルールを飲み込んだとき、何もかもが狂い、変貌し、怪奇なまで染まり始めては。

愛憎を食べ、汚濁を呑み、腐敗したうれすぎた林檎すら迷う素振りまえぶりなく齧りつく。


患者たちは、自らの病に決して気づかない。


例え、その後に残される道は「案の定」、その手に握っているのが赤黒い片道切符だとしても……。


「ああ、俺の妖精、我が愛、オフィーリア。今から君を傷つけるけど、それでも拒絶するなら…いっそのこと」


他でもない君の手で。


「俺の こ こ 一思いに刺して、殺してくれ」

「ッ!? レオくん。いや、レオさん……?」


ロード中です。


「君の手で死ねるなら、本望だ」

「世のヤン族のヤツ、すぐそう言う。なんでそんな物騒なこと言うの」

「君が浮気したから」


それも俺の目の前で。


「あの男、あの王子様……ナニ?」

「そこにつきましては、私も聞きたいです」


ナニもクソも、いま思い出すから、とりあえず一寸待っててね。

現在、ロード中です……。


まるで反省していない様子で、「うーん」と唸る嫁に、旦那の眼がどんどんじっとりしていく。


「……………………」


その下。

この様にうだうだしてる内、気付けば部屋のすみっこまでお追いやられた。

"我が愛"というフレーズに一瞬ドキッとするも、オフィーリアは「今すぐネット回線落ちないかな」と思いながら、考える"素振り"をした。


心あたりない冤罪に始めは適当に流そうとしたけれど、再起動でもしなければ、目の前のヤツは決して止まらぬ。

それが目に見えているからだ。


……いくら"そういう属性"持ちの人種とは言え、未来の旦那。

良識あるおねえちゃんとして、(自分の三つ上だから、言わば18歳ギリの相手)、大学生ですらない。

そんな子育ての何たるかも分からない高校生が一時の激情に流され、性犯罪に爆走させる訳にはいかないのである。


なので。


「例えね、君にその気がなくとも、その目とバチッと合うだけで、はそういう気になるんだよ……」


だというのに、"迷子になる度"ナニかしら引っ掛けてきやがって…その度、俺がどんな思いで……!


……そう責め立てて来る旦那に、焦りが募る。

嫁はとりあえず謝って、お礼を言う事にした。


「え、あっ、そこに関しましては、ほんといつもお世話に———」


然しこの程度で長年、何より前世から培ってきた面の厚さ、ポーカーフェイスは崩れない。

合算年齢からしてオバ……一寸若めのお姉チャン、しかも元関西出身なのもあって名誉プライドより実利値切り、オフィーリアは実にしたたかな子だった。


突如湧いて出た様な仮想(恋)敵国相手にぷりぷりしてる旦那はんに、時期尚早と思いながら、未だログインまで時間がかかりそう、ロード中です。


「俺というものがありながら、父さんの次は王子!? 少しでも目を離すと迷子になる、のんびり屋さんなのは可愛いイイけどあっちこっち、君がいつもフラフラしてるから……!!」

「同意なしの孕ませが許されるのは、創作れいぷ物だけ。理性の内閣総辞職するにはまだ早い、とりあえず話を」


話せば分かる、相容れずとも、私達はきっと分かりあえる。

お茶の間を騒がせるには丁度な時間帯でも、流石に今日は一寸……。


(前世の私。有名どこ以外、昼ドラって学校とかと被るから、そこまで履修してないんだよな……)


リタイアボタンがない以上、どうやって回避しようかな。


そう思わずへにゃっと下がった嫁の柳眉と「困ったちゃん」を見る上目遣いに、レオくんは自身の語彙力では到底言い表せない、範疇を越えた気持ちを抱いた。


「……ねぇ、さっきから可愛いまゆで見上げてくるけど、それなのに、何で俺らの話は終始『噛み合ってるようで、噛み合ってない』としか思えないの?」


ねぇ、なんで……(੭ ᐕ))??


