第23話 植物光線

「まずいな。……飛ぶのって思ったより難しいぞ。」



 その場に漂うだけでもかなり神経を使う。一瞬でも気を抜くと落ちてしまいそうだ。

 飛べるようになったことで機動力は互角になったと思っていた。しかし空中に漂うだけで神経を使っている現状で自由に空を飛びながら戦うなんてできるのか?



「キ…キサマ〜!よくもおぉぉぉ! 」



 怒りを滲ませた悪魔から大量の妖気が漏れだすと同時に身体がさらに巨大化した。 

 しかも魔力の量がさっきまでと比べかなり増大している。俺や、炎龍ほどじゃないが、それでもかなりの魔力量だ。

 すると、空気中に無数の魔力が展開したのを俺の感知能力を確認した。

 さっきと同じ攻撃みたいだが量は、さっきの数十倍だ。

 これは、捌ききれそうにない。魔法が発動する前に止めないと。


そう思い、”土弾”を放つも展開された闇魔法に接触すると飲み込まれ相殺されてしまった。

まだ、ちゃんと飛べないが仕方ない。闇魔法の発動を止めるのが先だ。

そうして俺は悪魔に突撃を開始した。

しかし、思った通りの方向へは進まずに悪魔の横を通り過ぎてしまった。俺は慌てて、方向転換しようとするもなかなか止まれなかった。


「やっぱりダメだ。スピードを全くコントロールできない。」


そうして俺が飛行に慣れず、もたもたしている間にドリルの形をした無数の闇魔法が展開されていた。


『やばっ!』

「ギィヤア!」


 百以上あるドリル形状の闇魔法が俺に襲いかかってきた。

 今の飛行技術では、躱わすことはできないと判断した俺は、全速力で射線上から逃げる。

 咄嗟の判断が功をそうし、ドリルが俺の体に当たることはなく、目の前を通過し、遠くの方で霧散した。


 どうやら追尾機能はないみたいだな。

 もしかしたら、魔素を持つものを追尾する機能でもがあるのかと思っていたがその心配はいらないみたいだ。

 それにあの闇魔法は射程範囲があるみたいだからその範囲外で戦えば俺にダメージは与えられない。

 だが、俺も同じく悪魔に決定打を与える攻撃手段がない。

 しかもあの闇魔法が厄介なんだよな……。

 闇魔法に触れた瞬間触れたものは、消えてしまうからたちが悪い。

 身体の内側に攻撃を流してダメージを与える流拳だったら悪魔にダメージを与える有効打になるかもしれないが、それには近づく必要がある。

 今までの戦いを見るかぎり、闇魔法は体から離れるほど発動するまで時間がかかっている。

 ドリルを作っている時よりも”土弾”を防ぐ時の方が発動が速いから間違いないだろう。

 遠くからなら集まった魔力を感知してかわすことができるが、もし殴る瞬間に闇魔法を発動されたら、感知できたとしても避けられない。

 腕がもっていかれるのは確実だ。

 そんな無茶はできないし、どうしたものか。

 そんなことを考えていたため。悪魔の接近に気づくのが遅れた。


 悪魔に殴られた俺は、吹き飛ばされ宙を舞った。すぐに立て直そうとしたが飛ぶ意識が薄れて思うように操れない。

 飛ぶことに意識を全集中させなんとか態勢を立て直し、状況を確認するために上を見上げる。すると悪魔の体内で今までとは比にならないほどの魔力が集まっていた。



『まずい!』


 今までとは魔法の規模が違う。これは逃げられない。

 そう直感した俺は、魔法の発動を止めようとしたが時すでに遅かった。

 悪魔の指先に巨大な黒球が集束していた。


 一切の光を通さない触れるもの全てを無に帰す全てを飲み込む暗黒の闇。

 上級闇魔法!


暗黒闇球ブラックホール


 此方に迫りくる暗黒闇球ブラックホールを打開策がないかを思考する。

 しかし、俺は暗黒闇球ブラックホールを相殺するだけの威力を持った攻撃手段も持っていないしあの攻撃から逃げ切るスピードもない。

 万事休すだ。そう思い俺が自分の死を覚悟したその時。



灼熱龍息吹バーニングブレス


 地上から細く収縮された、さながら光線のような火柱が撃ち上がり、衝突した暗黒闇球ブラックホールを破壊した。


「バカな!」


 黒闇球が破壊されるとは思っていなかったのであろう。悪魔の表情には、初めて怒りではなく焦りが滲んでいた。

 俺は、火柱の上がった方向に目を向ける。すると、そこには火龍がいた。

 そうか!今の攻撃は火龍の。


『助かった!!』

「そんなことより。早く止めを!」



 その声で振り返ると、いつの間にか悪魔は逃げ出し、その姿は小さくなっていた。


「さすがに火龍も一緒に相手するのは無理だ。屈辱だが逃げるしかない。」


『逃がすか!』

 

 と、俺は悪魔に向かって、すぐさま土弾を放つ。

 しかし、


「そいつは効かねえよ。」


 効果はなくあっさり闇魔法で止められてしまった。


 ダメだ。俺の攻撃じゃ通じない。

 そう思い、俺は火龍にもう一発息吹を頼もうと思った。

 しかし、火龍は息切れしていてとてもすぐには出来そうにない。

 ダメだ。

 このままじゃ悪魔に逃げられてしまう。

 それじゃあ奴らがこれから何をしようとしているのかも分からなくなり……兎人あいつらだけじゃなくもっと多くの人たちが傷つくかもしれないんだ。


 弱音を吐いてる場合じゃない。今悪魔を捕まえられるのは俺だけなんだ。やるしかない。

 俺は覚悟を決めた。

 イメージしろ。

 さっきの火龍の息吹をみて、なんとなく感じたはずだ。

 龍化した今の俺なら似たようなことができると。火龍みたいに火は操れないが、

 俺はスキル光合成で光を集めることができる。

 だが、それだけでは悪魔を倒すほどの威力は出せない。

 威力を上げるためには体内の魔力を使うしかない。

 魔法を使ったことはないが魔力感知で散々他のもの達の魔力を見たから自分の魔力くらい分かるはずだ。

 光合成で右腕に集めた光に自分を魔力感知して探した体内の魔力を混ぜて光を増幅させる。

 そうして集めた全てのエネルギーを圧縮して一気に放出する!



《魔法 光魔法を獲得しました。》



植物光線ソーラービーム


 発射された細い光線は、悪魔の羽根に直撃。羽根を一欠片も残さず、燃やし尽くした。


「バカな!!、う、うおっ……!!」



 羽根を失い飛べなくなった悪魔は、上空1000mからまっ逆さまに落下していった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る