第18話 ダンジョン探索

 鉱山の採掘地点から東側へ進むとそこにダンジョンがある。

 ダンジョンがどうして出来るかは今もなお解明されていないがすべてのダンジョンに巨大な魔素溜まりが出来ているためそれが一つの要因と言われているらしい。


 ダンジョンの入り口の前には門番がいる。

 子供が混じっていたため冷やかしと思われたのか、中にはいれさせまいと門番たちに思いっきり睨まれたがギルドカードと依頼書を見せるとすんなりと通してくれた。

 これがダンジョンか。

 薄暗くて少しじめっとしているが普通の洞窟と大して代わりがない景色が広がっている。

 だが、魔力感知を使っている俺には巨大な魔力の渦のうねりをビンビン感じる。

 それがここがただの洞窟ではないことを物語っている。


「ここからは、罠があって危険なので、初のダンジョンのアスト様とラキは、私たちの後についてきてください。」

『わかった。』

「うん。」


 俺とラキは兎人族のみんなの後をついていく。

 俺は、魔力感知を使いながら慎重に進んだ。

 すると、前方の床が不自然に空洞になっているのに気がついた。


「止まってください。」


 すると同時にシノビに呼び止められたので俺たちは歩みを止めた。

 シノビは前に小石を投げると床が開き、地面には無数の棘がびっしりと埋まっていた。

 この罠に引っかかり落ちたら、串刺し。

 ひとたまりもないだろう。

 その後も、シノビは壁から飛び出す鎌や火炎放射器などの罠を次々に解除していった。

 俺が気づくのと同時に呼び止めているため魔力感知を使っている俺より早く罠に気づいているのだろう。罠を見破るスキルを持っているのだろうか?


「ギィ?」

「ギ」

「ギギッ」


 いくつもの罠ゾーンを抜けたあたりで、三体の魔物が視界に入った。

 薄汚い布を体に巻き錆びついた盾と剣を身につけている緑色の肌をした魔物。

 依頼書の絵と同じだ。間違いない。ゴブリンだ。

 俺たちはすぐさま戦闘体制をとりゴブリンたちを迎え撃った。



『………』


 瞬殺だった。

 俺が動き出す前に、兎人族の蹴り三発で片付いてしまった。

 俺は振り上げた拳をそっと下ろした。


 ゴブリンを倒したあと依頼達成の証拠品として倒したゴブリンの耳を剥ぎ取った。

 人型の魔物を痛め付けるのに嫌悪感を抱いたが、何度もゴブリンと遭遇して倒すたびに繰り返し剥ぎ取ったため嫌でも自然となれていった。


「これで依頼は、達成だ。」


 依頼を達成した俺たちは道具の材料集めのためさらにダンジョンの奥深くに潜った。

 現れるモンスターを倒しながら階段を2度3度下ると、今までの薄暗い空間と異なり目映い光を放つ空間が現れた。


「凄い。火に雷、光の魔石まである。それにアルバルト鉱石までこの素材があれば…あれもこれも……実現不可能と断念していたものが作れる!!!」


 沢山の魔石や鉱石をみて、技術者魂に火が着いたのか、ラキは、一心不乱に壁を掘り始めた。

 俺たちも、ラキの指示の通りに壁を掘り進め、いっぱいの鉱石を手に入れた。

 そうして手に入れた鉱石や魔石は吸収し、保管庫に保存していると、足音が聞こえた。


 ガッガッ


 予期せぬ出来事に驚き体が反応し、とっさに足音のする方に注目する。

 すると、50メートル先に硬い岩のような皮膚と、鉄のような甲羅をもつ四足歩行の魔物が見える。

 どうやら皆、鉱石を掘っていて周囲の警戒を怠っていたからかこんな近くまで魔物の接近を許していたみたいだ。

 俺たちは魔物に見つからないようにすぐさま岩影に隠れた。


『見たことないやつだな。』

「あれが岩亀です。」

『あいつが……。』


 油断して魔物の接近に気付かなかったのは、反省するべき所だが、標的が自ら近づいてきたのは、ラッキーだ。おかげて、手間が省けた。

 そして幸いにも、岩亀は鉱石を食べるのに夢中でこちらに気づいていない。

 攻めるならいまだ。


『行くぞ。』


 俺の掛け声と同時に動きだし、岩亀の背後をつき攻撃した。


 ガン



『んっ!』

「硬い」

「いたっ」


 攻撃は岩亀の堅い装甲に阻まれてしまった。

 しかしすぐに態勢を立て直し、岩亀と対峙した。

 兎人族の蹴りでも、ラキの剣でもダメとなると岩亀の装甲は、並大抵の攻撃じゃ通らないな。

 そうして、俺が次の攻撃にうつろうとした次の瞬間、



 ゴゥ


 岩亀の口に魔力が収束しているのを、確認した。


『なにか来る避けろ!』


 次の瞬間、大量の礫が岩亀の口から発射された。

 慌てて、横に飛び全員岩亀の射程範囲から回避する。


『っぶねぇー!』


 横に飛ぶのがあと少し遅れていたら、命はなかった。

 岩壁にめり込んでいる礫をみて確信する。



あんなのに当たったら只じゃすまないぞ。

あのまま好き勝手やられたら不味い。こっちからも攻撃しないと。


『あいつにダメージを与える策がある。手伝ってくれ。』

「わかった」

「任せてください。」


ゴゥ


岩亀は、魔力を収束させて再び礫を、発射しようといている。


「その技は、使わせない!」


ギャア!!


礫を発射しようとした瞬間、ラパンのけ蹴りが岩亀の顎に入り礫が口の中で暴発。

岩亀の口の中は、ボロボロ。しかもそのダメージで、足元がおぼつかない。

この隙を逃すまいと、他のみんなは絶えず攻撃を加える。

しかし岩亀にダメージは一切入っていない。

それどころか、ダメージを喰らって暴走した岩亀に気圧されて、劣勢。

だが、いい囮だ。

他の皆に岩亀の気がいっている間に岩亀の懐に入ることができた。


『お前の皮膚や甲羅は、確かに堅い。だが果たしてお前の身体は、内臓まで硬いのか?』


ぎ!

俺に気づいた岩亀が前足で凪払おうとするが時既に遅い。俺はもう攻撃動作に入っているからな。


『お前の皮膚や甲羅は、確かに堅い。だが果たしてお前の身体は、内臓まで硬いのか?』


岩亀の皮膚に触れた拳を押し込んだ。


『流拳ーー!!』


 打撃は岩亀のなかに浸透し、奥に突き刺さる。

 血管や内臓がグチャグチャに破壊された岩亀は、口から大量の血を拭きだし倒れた。

 倒した岩亀はすぐに貯蔵庫に入れた。


「凄いあの堅い岩亀を一撃でなんて、アスト凄い!」

「ええ。さすがはアスト様です。」


 ラパンに褒められるのは、いつものことだがラキにも褒められるとは……。手放しで褒められるとなんだか照れるな。

 ともかく、任務は達成したし目当ての素材も手に入れた。

 これで壊れた魔道具を直すことが出来ることだしそろそろ帰るか。

 

『おっと』


 道端の石ころにひっかった俺は咄嗟に壁に手をついた。

 ガゴン。

 嫌な予感がする。

 グルン。


『うわぁーーっ!』


 俺は壁の向こう側へと吸い込まれた。







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