そんな旦那に、嘗ての私も嗜んでいた『ヤンデレ妹に愛されすぎて~』シリーズの背景を見出す、『転生先の旦那様(攻略済笑)が~』ロードされている。

そのハイライトの消えたに二窓、脳海で攻略法を検索しつつ、嫁側が「なんでまだ選択肢が出て来ねぇんだろうな、バグかしら」と思っていると……。


俺だから。


「俺だけ……君の立場上俺だけとは言はない、でも俺だよね? 俺が君を思うほどまでいかずとも、婚約してくれた。俺が君の最愛の番であり、男だ」


俺は君しかいないし、いらないのに。


「……なのに、君は?」


ようやくの思いで外を固め、ここまであり付けた。

だのに、君は。


っ、いい加減俺を、なぁッ!」


……口ではそう言いうも、然し睡眠薬でも盛って「ワカラセ」て来ないあたり、未だ人としての最低限を守ってる男。

ただそれでも理解は理解で現実はリアルなので、星元アストライヤの子であろうと関係ない。オフィーリアは普通に「え、怖…」と思った。


だが、それでも……。


(顔も声も良! な分、オレオレ詐欺であろうと、許して仕舞いそうになってる自分がいる……)


って、

今はそうじゃない。


「レオくんカルシュウム、ほんとどうし、ぅんん""!! ふ、はぁ!?」

「もう何も聞きたくない! んっ、はぁ、黙って……!」


黙って俺に抱かれてあいされて、俺の子を孕んでくれ。


生まれながら権力あり、財産あり、高身長、高収入。

しかもこんな顔の良い男に、これまた掠れる様なイイ声で思いを告げられているのに、思わず「自律感覚絶頂反応ASMRは声優さんだから耐えられる、リアルはムリ。ファ―――www」と大草原になる私の頭を、今すぐだれか殴ってくれ。


(そして、今すぐこの場で気絶したい……)


流石のレオくんでも気を失った相手に手を出さないだろう。

たぶん……………。


体をわなわな震わせ、それでも公女様としての体面を守ろうとする、オフィーリアは若干震えている声を出した。


「や、理不尽すっ、れお、やめ……ッ!!」

「父さんもいる、夜会なんていつでも行けるんだから…」


それよりせっかく・・・・二人きりになれたんだし。今は、今しかできないコト。


「しようよ」

「ひゃぁ、」


そう震えながら———きっと何かしらの突破口、イベ回避、攻略法があるハズだ!


でも、いくら何でも、一人で盛り上がってる場合じゃなかったと、オフィーリアは少し反省する。

言わば全門にヤンデレ、後門に壁。Subなのに痺れを切らしたのか、とうとう思い任せ、Domみたいな言動を取り出した野郎に、壁ドンされただけでなく、ブチュ~~~~ッと口を塞がれた、彼女は。


(どうしたもんか)


と途方に暮れる。

信じていた(?)相手に明智られ、動脈に毒を打ち込まれてるみたいだった。


お互い、どちらかと言えば北欧かロシアみたいな領地産なのに、向こうの言動が完全にケルト。

ただでさえ魔力ファンタジー的諸要素により上に行けば行くほど女旱りな世界だのに、避妊の概念どころかコンドームすらない世の中は、少し前まで彼氏いない歴=合算年齢な女には早い……というか重いです。


(それはもう色々と、昔から)


これだから私は実家に逆らえない……。

見捨てられた途端、オシマイになる運命なのだろうな。


もし今の両親、家門に産まれて来なければ、とうに喰われてるか、殺られているか、異端児として火炙りにされていたかもしれない。

そう思う度、オフィーリアの中で「家を守る=可愛い我が身を守る」構図が成り立って、今生のお家様への忠誠心が高まっていく。

前世に引きつづき、今生の家族も無論家門うんぬん抜きで大好きだが、これはこれ、それはそれなのだ。


まぁ、それでも…………と思う時もあるけれど。

結局いつの世も実家が太いことに越したことはないので……。


「さっきの、あの王子様アイツとの「また」って一体何時の、何所での、何の話?」


中身が大人、見た目は15歳だけにベルねぇ様。そして不二子ちゃんに憧れて、はや……もう何年目だろう?

