第13話 復興に向けて

 俺が畑についた数分後にキロスが、カゴいっぱいにものを持ってやってきた。


「これで足りますかね。」

『十分だ。ありがとう。』


 俺が何をするのか気になったのだろう。さっきまでゾンビのように朽ちていた村人たちもゾロゾロと集まってきた。

 ラパンなんか、いつ作ったのか。頑張れアスト様と書いてある応援うちわを両手に持って駆けつけていた。

 さてと、観客も集まってきたしそろそろ始めるとするか。

 アストのぉ〜3分生育タ〜イム。

 本日育てる野菜は、こちらの人参です。

 まずは、畑に等間隔で種を植えます。

 そして、スキル”成長促進”を使います。実はこれ。黒熊の戦いで生み出した土弾と同じく昨日の戦いでレベルアップした時に手に入れたスキルなんです! これを使うと、なんと植物がぐんぐん成長するんですよ〜。

 ここで、アストのワンポイント!

 水とポーションを土にありったけ掛けましょう。

 成長促進を使うと、土の中の水分と栄養がどんどん抜かれてしまうため補給が大事なんです。(栄養補給にはポーションが効果あると世界図書館に書いてあった)

 さあ、身が大きくなって来たらいよいよ収穫です。

 収穫の際は、実が途中で割れないように真っ直ぐ抜きましょう。

 収穫したら、葉の部分は切り落としておきましょう。

 そして、スキル種生成を使います。 種生成は、植物の遺伝子から種を生み出すスキルである。これを使い人参の葉から種を作り出します。以上、アストの3分生育タイムでした。

 ではまた次回お会いしましょう。

 シーユウネクストタイム。


『みたいな感じでこれを数度行うことで当分の食糧については問題ないと思うぞ。』


 説明を終えて振り返ると村人たちは、口をあんぐりと開けている。

 なぜ誰も何も言わないんだ?

 もしかして何かまずいことでもあるのか?



「「「うぉぉおおおおおお!」」」

「アスト様ありがとう!」

「やっぱりあなたは俺たちの救世主だ。」

「アスト様!!!」


 餓死の危機がなくなったこともあって村人たちはまさに狂喜乱舞。

 俺なんかテンションMAXの村人たちに空高く胴上げされている。

 そんなに喜んでくれるなんてこちらとしてもやった甲斐があったってもんだ。

 ただ、そろそろ胴上げするのはやめてほしい。

 腹の奥から沸々と何かが湧き出て来そうだ。

 お願い!早く降ろしてくれ。

 ああ……もう駄目だ。

 出る。

 ただいま、映像が乱れております。しばらく、そのままでお待ちください。


「大丈夫ですか?」

『あぁ、……大丈夫だ。』

 


 とは、行ったものの胸の所ら辺がまだ少し気持ち悪い。

 しかし、妙だ。俺には消化器官がないから、気持ち悪くなったり吐くことなんてないはずなんだが、一体どういうことだ?


「これは……振動で酔って、魔力が漏れ出したんですね。」


 魔力漏れ? 

 魔力感知で自分を確認すると、体の周りに凄まじい密度の魔力が滞留していた。


「どうぞ。魔力が回復するポーションです。これを飲めば、一発で気持ち悪いのが治りますよ。」


 キロスからポーションの入った瓶を受け取り、それを一気に飲み干した。

 すると、さっきまで残っていた気持ち悪い感じがスーッと消え、そよ風が吹き抜けるような感覚が体の中を駆け巡った。

 凄いな。さっきまでの不快感が嘘のようだ。むしろ、ミントガムを食べた時のような爽快感さえ感じる。

 さてと当分の食糧は安定したが、他にも問題が山積みみたいだし一体どうしようか?


『食糧についてはこれで何とかなると思うが………。他はどうする?どこかで調達できないのか?』

「そうですね。洋服と煉瓦は近くの街に行けば買えます。ですが魔道具はこの辺りでは生産されていないため数も希少ですし、値段も高いのでとても全員分は……。今あるものも何年もかけてやっと揃えられたものですから。」


 何か解決策はないかと俺とキロスは、二人で思案していた。

 すると、近くにいた村人の一人が何か思いついたのか呟いた。


「あ!そういえば、前に一度行ったことがあるんですが、森の北にある魔石や鉱石などがよく取れる鉱山のある大きな街でそこでは年に一度、新人の魔道具師による魔道具の見本市が開催されていてそれがちょうどこの時期なんです。新人の作った魔道具なので玉石混合ですが値段も安いですし、もしかしたら掘り出し物もあるかも知れませんよ。」


 なるほど、それは朗報だ。

 転生直後にいた町でもそうだったが、どうやらこの世界のインフラは、電気やガスの代わりに魔素が賄っていているらしい。

 だから魔素を使った魔道具は、前世の電化製品のように、普段の生活に必要不可欠なものだ。

 つまり、魔道具を作る魔道具師はこの世界で生きていくにはなくてはならない存在だ。

 当然、収入もいいはずだ。

 そして収入がいいってことは多くの者たちが自分達の大金持ちになることを夢見て魔道具師を目指す。

 そうなれば、その中から優秀な奴が出てくる可能性が高い。

 新人だからと言っても優秀な者はいる。前世でも、新入社員の頃から、優秀だった者もいれば何年経っても碌に仕事が駄目なやつもいた。

 この見本市はチャンスだ。

 壊れた魔道具を何個か”世界図書館”で調べたところ。

 どうやら、魔道具は、埋め込まれた魔石を定期的に交換することや定期的な機材のメンテナンスが必要みたいだ。

 ここで若くて優秀な魔道具師と繋がっておけば、定期的なメンテナンスもしやすいしひょっとしたら壊れた魔道具も直してくれるかも知れない。

 それに大きな街なら煉瓦も洋服も十分な数調達できるだろう。



『それはいいな。よし行こう。そこはなんていう街だ?』

「鉱山都市ラウラです。」

『……キロスには遠征に必要なものの準備を、ラパンには遠征に行く者たちを選抜してもらいたい。頼めるか?』

「任せてください!すぐに用意いたします!」

「選りすぐりの者たちを集めましょう!!」


 二人とも、勢いよくかけて行った。

 大張り切りである。

 あの調子なら、早くても昼頃には、出発できるだろう。

 鉱山都市ラウラ、色々と不安があるが楽しみではある。

 最初の町では一瞬しか街に居られなかったからな。異世界の街一体どんなものがあるのか大変興味がそそられる。

 それに、魔道具の見本市というのも面白そうだ。俺は車の展示販売会とかそういうの好きだったんだよな。

 こんな気分は、いつぶりだろう。

 俺は、年甲斐もなくテンションが上がっていた。

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