第12話 食糧危機
ホゲェー
『変な声……。』
何ともバカっぽい声で目が覚めた。
眼をこすりながら目を開けると、雲ひとつ無い快晴が俺を出迎えた。一瞬なぜこんなところで寝ているのか疑問だったが、村が壊されて寝る場所がないから皆で野宿したことをすぐに思い出した。
そして上空を飛ぶ飛行機よりも大きい鳥が、昨日あった出来事が夢ではないと、俺に自覚させる。
さっきのバカっぽい鳴き声は、あの鳥か。アホウ鳥みたいになんとも間抜けな鳴き声だ。ホゲー鳥とでも名付けよう。
『さてと。』
うっーと、背伸びをしてゆっくりと起き上がる。
周囲を見渡すと、誰もいないことに気がついた。
皆、村に戻ったのだろうか。
俺は、地下道を通り、村へ向かった。
地下道を抜けて地上に出ると俺は眼前に広がる光景に驚いた。
家が壊され瓦礫が散らばっているはずの地面に塵一つ転がっておらず、そこには元々建ててあった場所に新しく家屋を建てている村人たちがいた。
俺はその光景をぼーっと眺めていた。それから約数分。俺に気がついたラパンが声をかけてきた。
さっきまで瓦礫を運んでいたのだろう。土埃で服が汚れていた。
「アスト様!おはようございます。」
『おお、・・・おはよう。』
「さっきからずっとここにいらしたようですけどどうか、しましたか?」
『いや、すごいと思ってな。昨日のことで村はめちゃくちゃになって、落ち込んでいてもおかしくないはずなのに復興に向けてみんな笑顔で活気に満ち溢れている。』
「このままじゃいつまで経っても野宿ですから。くよくよしている時間なんてありません。それに、アスト様にもこの村を好きになってもらえるようにって早く元通りの村にするためにみんな張り切っているんです。」
嬉しかった。余所者の俺を村人みんなが暖かく迎えてくれたからだ。前世でもこんなにも歓迎されたことは一度もなかったと思う。歓迎してくれたこいつらのために俺に何かできることはないだろうか?
『俺にできることがあったら何でも言ってくれ。』
「奥の方に瓦礫がまだ転がっているので、運ぶのを手伝って頂けませんか?」
『まかせろ!』
俺は、ラパンの後ろをついて行き、残っていた瓦礫を森に運んだ。
そして瓦礫を粉々に砕き、森に返した。
煉瓦は全て自然のものでできているため森に返しても問題はないのである。
非常にエコだと感心した。
現代日本でもぜひ真似をしてほしいほどである。
瓦礫の処理を終え、村に戻ると、村長が慌てふためいていた。
「困りましたね。どうしましょう・・・。」
『キロス、何かあったのか?』
「それがですね。家を建てるための煉瓦が足りないんですよ。それに、日々の生活に使われていた魔道具も軒並み壊れて使い物になりませんし、服も大半は燃えてしまったためありません。しかも!畑に植えていた人参が全部ダメになってしまったんです!」
「「「なんだってぇぇぇええええ!!!!」」」
キロスの話を聞いた村人たちが作業をやめて、集まってきて村長に詰め寄った。
「人参がダメになったって本当かい⁉︎」
「人参がないなんて………。もう終わりだ。」
「俺たちは、ここで死ぬのか?」
村人の口からはネガティブワードが次々と飛び出してはばったばったと倒れていった。まさに死屍累々である。
こんな状況になっているのは家を建てるための煉瓦が足りないからでもなく生活必需品の魔道具が壊れているからでもなく洋服がないからでもなくまさかの人参である。
兎は人参を好んで食べているのは知っているがブロッコリー、小松菜、りんごなど他の食物も食べる。
森にはりんごも生っていたし食い物には困らないはずだ。
この状況はいささか大袈裟だと思ったので村長に質問してみた。
『・・・人参がないのって、そんなにまずいの?』
「問題ですよ!我々兎人は人参が主食というか人参しか食べません。我々にとって食糧にんじんがなくなるということは死を宣告されているのにも同然なんです。」
なるほど。兎と違い兎人はニンジンしか食べないのか。ということはつまり人参がない=餓死ということになるわけだ。それなら村人たちの地獄絵図この反応も無理ないな。
「食糧にんじんはあとどのくらい残っているんだ?」
「倉庫に、人参が100本入った袋が12袋ほど残っています。」
この村の住人はざっと数えて約80人。一人当たり1日3本食べるとしたら1日で大体240本の人参を消費する。つまり、倉庫にある人参は、5日後にはなくなってしまう。
『どこか、別の集落や町では買えないのか。』
「無理ですね。今は、収穫時期ではないので。私たちの村では、魔道具で生育状態を完璧に管理していたため一年中収穫できます。が他のところでは種を植え始めた頃ですのでどこにも売っていないかと。弱りましたよ本当に。」
ここは、兎人みんなの主として解決策の一つでも出さなくては!と頭をフル回転させた。
考えること5分。
俺のスパコンが一つの解決策を打ち出した。
『村長、人参の種は、残っているだろうか?』
「ええ、今度植えようと思ったものが、残ってますが?」
『すぐに用意してくれないか。この食糧問題もしかしたら何とかなるかも知れない。』
「本当ですか!!!」
解決に必要なものを全て告げると、
キロスは、「お任せください!」と大張り切りで準備をし始めた。
キロスの様子を見るに必ず必要なものを全て揃えてくれるだろう。
俺は、一足先に畑に向かうことにした。
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