男は29からが本番と思うも、25超えたあたりから齢を思い出せなくなった彼女は、いくら君が"秘密主義者"でも、それくらい教えてくれるよね。と凄んでくる旦那を、( ᐛ )みたいな顔で見上げた。


「紅顔禍水」という言葉があるように、(遺伝的にどう足搔いても)美人に産まれたからにはある程度覚悟はしていたが。

それでも、なぜ私がこんな目に、と思ってしまう。

そんな(恐らく諸悪の根源である)自分を棚に上げ、その心はあの地雷を投げてきた王子への恨み言で一杯である。


……いくら身に覚えがなくも、聞かれ見られてしまったが運の尽きだ。

"この手の人間"は一度暴走を始めると、こちらの都合どころか、話すら聞いてくれやしない。


「俺はこんなにも愛してる、責任も取れるのに。一日に何回浮気するの? 一作日から、昨晩の風呂場でもあれだけ馴らした・・・・・・・・ところで、君は一向に受け入れてくれない」

「ッ!? んぁ…っ」


性関連ではガバガバ思考なくせに、旦那の浮気へのジャッジが厳し過ぎる件について。


今まで誠実に生き、これでも前世からすれば幼い未成年枠時代から身を粉にし、メンタルを粉末にしながらも、日々堅実に働いてきた(つもり)なのだが……。

もはや自分から見ても存在自体が魔法ファンタスティック、そんな圧倒的勝ち組遺伝子の業が、余りにも深い。


(今生の私は美少女)


なので、作品で許されても、同意のない美少女への孕ませ行為は、突然の死に続く地雷です。

正しく「問答無用」と化してる相手に、オフィーリアは頭を捻る。

だって、肝なところで会話が成り立たない野郎に、何を言っても無駄だ。

だから、どうしましょう……と困っていた。


オメェの言い分なぞ聞いてやるもんか。


……先ほどから、そんな強い意思、圧を上から浴びている。

同年代から見て自分だって低い方ではないのに、性別の差というのは、時に神より残酷なのだ。


瞬き一つすらしない眼差しにジッと見下ろされ……服越しであろうと、如何にも男の子らしい手で軽く腹を撫でられた、娘の肩が少し跳ねた。


「俺の可愛い番、君は、未来のクリシス夫人になるんだ」


だから……もうイイよね?


そう、うっそり目を細める男に背筋がゾワゾワして、仕方がない。

そんなオフィーリアに、レオくんはふんわり微笑んだ。


「この後、いや今から、昨晩からお預け喰らってる俺のコレ・・で突いて突いて掻き回して、また突きまくって、『キス』しながら外だけでなく、子宮ナカの隅々まで俺のマーキングをぶっかけてあげる」


