ジラルドの加勢
「ハーバート!!」と、その時声がした。クラウスだ。
クラウスは、相手の魔法使いを数人倒したようだった。返り血を浴びてはいるが、無事だ!
だが、クラウスが駆け寄って来る前に、ハーバートの前にたどり着いた者がいた。ジラルドだ!
「ハーバートさん、もう終わりですか??」と、ジラルドが剣を構えて言う。相手の魔法使いがちょっと警戒心を抱く。
「俺がいるならどうです??2対1なら、倒せますよ!」と、ジラルド。
「ジラルド・・・!!」と、ハーバートが剣を握りなおす。
「俺には待っていてくれる人はもういない。亡くなった。だが、あんたにはルシアちゃんがいるでしょ。こんなところで、死ぬな!!」と、ジラルドが叱咤激励する。
「なんの、エルフ二人ごときに、私はやられぬ!帝国でも屈指の魔法使いなのだぞ!!エルフ!!」と、その魔法使いが叫ぶ。
「帝国屈指の魔法使いはな!侵略行為に手を貸したりしないんだよ!!」と言って、ジラルドが剣で斬りかかる。
「抜刀・冬の青き刃・凍!!」と、ジラルドが相手と数分間、剣劇を繰り広げる。ハーバートも加勢する。
二人で本気で斬りかかっても、その魔法使いの繰り出す精霊魔法には、歯が立たなかった。
帝国屈指の魔法使い・・・というのは嘘ではないらしい。
(クロード様が悪に堕ちなくてよかったぜ、まったく・・・)と、ハーバートは内心思った。
二人は悪魔の技も使ったが、その魔法使いにはかわされてしまった。どうする。相手の体力が減るのを待つか。
一般的に、エルフの方が人間より体力もあり、体が強いとされる。
だが、周りを見れば、人間の死体がおびただしい数が、広がっていた。エルフが圧倒的に勝っている。
相手をかたずけたヴィンセントが加勢してきた。
「三人で倒すぞ、ハーバート!!」と、ヴィンセントが叫ぶ。
3対1では分が悪いと思ったのか、その魔法使いは、同胞もやられているのに気づき、撤退するそぶりを見せた。
だが、この魔法使い一人を放置しても、ハシントの善良なる市民を殺し、食物を奪うのであろう。疫病の薬も。
むごいが、残ったエルフで、その魔法使いは数名のエルフで串刺しにした。
エルフ軍800名のうち、約100名が亡くなった。
贖いのセイレン ~二人のファウスト~ 榊原 梦子 @fdsjka687
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