第3話 ステータスオープン
『なあ………イサクさっきのレベルアップとか言ってた変な声、もしかしてお前にも聞こえていたのか?』
「精霊もレベルアップしたんだ!? よかったな!」
『あの声はいったい何なんだ?』
「え? 知らないの? 精霊なのに⁉︎」
子供達はキョトンした顔で俺を見つめてくる。
(俺、精霊じゃないんだけど……説明するのめんどくさいしもうそれでいいや。)
イサクによるとさっきの声は神の声と呼ばれ【レベルアップ】した時や【スキル】を手に入れたりした時など生物が何らかの成長をした時に聞こえるらしい。
前世が地球人の俺にとっては、何とも不思議な現象だが、こちらの世界では至って普通の出来事みたいだ。
ちなみにだがレベルアップとは厳しい訓練や修行、”モンスターと戦うこと”で魂が成長することを指し、その中でたまに獲得できるのがスキルらしい。
スキルをチェックするにはえっと、確か……。
『ステータス オープン』
ステータス
名前:名無し
種族:*#$&¥%?
LV:40
HP:64
MP:33
攻撃力:27
守備力:35
精神力:90
敏捷性:125
称号:兎を愛せし者、兎人族の主
加護:兎神の加護、邪神の目
技能:世界図書館、思念伝達、伸縮自在、 魔力感知、魔視、魔聴、吸収、放出、貯蔵袋、光合成 再構成
耐性:呪術無効
魔法:ーーー
『おお! 本当に出てきた…。』
イサクが教えてくれた通りに、ステータスオープンと唱えると、目の前には、半透明のゲーム画面のようなものが浮遊していて、画面には個人情報がずらりと記載されている。
老若男女誰でも自分のステータスを見ることができるらしく神の声と同じく異世界では普通の出来事らしい。
……すごいな異世界。
空中に表示される画面とか、脳に直接語りかける音声とかアップルもびっくりのとんでもないオーバーテクノロジーだぞ。
もしかしてこれも全て魔法の力がなせる技なのか?
は! いかんいかんつい考えこんでしまった。
気になることがあると周りが見えなくなるのは悪い癖だな。
前世でも会議中だってのをすっかり忘れて別のことを考えていたら話をまったく聞いてなくてよく怒られたから気をつけないとな。
さてと、気を取り直してステータスの確認しますか。
これが俺のステータス。……ってレベル40⁉︎
随分レベルが高いな。
もしかして、さっきのスライム倒したのでこんなにレベルが上がったのか⁉︎
スライムでこんなにレベルが上がるって、俺ってどんだけ弱いんだ……。
うん?
文字化けしているところがあるな。もしかして故障か?
ステータスが分かればこの世界の俺はどんな存在なのかわかると思ったんだけどな。
よりにもよってそこが文字化けしてるとはますます気になる。
この世界の俺は一体何者なんだ?
まあ、分からないことを考えていても仕方ないし、この事は一旦忘れよう。
それにステータスには他にも気になるところがあるしな。
目の前のステータス画面をタップしてみる。
【称号】
兎を愛せしもの……自分の命を投げ出すほどに兎を愛している者に送られる称号。
これは、おそらく前世で兎を助けたことで手に入れたのだろう。
だが、気になるのは次のやつだ。
兎人族の主……兎神に認められ、兎人族の主となったものに与えられる称号。
兎人族……大きな耳をもち毛むくじゃらの体にまんまる尻尾のウサギと人の要素を持つ存在なのだろう
その兎人族の主に?俺が?
ふふ……やったー!
もふもふパラダイスだ!
なんで、兎人族の主として認められたのか分からないけど、とにかくありがとー!兎神様。
おかげで、辛い異世界生活がとてもハッピーになったぞ〜!
兎人族に会ったら是非とももふもふさせて頂きたいものですな。
次は、加護か。
なんか物騒な文字が見えて怖いけど、とりあえず見てみるか。
【加護】
兎神の加護……敏捷性の成長速度が2倍になる。全ての呪いが無効化される。
邪神の目……邪神と敵対したものの魂に刻まれ、この加護を持つものは存在が朽ち果てる。
また、兎神様からだ。
なんでか、分からないけど俺、兎神様にめちゃくちゃ愛されてるな。
それに、兎神の加護すごい能力だ。
敏捷性が上がれば、危険なモンスターと遭遇しても逃げられるし、呪いの無効化で呪術対策もばっちりだ。
危険な異世界において大きなアドバンテージをもらった。
兎神様本当にありがとう!
だけどこの邪神の目ってやつの方はかなりやばい。
何だよ!存在が朽ち果てるって怖すぎるだろ!
はっ!じゃあまさか俺という存在はそもそも生まれて来なかったってことになるのか。
両親からも友達からも忘れられて楽しかった思い出もみんなの心の中から消えてしまったのか。
ふざけるな! こんなの、加護じゃなくて呪いじゃねえか!
…………待てよ。
じゃあ何で俺は、今生きてるんだ?
存在が朽ちてるんだったら転生できていないはず……どうして俺は転生できたんだ?
…………そうか!
おそらく兎神の加護が邪神の目を加護じゃなく呪いと判定して無効化したんだ。
そのおかげで俺は無事転生できたんだ。
ってことは、俺、誰にも忘れられてないんだ。よかった〜! (みんな元気にしてるかな。)
なんでとかいつとか邪神に呪われた理由は、分からないけど加護をくれておれを助けてくれた兎神様には、本当に感謝しかないな。
ゴホン!