俺らは【番】だからね、きっと気持ちよすぎて流石の公女様キミでも…"可笑しく"なれるよ。

……台詞の割に表情と声が優しいのが、なおこちらの恐怖を煽って来る……。


「……俺のことだけしか考えてない、見ていない、この瞬間が好き。いくら人気があっても、ふたりっきりになれば必然と俺のことしか目に入らないでしょ?」


だから、あの場から居なくなれる理由きっかけを作ってくれた、その点だけ、あの王子様オトコに感謝してる。

……その様な恐怖と狂気の最中、「やはり態とか……」と思わずジト目。

然し、それでもこちらの罪の方が重いんだからと、この度において無根(?)であるにも関わらず、嫁は無情に有罪判定を下された。


「……はぁっ……可愛い……好き……ン♡」

「? ぁっ……、んぅっ」

「ん、ふふ、そんなに喉を甘く鳴らしちゃって……俺との『キス』、好き?」

「ううぅ、比べる相手いないから、よく分からないけれど、頭ぽわぽわする…」

「比べ…?」


と一瞬「嘘でしょ」みたいな顔をするも。

が、すぐさま「ああ、"そういうこと"」じゃあ俺とだけなんだ…嬉しい。

レオくんの中にあった怒りの天秤ボルテージが一気に色欲、情欲へと傾いた。


「じゃぁこんなお子様なかるいキスじゃなくて、もっと大人の濃厚なヤツしてあげようね……」

「ん""ン"ッ!!」


熱に浮かされた吐息の中で、彼は内心を吐露させる。


「んっ…はぁ……ほんと俺の恋人……。いや違うか…もう俺の奥方、お嫁さんだよね……可愛いなぁ…もう可愛すぎて、もうなってるけど、君の隅々まで気持ちよく、『お世話』してあげたいのに、俺の方が先にどうにかなっちゃいそう……っ」

「! ~~~~~~!! !」


子宮降ろして、俺を受け入れて。

今まで可愛い雌だった男が、今は完全に雄の顔をしていた。


「君との『キス』は好きだけど、今は一刻でも早く君の、オフィーリアのも甘やかしたい」

「、」


すき。

好き、大好き。

本当に、愛してるんだ。


「…んっ、ねぇ」

「はぁ、もっと、もっとだ。もっと君の『奥』まで入り込んで、もっと奥まで……」


ねぇ、見せて……?? と強請られる。


そんな今の状態で下手に嫌がると、もっと面倒なことになり兼ねない。

そして怪我させたくもないので、弱弱しい力で覆い被さって来る相手を押し返そうと縋るも。正しくこの世の春、当人はもうそれどころでは御座いませんの様だ。


「はぁあ♡ こんなんじゃ足りないっ……んっ」

「ン""ッ」


もっと身も心も開いて、もっと俺を受け入れて、いい加減れさせて。

今日こそ、


「このまま一つになろ? 一つになって俺のこと、『愛して』っ……」


じゃないとこんなにも綺麗で、愛らしい存在。

俺の唯一無二、番を……!!


(コイツ…ほんと人の話聞かねぇのぜ……)


でもイケメンは良い、多少性格がイカレていようと、それすらも加点される、各業界。

外面の良さだけで商談は上手くいくし、そのツラの良さに免じて、全て許せそうになる……。


軽く見積もって壁ドン。


多めに見積もって壁ドン+股割り込みされながら、オフィーリアは「この手の人間、その中でも特に『ヤンデレ』の方に、大いなる理解がある私じゃなきゃ、二重の意味で死んでたな」と思った。


……なので、あの頃夢見ては、夢の中だけにしておきたかったメロきゅんシュチュの一つ『君が誰のモノか、分からせてあげる。今ここで』を、こうしてどこか審査員みたいな気持ちで受け身になっていると。


「その俺を見て時折する、うっとりとした顔を見ると、堪らなくなる。じゃあ、このままベッドに上がろうか?」

「あ。これマジなヤツだ。え、あ、上がりません……」


てか、上がれません、こんな日に。


病みながらもポジティブ過ぎる旦那に、しかもこれから所用を控えてる手前、普通に考えて上がれませんが……??

適当ではない、元大人として至極真っ当な理由を、嫁が述べるも。


「うーん、そっか。それも確かに一理ある。普通に考えて…そうだろうけど……」

「?」


———なら、力ずくでも上がらせる・・・・・しかないよね。


……まるで取り合ってもらえない今日この頃。


(私は、悲しい……)


ぽろろろろん……と。

耳元で竪琴が鳴った途端、ただでさえ覚束なかった自身の足場が、更に失われる感覚に、オフィーリアは襲われた。


「…ほら『おいで』、俺のお姫様」

「? !? きゃあっ」


何時しかのギルマスにやられた時は、死ぬほどイラッとしたのに。

同じ性であろうと、第ニ性が違うとこうも違うのか。

これだから異世界は……!! となる。


いくら鍛えていようと、映画でもない限り、こんなスマート、流れる様な仕草で抱き上げワカラセられる男なんて、現実では存在しない。

……というのに、やはり異世界の野郎ともくれば。


(流石の合算オバサンでも、存在がそもそも異次元)


イケメンにそんなことされたら好きになっちゃうだろ……!!

明らかに顔をふえっと歪めた嫁に、旦那は美しくも、邪悪な目で、底意地の悪そうな笑みを浮かべた。


「この前の馬車でも、昨夜の君も可愛かったけど、今からもっと本気のぐずぐずにしてあげる」


Domの性が"支配"だとするなら。

もはや"本能"の一部であるSubの性技シタわざ を舐めんなよ。


「…それこそお互いの境界が分からなくなるまで、いっぱい『お世話』して、俺の愛を注いであげるから」


そう言いながら自身の腹を見るレオくんに、オフィーリアは戦慄迷宮に迷い込んだ気分になった。


「こ、こんな急に、それもこんな時…可笑しい……」


正直嫌ではない、でも歳。

そして、今は何より時の問題もある。


……ので、反射的にそう言えば。

然し、言ったは言ったで……。


「……うん、俺は"オカシイ"よ? 君に出会ってから更に可笑しくなっちゃったみたい……」


…ってのもあるけど。


「君が、君のDomとしての機能が一部鈍いのと同じように、昔から俺もSubとして……そして今では"人としても中々に可笑しいヤバイ"らしいよ?」

「流石開き直ってるヤンでるだけあって、強い! ここでのカミングアウトに作為を感じる…いや、それより待ってください。この流れは……!」


ヤメロ、やめてくれ、これ以上は何も言わないでくれ……!!

オフィーリアはフルフル首を振った。


だって、


(私は知ってる。というか、履修してる……)


聞かずとも、その手の台詞の続きを弾き出してネタバレして仕舞う自分の脳が憎い……。

けれども、ここまでされて怯えないのは流石だが、嘗てないほど震えだした、そんな嫁に、旦那は残酷だった。


「だから俺をここまで可笑しくした責任、取ってくれるよね」


オトナになれば皆背負いたくないが、我々の業界では、みんな大好き責任問題である。


ここ、進研ゼミでやったとこだ……!!

想像だけなら何憶回もしたシチュ、相手の神から与えられしビジュとイケボからして、真剣必殺ぐらいの破壊力なのに。


この歳30↑にもなって、まさかの私自身がその台詞を言われる日が来るなんて……」


オフィーリアは顔を覆った。


目の前の輝かんばかりのF異世界系SSRが眩し過ぎるのもあるし。仮にも女でありながら、それ以上にオタクの一柱(略してオタク柱)として感動を覚えている、自分が酷く汚れた存在に思えたからだ。


慰謝料は貴女で……なやつですね、分かりますとも。


(ありがとうございます)


いつの世・相手であろうと、タダほど怖いモノはない。課金できない代わりに、とりあえず心の中でお礼を述べておく。

だが、何度も言うが歳の差。我が身となれば解釈の違いです…なので…ある……。


「……なら、責任問題は追々話し合うとして。今はとにかく俺のこと中に受け入れて、死んでもずっと俺の傍にいてくれれば……少なくとも俺は、それだけで満足だよ」

「死は死でも、死に方にもよる。外聞的にも、この歳での腹上死は一寸……」


あと、私の認知してる辞書的な『それだけ』と、今目の前の男の口から飛び出た「それだけ♥」とのスケールと度合いが大分違う気がしゅる……。

そうやってことさら震えだした嫁に、旦那は。


「まぁ……だからと言ってここまで来て尚更、今更やめるつもりは毛頭ないんだけど……」

「尚更の今更の二重強調を出してまで、ないのか……」


お前に、少しの良識の呵責も。


(でも、マァ、ヤンデレって結局そう言う奴らの集まりジャンルだもんね、知ってた)


