第2話 平行線

 ある日、星花は、東京へと出かけることになりました。小学校で校外学習に行くことになったのです。目的地は、国会議事堂です。

 ただ、一応は先生たちが校外学習を楽しくするために入念に準備してくれていたものの、この世界の東京は、少し夢見がちな場所なのです。


 校外学習当日の朝、星花は、歯を磨いて寝癖を直して、家を出ました。気持ちは期待で満ちていました。

 

 学校に着いて高速バスに乗ってから1時間ほど経った頃、サービスエリアでバスが停車しました。

「では、トイレ休憩などを行ってきてください。」

 ただ、わんぱくな星花は、このアナウンスを全く聞かずに、トイレに行くより先に商品を買いに行くのです。お菓子のグミだったり、ガムだったりと。ちなみに、結局、トイレに行けずにバスの中で我慢を続けるまでが起承転結の流れとなります。


 東京のコンビニに着きました。星花は、いつも房総で眺める街並みとこの東京の街並みの違いに少し驚きました。何しろ、政治的なプロパカンダがそこら中のビルで旗として掲揚されているのです。

 そうです。この世界の東京は独裁政治下の都市なのです。


 「皆さーん、では、改めて、この校外学習のルートを説明します。まず、こちらは木場のため、日本橋に移動し、それから、、、、、、」


 不思議なことに、星花の担任である女性の先生のテンションが少し高くなっています。なぜなのでしょうか。


 また少しバスに揺られて日本橋に着きました。バスから降りて東京駅周辺を歩きます。

 「みんなー。自由行動だけど、あまり遠くに行かないでね。日本橋地区の外から出てはだめだよ。」

 「はーい。」


 号令とともに、星花とその友達、三晴(みつはる)と那由多(なゆた)は、日本橋地区を闊歩し始めました。

 闊歩し始めて10分後、星花は、地下へと繋がっていそうな入口を見つけました。

入口は、雑居ビルの狭間にありました。駅名の表示がなく、地下鉄のホームへと続くような階段ではありませんでしたが、星花たちは入口から地下へと続く階段を下りてみることにしました。


 いつも二階建ての一軒家の階段くらいしか使わない彼らにとって、この階段は長すぎました。それに、所々、電灯が壊れていました。

 

 ーあと200mー ーあと100mー


 この階段は少し変です。もう200mは歩きました。それでもまだ100mはあると、時々、出てくる貼り紙に書かれています。


 ーポタポター ーポタポタ。ー 「ポタポタ。」

彼らには、水滴の滴る音が段々と非生物というより本物の生物の出す音に聞こえてきました。


 「ようやく着いた。」

星花と三晴は申し合わせたように、口をそろえて言いました。

「おっ。ドアがある。」

那由多が言いました。

星花と三晴は、その鉄のドアを開けようとせず、そっと「帰ろう」と言おうとしましたが、もうすでに時すでに遅しでした。那由多はドアを開けてしまいました。


 


 



 

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