第78話 ブラックベリーの妖精

 一時期は、変態とスタンド使いの戦いやら、あな……(なんだっけ?忘れるくらいだから大した話じゃないと思うけど)がどうしたこうしたと書記が言っていたのが、ようやく落ち着いた。


 会計は部室に来て、ノートパソコンを開いた。公募に出す作品を直しているのだ。期日に間に合うかはギリギリ。せっかく直すのだから自分が後悔しないように……そう思って頑張っていた。


「やあ! こんにちは! 僕はブラックベリー☆ 創作活動を応援する妖精だよ!」


 右後頭部のあたりからミッ◯ーマウスのモノマネのような声がした。会計はそれを無視した。


「え?! 早速無視? 創作の妖精だよ? 仲良くしたら、何かすごい魔法でめちゃくちゃ作品が良くなるとかあるかもしれないのに、無視? 無視なの?」


 高いような低いような声でうざ絡みをされ苛立つ。最近部室は異世界と繋がってしまい、天川書記は今流行りの異世界転生をしてしまった。自分もいつ何が起きるかわからない。公募がある世界にいるうちに、やりたいことはやっておかなくては。


「ねえねえ。せめてチラッとは見ようよ。妖精だよ? よ・う・せ・い♡ ファンタジーではあんなに普通に出てるのに、実際見えるって公言した途端病院を勧められちゃうっていうご都合な存在」


 まあそうかもしれない。急に現実的なこと言い始めたな。はあ、気が散る。せっかく部室に誰もいなくて集中できると思ったのに。


「わん」


 机の下からコーギーが出てきた。お前、いたのか。


「わん!わん!」


「わ! ちょっ! やめ! あーっ!!」


 妖精の悲鳴が聞こえた。

 嫌な予感がして、しばらくパソコンの画面を見つめて時間が経つのを待った。


 そっと後ろを振り向く。

 コーギーがもぐもぐしていて、口の端から人形の小さな手みたいなのが出ていたが、すぐにコーギーの口に入っていった。

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