だからこれ以上何も、ナニも言うまいよ。


さり気ないジタバタ(最高で威力200に至る)をヤメテ、とうとう目をぎゅむっと瞑ったオフィーリアを見て「ようやく観念したかしら」と、旦那は幼い嫁の首筋を性的にれろっと舐め上げた。


……だって思うに、もしこの子がのなら、相打ち覚悟で挑まないとイケナイのだけれども。

こうもなされるがままになっている、と言うことは……。


と、レオくんは嬉しくなったのだ。

時折り敢えて(?)空気を読まなくなるも、体はちまいのにデカイ器と理解力(?)のある嫁を持つと、男は幸せな性活を送れる。

少なくともこの国は【人】の世、誰しの人生も、誰かの犠牲の上で成り立っているのである。


「のは、別に……」


今更な話だから、そこは良いんだけどね。


ただそれでも……これから自分の種をブチ込む腹を愛おし気に数回撫で、手を下へ伸ばし、舌は首筋から上へ、次は口にキスしようと顔を近づける相手に、オフィーリアの眼はカッと見開いた。


「でも、やはりここでも、それはそれで、これはこれ。です。しかも一度失ったら二度と戻らない、リアル『初めて』とも来れば」


いくら貴方SSR相手でも、未知なる領域ゾーン


思わずあら、まぁ……となった当時、僧侶でありながら天皇をダメにしたぱおん、初めて会い見えたときそう叫びそうになった、レオくんの息子。

元よりそういった仕様からして性に特化してる(と言われている)、こんな素人×ベテランな現場、絶対負けるのは私の方だから。


「わ、私…帰らせていただきます……!!」


分かり切った負け戦には絶対出ない主義のオフィーリアは、また往生際悪くいやいや……というか「ムリムリ、絶対無理です!」を始めた。

なのでこっちはとうに準備万端なのに今更、そんな昨晩の風呂場みたいなことを言い出したやつに。


「……念のため、俺の方でも【スクロール】の予備持って来てるから、別に帰ってからでも良いけど、それこそどの道同じ屋敷ばしょ、ここから昨日の寝室へ、となるだけだよ?」

「あ」


を外に連れ出すからには、いつかはそうなると思っていたが、思いのほか早い段階で出てきた敵に、「今日こそは」と決めた、レオくんの意思は固い。


……そして、先ほどから言うまでもなく、ズボンの中の怒張も痛いほど膨れ上がり、今にも爆発しそうだった。

ここ数日散々孕ませたい雌の甘い声を聞いたのに、処理できずにいたのだから、健全なほどにも健全な男として当然の生理現象である。


自分の言葉に「そうだった!!」と口をうっすら開けた嫁の口を塞ぎ、自身の唾液を流し込む。

そうすると、あちゃぁあとなってる当人は何の迷いなく ごくん と嚥下したものだから、旦那は物凄く興奮した。


同じ出身地だが、嫁からすればここは新天地なので、これぞと地の利を生かした攻め。


無論、首都にも公爵家のタウンハウス的なバカデカ屋敷はあるが、管理に必要な最低限の使用人しかいない上、この迷子は少しでも目を離すと消え(そして帰巣本能が強いので、またふらっと帰ってくるものの)……どうせならと、渋々の熟慮の末、レオくん家に預けられた口だ。


実家なわばりどころか領地にわを離れた今の彼女に、今すぐ思いつく逃げ込める先も、同棲相手の屋敷以外で雨風凌げる場所もない。

……なので、それを誰より分かってる、旦那は。


「だから結局、俺たちは今から愛し合うことになる。……と言うのに、まだいつもみたいに『逃げれる』とでも思ってる? あの厄介なメイドもいない訳だし、今日こそ、させないよ」


ネコみたいな性格なだけ猫かぶりが上手く、この嫁の口は少々……どころか、ちょっと異常なほど回る。

然もこういった「いざ」という時に限って、正論なことを述べて来る事が多いので、ようやくここまで持ち込んだからには、ヤツの口頭を聞いてはならない。


オフィーリアがオフィーリアで旦那をそういう人種と認識しているなら、レオくんもレオくんで嫁をそんな存在だと認知していた。


だからこそ。


「ほら、お口開けて。『キス』しながら、昨日みたいに、下の方も気持ちよくしてあげる」

「んぁ、はぁ…だから、だ、めだってぇ……」


雌だろうと雄だろうと、関係ない。

こいう色事を致す時は、手段なんて択ばず、先手必勝なのである。


———そこに見事に付け込まれた女の末路。


こうもキラキラしいイケメンも美女もわんさかいる世界だのに、微塵の慈悲もない世の中過ぎて、下腹部から登って来る甘い痺れに、オフィーリアの鼻から「ん」と甘えた息が抜け出る。

俗に言う「 とりま、マジ詰んだ\(^q^)/ 」のお手上げ状態に、それでも合算年齢の良識を胸に、彼女はナケナシの力で男の胸を押しのけようとした。


……のだけれども。

それが逆に男の性を煽ったようだ。


「ダメ? ダメじゃないでしょ。何だかんだ言いながらも、子猫みたいな甘えた声……触って欲しそうに腰を揺らして、こんなに震えている・・・・・のに……??」


———が、とは言え。言葉で穏便に流せないのなら、『この手の人間ヤンデレ』に物理は効くのか。

それが何よりもの問題だ。と彼女は思っている。


(だってアタイは、知ってる)


こう言う属性相手の脱出ゲーは、万が一にも、一度でも下手を打てば、そこでゲームオーバーという事を。

昔やってたおどろおどろしい画面が脳裏に過る。

強くてニューゲームできないのに、一生ベッドから降りられない体にされかねないから……。


「ああ、ほら、下着の上から指を少し掠めただけなのに、ビクビクって、こうも反応してる」

「カ、ひぅっ……や、言わないで…それ、震えは震えでも、絶対そっちのじゃッ、」

「……でも何れ『そうなる』のだから、どっちでも構わないよ。ここ数日で随分と慣らした場所だけど、未だ明るいとこで見たことないね。オフィーリアの初めて……中はどうなってるのかなぁ?」


お互い服を脱ぐ、境界が交わる前に。


「———まずはスカート上げて、確認しようか…」


もしそうなった時、果たしてどうなるか。

 

……正直雄雌、どちらにも成れる、このレベルの野郎ともなれば、やぶさかではない。元来の彼女はインドア派だ。

今は嘗て本やらソシャゲーやらで見ていた異世界環境、ダンジョン攻略等が楽しくて、ちょくちょく外に出て迷子になってるが。どちらかと言えば、家に小さなガーデン作って、リモートワークしたいタイプなので、個人的には監禁された所で、何とも思わない。


だが然し、ね。

実家と北部の平和を背負う、一人の体じゃないこの身ともなれば、今以上に恐ろしい展開になりそうで、考えたくもない……。

頼れるも、娘から見てもヤバイ実家、特に父兄を持つ人間の心労は尽きない。


(……でも、だからと言って)


恐らく今考え得る最も安牌、唯一コイツに勝てそうな旦那の親元にこんな理由・・・・・で駆け込めるはずもなく(※本日初対面でさえなければ、迷わず駆け込んでいた)。

どれだけ知識で勝っていようと、圧倒的な実戦経験差を前に、オフィーリアは唇を強く噛み締める。


つい先日まで家族の手前、もう(この世界でも)成人したことだし、1人でやっていけると大見栄張っておいて、なんてザマだ。


(もうパパとママ、お兄ちゃんは兎も角、じいやに見せる顔もない……)


