第82話 嫉妬の炎

 ユーリが街に着くと、街の中心の広場にアマカワの姿を見つけた。


「アマカワ書記! こんな変なとこ来ちゃったけど、大丈夫だった?」


「あ、ユーリさん。ユーリさんも来ちゃったんですか? 一体何が起こってるんですかね?」


 ユーリはかくかくしかじかで、ベリーの仇討ちの旅を始めたと言った。


「書記は何のために旅をすることになったの?」


 人情派のユーリが人のために旅を始めたと聞いて、アマカワは自分の旅の目的を言うのがはばかられた。


「あ、あたしも! この世界の平和のために……!」


「そうなんだ。二人で力を合わせてがんばりましょうね!」


 ユーリはいつも通りの頼もしい笑顔を見せた。


 そんな話をしていると、二人の近くをスロが通った。


「あ! 顧問!」


 二人は後を追って声をかけた。


「は? コモン? 俺はそんな名前じゃないよ」


「いや、顧問でしょ。何コスプレしてるんですか」


 ユーリは詰め寄った。


「だから、人違いだよ。俺はカクヨムワールドを純粋に楽しむただのパチンコ好きなおじさんです」


「だから本人じゃん」


 そんな会話をしていた時に、スロが持っていた本が急に発火した。


「あちちちち! なんだ?!」


 落とした本はメラメラと燃えている。アマカワはタイトルを見た。


『冷蔵庫の女』


「あ! これ、ぬりや先生の!」


 アマカワはそう叫んで、火を消そうと布で叩くが消える気配はない。


「アマカワさんとやら! その火はCHIORIシステムが生み出した魔王コーギーの”嫉妬の炎”です! 魔王コーギーがギギギ……ってなった作品が燃えるんです!」


 ベリーが言った。


「物理で来るだなんて卑怯だわ!」


 ユーリが叫んだ。


「この世界では公募に出せないようポストがなくなりました」


「何それ!」


「公募に出せる資格は魔王だけです」


「そんなのズルい!」


「今年の公募結果はどこも”受賞作品なし"でした」


「審査員つよっ!!」

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