薬王と剣姫
@yumiuta
第1話 絶縁
ここはどこだ。
周りを見たら、俺の住んでいた日本ではないことは確かだ。
それに俺は誰だ、日本に住んでいたとこは覚えている。
だが、それ以外のことが思い出せない。
なぜ、こんなところにいるんだ。
「なんという失態だ、お前はもう俺の息子ではない」
知らない大男が突然叫びだした。
「薬神の加護だと、我が武の名門ヴォルクシュタインの恥さらしめ。」
大男は俺に向かって、さらに罵倒してくる。
「我が家の嫡男があろうことにも武神の加護ではなく、薬神の加護。汚点だ、汚点、我が家にはお前は必要ない、魔の森に捨ててこい。」
それを聞いた周りの兵士たちに俺は捕らえられてしまい、縄で手を縛られ、目に布をまかれて、口にも縄をされた。
「お前みたいな、出来損ないをこれまで育ててきたと思うと虫唾が走るわ。魔の森に行き、魔獣の餌となれ。それとも武の加護をもたずに武の家に生まれたものとして、魔獣と戦ってからくたばれ。」
そういうと男は剣をもってきて、目の前に投げ出した。
「これはお前にやるはずだった剣だ。しかし、武の加護をもたないお前では使いこなせないだろうが、この剣で戦い最期を迎えるがよい」
大男がそういうと兵士たちは主人公を馬車にのせ、出発した。
それか馬車に乗り、何時間、何日たったのか分からないまま、俺は馬車に揺られながらどこかえ向かっていた。
「ユーリ様も武の加護さえあれば、こんなことにはならなかったのにな。」
「ほんとにな。」
「可哀そうだが、伯爵様のご命令だ。俺らにはどうすることもできない。」
兵士たちの会話を聞いて、俺の名前がユーリで、伯爵家の長男だったということが分かった。俺自身前世の記憶とユーリでの記憶がなく、どんな態度で生活していたかも思い出せない。
ただ、兵士たちからは憐れむ声も聴けたので、性悪ではなかったのだろう。
「でも、伯爵家はどうなるんだろうな。」
「ユーリ様が継ぐとみな思っていたからな。」
「武の加護さえあれば、いい後継者になっていただろうにな。」
少しは慕われていたのか。
「それにしてもこの剣で戦えは厳しいな。」
「そうだな。この剣は加護による依存が強いと伯爵様もおっしゃられてたしな。」
「薬神の加護じゃ、破壊力もないだろうな。」
そうかだから、あのとき俺では使いこなせないと言っていたのか。
「俺たちみたいに平民で、加護がなくても生きていけるやつと違い、貴族は加護が大きな意味をもつからね。」
「ちげーね。俺ら平民とは全く違う考え方だからね。」
「家族がいるから、伯爵様にはさからえん、ユーリ様申し訳ございません。」
加護は貴族特有のものなんだな。
それにしても兵士たちから好かれていたんだな、乗り移る前の俺は。
しかし、前世もこの世界のことも忘れてしまっている。
なぜなんだ。
俺は馬車に揺られながら考えていた。
そして、その時はきた。
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