今回のことに難癖付けて、最後まで駄々こねていたパパとお兄ちゃんを横目に、ママと楽しく荷造りしていた時の自分を殴ってやりたい。

やはり外の世界は危ないんだよ、と彼女は思った。


……何より、ついでに今期共に入学する面子が、いわゆるイツメンなのもあって、この地の冒険ギルドカード、その勢いビッグウェーブのまま預金通帳まで新規で作ったのに……。


こんなのあんまりだ。


「はぁ……好き、本当に好きで好きで大好きで、愛してる。誰かをこんなにも愛おしいと思ったのは初めてだから……一寸頑張りヤリ過ぎちゃうかもしれないけど、気持ちいいことだけ、いっぱいしてあげるから、大丈夫」


『怖い』ことなんて何もないから、ね。


自分の存在を棚に上げ、本人ですら見たこともない恥部に熱い吐息を漏らし、抵抗なくしゃぶり付く雄を「なにも大丈夫じゃない」と蹴飛ばしたくなる。

100年人生が早くも大詰めとなってしまった、正しく四面楚歌。「いくら奉仕の化身スパダリとされるSubとは言え、コイツ私以外の女の子にもこんなクンニ披露してないだろうな……!?」と思いながら。



(……いやでも女だけとは限らない……)


なんせ幼い頃は女は添えるだけのBとLの世界線だと思っていたくらいだ。

先ほど見た(たぶん旦那の上司に当たる)生徒会長らしき美青年の存在を思い出す。


「…………………」


……ただそうやって、例え誰であれ自分以外、嫁が一瞬他の男のことを考えたのを感じ取ったのか。


「ッ、おれにしゅうちゅう、んッ、して……!」


レオくんは彼女のナカに指を指し入れ、舐っていた■■を ジュッ♡ ジュ~~~~ウ♡ ちゅうううううう♡♡ 強く吸い上げた。

その暴力的なまでの性的快感に。


「ひぁん、あ♡ ~~~~~~~~~~~~ッ♡♡!!?!」


滲む視界と、もはや例の"吸うやつ"としか思えない旦那のテクに耐えようも、これは不味い。

オフィーリアは地獄と天国を同時に見た。


「……んっ、ふふ、あーおめめ、とろんとさせて、もっと甘やかしたくなる♡ かわいいなぁ」


いき絶え絶えで、気を飛ばしかけた自分の頭を優しく撫でながら、嬉しそうなキスをして来る相手に「自分わたしだけだと言いながら、百戦錬磨としか思えない、もしやコイツ……」と思う。

そのあまりの舌技に、こうしてあっさり弄ばれただけでなく……もしこの歳、齢15で潮まで吹かされた暁には、悪い旦那を完全な雌にしよう、そうしよう……。拗ねた顔でちょっと逆ギレた、彼女は。


(その方がきっと社会の為だ……今更「対外政策に気を取られ、油断した」と思うも、もう遅い)


でも、思うだけならタダなので。

又もや下に下がっていく、普段は見えない雄のつむじをぼんやり見ながら、最後の抵抗。

オフィーリアははだけた素股、雪の様な乙女の太腿でレオくんの頭をがしりと挟んだ。


「ッ、」


いくら私が俺嫁枠だからって限度キャパはあるし、美少女だからって、喜ぶな。


そして、噛むな。乙女の内股を。


(この変態が……!!)


できる事なら私だって綺麗なお姉さんの太腿に挟まれてみたいが、それを口にした途端公女様不祥事のお知らせ。

いくら望めど、思うがまま生きれるほど羞恥心を捨てていない。実際やったら非常に不味いのに。


お前はいいよな、良識も良心もなくて……。

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