第19話 魔道具師の家
壁の向こう側へと吸い込まれた俺は、斜面を滑り落ちていた。
『うおっ!』
一分ほど滑り落ちていると尻に大きな衝撃を受けた。
地面にぶつかったみたいだ。
助かったがここは、どこだ。
三メートル四方の何もない小さな空間に目の前には扉が一つ。
他に出口はないみたいだし、ひとまずはあの扉から出るしかないな。
あの扉の先には何があるかわからない。気を引き締めないと。
それにしても俺はなぜ、罠に引っかかったんだ?
俺はずっと魔力感知で周りを視て警戒していたがあそこに罠があるなんて気づかなかった。
油断していて見落としていたのだろうか?
俺は、疑問を持ちながらも扉を開けた。
『この光は一体?』
扉の先からは眩しい光が差し込んできた。
ひかるの刺す方向に歩みを進めると、光を反射してキラキラ輝くシャンデリアやペルシャ絨毯のような美しい模様の刻まれた手触りの良さそうな絨毯などが備えられている豪華絢爛な部屋が現れた。
『なんだ? ここは、ダンジョンじゃないのか?』
すると、机の上に魔道具の資料が沢山あるのを見つけた。
それから見るにどうやらここは、魔道具師の家みたいだ。
しかし、机の上や光を発する魔道具に埃が蓄積しているところから、その魔道具師は現在この家には住んでいないと思われる。
幸いにもこの部屋に魔物はいないみたいだしひとまず、この部屋にいれば安全だろう。
だが、今の俺は無断で人の家に入った不法侵入者だ。
だからもし、家主が帰ってきたら通報されて騎士に捕まり牢屋にぶち込まれる可能性がある。
グラグラ
『おっと!』
それにさっきから、微かに地面が揺れている。おそらく地震だろう。
ここは、地下だ。もし天井が崩壊したら生き埋めにされてしまう。
急にいなくなってみんなも心配しているだろうし……。
うん。部屋を出てとっとと、帰ろう。
そう思い、部屋に入った扉の他に三つの扉があったので、俺は左から順番に扉を開けた。
左の扉は、風呂。正面の扉はトイレに続く扉であった。ということは、右の扉が外に出るための扉だろう。
そうして右の扉を開けると、扉の先には、石がころがっているだけの暗い空間が広がっていた。
そして目線の先に階段を見つけた。
階段のさらにその向こう側は、何もない大きな空洞が広がっているみたいだ。
あの階段を登っていけばきっと外に出られるだろう。
そうして俺が部屋の外に一歩踏み出した。
ジュー、ボッ!
『あっちぃーーっ!!!』
なぜか地面に足をつけると同時に俺の体が燃えていた。
俺は、慌てて貯蔵庫で溜め込んでいた水を全身にかけ、火消しを行い部屋の中に戻った。
『危なかった……。』
ほっと胸を撫で下ろす。危ない。真っ黒い炭になって危うく消失するところだった。
しかし、なんで急に俺の体は、燃えたんだ?
そう思い、扉の外に手を出すと……。
ボッ!
『ワッツ!』
今度は、指先から燃えた。すぐに火消しをして手を引っ込める。
指先からスモーキー香りが漂ってくる。この匂いだけで白飯何杯でもいけそうだな。お腹は空いてしまった(いい匂いで気分的に)がこれでなぜ俺の体が燃えたのかわかった。
部屋の外の温度が高すぎて、発火温度を超えてしまっているんだ。
だから、部屋の外に出た瞬間、暑さを感じる前に俺の体は発火してしまった。
おそらくカラエツ鉱山は活火山なのだろう。そしてここは地下深くのためマグマだまりの影響を受けてとんでもない気温になっている。恐らく400度は有に超えているはずだ。
おそらく部屋の中は、魔道具師の作ったあの気温を調節する魔道具のおかげで守られているのだろう。
その原因はもしかすると、この鉱山は活火山なのかもしれない。
しかし、どうする。これでは、外に出られないぞ。部屋の中に何かないだろうか?
俺は、世界図書館で部屋の中を調べまくった。すると、気になる本を見つけた。
『スキルブック?』
本を読むだけで技能を手に入れられるなんて凄いじゃないか。
この本なんか今の状況を打開するのにぴったりだ。
そう思い、本棚に置いてあった一冊の本を取り出してページをめくった。
《スキル 熱操作Lv1を獲得しました。》
すると神の声が聞こえてスキルを獲得すると同時に技能本が消失した。
『うっそーーー!!!』
技能本って一回きりの使い切りなのか!!本をちょっとだけ拝借してスキルを覚えようと思っただけなのにこれじゃあ泥棒だ!
よし、なかったことにしよう。技能本の現物はもうないことだし……。元々ここには技能本なんて最初からなかった。そういうことにしておこう。
俺は、切り替えて新しく手に入れたスキルについて調べた。
熱操作Lv1 周囲の温度を自由自在にコントロールできる。範囲と精度は熟練度に比例する。
このスキルで自分の周囲の温度を調節すれば、あの灼熱の中でも行動できるはずだ。
早速試してみよう。
再び、扉の外に手を出してみる。
『今度は、燃えてない!』
部屋から出ても平気だ。
これで先に進むことができる。
俺は、この空間から出るために移動を始めた。
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