第81話 会計の転生

 ユーリ会計が目を覚ますと、そこは神殿だった。


「え? なんで私はこんなところに??」


 ユーリはこれまでのことをできる限り思い出そうとした。公募作品が完成して、ポストに入れて……。その時、コーギー部長もついてきたんだった。そのままお散歩に行こうとしたら……。


「ユーリちゃんこんにちは! 私はホワイトベリー☆ よろしくね!」


 そこから記憶が無くて。なんか怖い思いをした気がするんだけど……。


「完全無視?! 認識すらされてない! 察しがいい貴女なら”ブラックベリーと何か関係あるんじゃない?”とか思うでしょ、普通! ねえったらぁ……無視しないでよぉ」


 手のひらサイズの羽のついた妖精は、ユーリの毛束をちょいとつかんで引っ張った。


「わかったわよ。あなた、何か知ってるんでしょ? 一体何が起こっているのよ?」


「よーやく話してくれる気になったわね。ここはね、カクヨムワールドっていうんだけど、最近CHIORIってシステムが暴走して、世界の一部がおかしくなったの。犬はほとんどコーギーになっちゃって、大変よ」


「いいじゃない、コーギー。かわいいし」


「そんな呑気な話じゃないの! ブラックベリーは私の双子のお姉ちゃんなんだけど、増えたコーギーに食べられちゃったんだから!」


「えええ! あのコーギー、そんなやばい奴だったの?!」


「そうよ。貴女も食べられそうになったのを私が助けたの」


「え? ホント? ありがと……。でも、なんで助けてくれたの……?」


「貴女には見えたんでしょ? 私の友達のパンツの妖精」


「え? ま、まあ、ね」


 パンツの妖精は、以前書いた小作品だ。


「友達の友達は、私の友達よ。それに貴女ならお姉ちゃんの仇を討ってくれるんじゃないかって……」


 ホワイトベリーは悲しそうな顔をした。


「そ、そうよね。お姉ちゃんがそんなことになって、残念だわ……。でも、私にできることなんてあるのかしら?」


「異世界転生した者は勇者の力があるの! さっきアマカワって子も来てたから、二人で力を合わせれば、きっと大丈夫よ!」


 ホワイトベリーが満面の笑みを見せる。姉を亡くしたのによく笑えるなぁ。妖精は人間とは違うのかもしれない。


 それにしても、アマカワはきっと天川書記だよな? 顧問もいるのだろうか。でもさっきの話だと二人って……。


 ユーリはうーんと唸ったが、とりあえず近くの街に向かうことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る