海の少年

@UminoMiyako

第1話 海の少年

 房総の海の砂浜に立つ一人の少年がいました。彼の名は、星花(せいか)。優しい子でした。元々は、軽井沢で出生したものの、両親が離婚し、母方の実家に引き取られたのです。

 この世界は、今、この話を読んでいる君たちのいる世界とは少しだけ世界線がずれています。ずれた結果、この世界で少年が住む国は、失敗国家となってしまっていました。

 ー今日は、崩れないでくれよ。ー

 星花は、砂浜で砂の城を造っていました。彼の作る城は、少し特殊で、天守も備えた山城です。

 まず、土台となる「山」を泥で盛って造成し、屋敷みたいな建物も少し造りながら、最後に天守を造ります。

 ただ、これはいつも波によって「落城」してしまうのでした。


 「星花、ご飯だよー。」

海沿いの道路の向こう側から星花の母の呼ぶ声がしました。今日はもう、「撤兵」の時間のようです。


 食後、星花は、ベランダの外に出ました。この日は夏の盛りのため、明かりに群がる虫が星花の近くにもやってきます。虫が好きな星花は、「友達」と夜も遊べて幸せでした。



 

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