それじゃあ気を取り直してステータス続きを見よう。
最後は、スキルか。
そういえばさっき、神の声が言っていたものの他にもスキルがあるな。
もしかして、兎神様がサービスしてくれたのか?
早速見ていこう。
【スキル】
世界図書館ワールドレコード……この星が誕生してからの全ての出来事、事象が記録されたデータベース。本人の知りたい物の情報を表示する。
世界図書館…………なんだか凄そうだ。
試しにこの草について調べてみるか……。
ポポンガ草:薬草の一種。中級ポーションの原材料。綺麗な水辺の付近に生息している。
こっちのキノコはどうだろうか。
モノケ茸:キノコ類の一種。食べると幻覚が見える毒キノコ。毒針や毒薬の原材料。
光の当たらない水捌けの悪い地に生息している。食用不可。
凄いな! 名前だけじゃなく、生息地や、用途、毒の有無まで分かるのか。
このスキルがあれば飢え死にすることは、ないな。
美味しい森の幸が食べ放題だ。
まあ、俺は、口がないから食べられないけど……。
あーあ、生き返られたのは、ありがたいけどどうせだったら味覚がある生き物に生まれたかった。
まあ、嘆いていても仕方ない。
俺は気を取り直してスキルの確認をする。
思念伝達テレパシー……心の中で思ったこと、考えたことを相手の心の中に伝達する。
植物で発声器官もないのに会話できていたのはこの能力のおかげだったか。
伸縮自在……体を自由に伸び縮みさせることができる。ただし熟練度によって伸縮性は変わる。
まるで某作品のゴム人間みたいだな。
さて、実際にやってみるか。
どうやるんだ?
え〜と……こうか?
ビュン!
おお! だいぶ伸びたな。三メートルくらいか。
んで、戻したい時はこうか。
うおっと!
こりゃあ、まるで如意棒だな。
例えば、遠くの木とかに巻き付いたりすれば移動手段としてもつかえるな。
そうだ!こうやって体伸ばして頭を振るイメージで思い切り振理下ろすようにすれば……。
うん。
攻撃手段としても使えそうだ。
さて、次は、
魔力感知……空気中を漂う魔素を感知して周囲の状況を知ることができる。熟練度により感知できる範囲は変わる。
どこに何があるかいち早く分かるのは助かる。おっかない魔物との戦闘を避けられるからな。
魔視……魔力感知の応用。視力を得る。
魔聴……魔力感知の応用。聴力を得る。
なるほど。
このスキルのおかげで目と耳がなくても見聞き出来ていたのか。
吸収……対象を体内に取り込むことができる。対象範囲は、物質として存在しているものに限る。熟練度により取り込める最大量が変わる。
貯蔵袋……吸収したものを溜めておく貯蔵庫。吸収のレベルに応じて大きさが変わる。
放出……体内に取り込んだものを放出することができる。 熟練度により一度に放出できる量が変わる。
再構成・・・体内に取り込んだ物質どうしを掛け合わせて新しい物質を生み出す。
光合成・・・光を浴びることで傷を癒すことができる。熟練度により回復量と回復速度が変わる。
・・・・これは、使い方次第だな。使い方を間違えなければ、自衛手段として役に立つはずだ。
例えば、相手が火を吐くモンスターだったら事前に水を吸収しておけば、取り込んだ水を放出して、防ぐことができる。
他にも色々な使い方ができるはずだ。それに光合成があればちょっとやそっとの攻撃でことはないだろう。
《限界突破を確認。*#$&¥%の種族限界を超えました。これより進化を開始します。》
ステータスを確認していると再び、頭の中に神の声が響いた。
すると、俺の体に異変が起きる。
腹の奥が熱くなり、細胞が弾けるような感覚に陥った。
一つ一つの細胞が増幅して、身体が再構築されているのを確かに感じる。
身体の熱が冷めると、俺は開きっぱなしのステータスに目を向ける。
名前:名無し
種族:*#樹&¥?
LV:1
HP:64
MP:33
攻撃力:27
守備力:35
精神力:90
敏捷性:125
称号:兎を愛せし者、兎人族の主
加護:兎神の加護、邪神の息吹
技能:世界図書館、思念伝達、伸縮自在、魔力感知、魔視、魔聴、吸収、放出、貯蔵袋、光合成 再構成
耐性:呪術無効
魔法:ーーー
種族のバグが変化して、枝という文字が現れた。
だが、自分を枝とすでに認識していたので今更感が否めない。
しかし、進化を終えると自分の体に大きな変化が訪れたことを感覚で理解した。
……腕が生えた!それに、足もある!
なんと進化したことによりさっきまで真っ直ぐな枝だった俺の体が枝分かれを起こし手足のようなものが生えたのだ。
歩ける……歩けるぞ!
それにこうして肩も回せる。
枝の体は人間だった頃と同じ感覚で操ることができた。
他にも色々試してみよう。
走れるしジャンプもできる。ほら、バク転だってこの通り!
ついに俺は自由を手に入れたんだー!
この時の俺は、完全に油断していた。
気になることがあって注意力が散漫していたのが原因だろう。
動けずに不便だった体が自由に動けるようになって浮かれていたのもある。
気を引き締めねばならなかった。
なにしろここは安全な日本じゃない。
多くのモンスターが跋扈する深い深い森の中。
いつ危険な目に遭うのか分からないのだから。
ゴァァァア
けたたましい鳴き声が聞こえた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます