第22話 龍化

『もしかして、火龍お前がカラエツ鉱山にきた理由って……。』

「この子を産むためです。ここのマグマの温度は、ちょうど良い温度で出産に最適なんですよ。」

『なるほど。』

「しかし陣痛がきて身動きが取れなくなっていた時に運悪くあの男に見つかってしまいました。邪神の力なんかに捕まったなんて他の龍族に知られたら鼻で笑われる。一生の不覚です。」


 火龍が陣痛で動けないところを悪魔は狙ったのか。

 どうりであっさり捕まるわけだ。

 しかし、火龍が飛べない以上、火龍の背ここで悪魔あいつと戦う他ない。

 だが、出産で身動きが取れない火龍を傷つけないように戦うのはかなり難しい。だが、やるしかない。

 と俺が決意したその時。


「くたばれェ! 虫ケラが!!」



 悪魔は複数の魔力の塊をドリルのような形状に変化させこちらに投げ飛ばしてきた。

 土弾を飛ばし、一本撃ち落とした。

 しかし、残りのものは対処する時間がなかったため。俺は咄嗟に体を捩らせ魔力に当たるスレスレのところでなんとか攻撃を回避した。


『っぶねーっ!間一髪!』


 そういえば、戦闘中だったな。

 すっかり忘れていた。気を引き締めないと。

 あのガタイからてっきり近距離の肉弾戦のみだと思っていたが……。

 まさか魔法が使えるとは。

 ドリルに触れた壁の一部が飲み込まれて消え、壁が抉られているのから推測するとおそらくあいつの魔法は闇魔法だろう。


 まずいな。

 俺は、火龍を傷つけないようにするために近づけさせないように戦うつもりでいた。

 だが、遠距離の攻撃手段を持っているとなると話が変わる。

 それどころかあの闇魔法で遠くから動けない火龍を狙われる方が却って危険だ。火龍に当たる前に弾き返そうとしても触れた瞬間に体が飲み込まれてしまうだろう。

 さぁてどうする?

 なんとかして、火龍を傷つけずに悪魔を捕まえる方法を考えないと。

 ……そういえば、下の方にも魔法が飛んでいたような。まさか!!

 慌てて火龍の安否を確認する。


『おい! 大丈夫か?』

「心配無用。結界で自分のことは自分で守れるので私のことは気にせず戦ってください。」

『いや、そう言ったって…』

「とは言ってもあなたのことですから私のことが気になって戦いに集中できないですよね。……これを使いになってください。きっと役に立つはずです。」


 火龍の手から出た光が俺の中に流れ込んでくる。光からは凄まじい力の奔流を感じる。


『なんだ……これ。体が熱い。』


「大丈夫。光に身を任せてください。」


 火龍のいうことを信じ、俺は全身の力を抜き体の中にある光に身を任せた。すると一瞬で全ての細胞が生まれ変わっていくのを感じた。


《スキル 龍化LV1を獲得しました。》


 体の中の光が霧散すると、それまでよりも内包する魔力が桁違いに増えているのを感じる。それに身体能力もかなり向上しているのがわかる。

 それこそ、火龍にも匹敵するほどだ。

 さっきまでとはまるで別の生き物になった気分だ。


「浮雲も出ていますしこれで空中でも悪魔と互角に戦えるはずです。」

『え?』


 火龍の言葉が気になり背中を見るといつの間にか、浮雲が体を覆っていた。

 しかも、よく見ると皮の表面の所々が硬質化してまるで鱗のようになっている。


『なんだこれ⁉︎』


 そういえば、途中で神の声が聞こえたような。

 そう思い、ステータスを確認する。


 龍化L V1・・・体を龍に変化することができる。熟練度により変化量が異なる。


 新しいスキルが確認できた。

 龍化か。確かに体の一部が龍のように変化している。

 そうか火龍から出た光は、スキルの光だったのか。なんとなくどこかで見たことがあると思っていたがスキルブックが光った時に似てたからか。

 それにこれで機動力は互角になり、火龍に攻撃の当たらない離れたところで戦える。


『火龍助かった。ありがとう。』

「本当は、直接あの男を処したかったのですが私は動けそうにありません。なので私の代わりにあの男をぶっ飛ばしてください。」

『ああ。任せろ。』


 まずは、悪魔を火龍から引き離さないと。

 俺は、悪魔目掛けて突撃した。


 ぶへぇぇ!



 俺の拳が悪魔の腹を突き、そのまま二人で上空まで飛んだ。

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