死を前にして

 魔法使いたちは、そのいた痕跡を残していなかった(わざと消したのだろう)ので、ハーバートたちは5手に分かれて捜索することにした。戦力分散・・・にはなるが、魔法使いたちを早く止めないと、ハシントの国は滅亡するだろう。

 ハーバートのいた隊には、ヴィンセントとクラウスもいた。偶然だったが。

 5つの隊のうち、どこが、悪さをしている魔法使いたちと当たるか分からなかったが、5つの隊は、それぞれ別の村へ向かった。

 5つに戦力を分散させてから1週間後、ハーバートたちはついにその、帝国から送り出された魔法使いの一軍と相まみえた。

 ちょうど、魔法使いたちが、シャイン・ソードや精霊魔法を使って、市民を殺しているところだった。

「ちょっと待て、お前ら!!」と、隊長のアラスターが叫ぶ。

 ざわ・・・・と、魔法使いたちが動きを止める。

「エルフだ!」という声が上がる。魔法で長い耳を隠しているとはいえ、手練れの魔法使いならば気づく。

 ハシントにも、戦える魔法使いはいたが、数は圧倒的に少なかったし、ハシントの魔法は、あまり戦闘向けとは言えない。

「帝国の魔法使いを止めろ!!!場合によっては殺しても構わん!!」と、アラスターが剣を抜き、前方を指した。

160名前後のエルフ軍VS100名前後の帝国の魔法使い、という争いの図になった。

数の上ではわずかに勝る・・・とはいえ、戦う途中で、エルフ軍は劣勢になってきた。相手が強すぎるのだ。なんといっても、帝国のエリートの魔法使いが相手だ。エルフより魔法の扱いには長けている・・・かもしれない。

「てめぇら!!」と、斬り合いの中、ハーバートが相手の魔法使いに叫ぶ。

「歴史も権威もある帝国の魔法使いが、こんな虐殺に手を貸して恥ずかしくないのか!!悲しくはないのか!!」と、ハーバート。

「それがどうした!!」と、相手の魔法使い。

「ハシントの、病にきく薬や、暑さに耐えられる食物の種が必要なんだよ!!もううちの国は半数が死んだ。このままじゃ全員死ぬ。ハシントの国に、最初は俺らだって、和平を保ちつつ、苗や種をくださいと申しでた。だが、この砂漠の民はそれを断固拒否した。こうするしかなかったんだ!!」と、斬り合いをしながら、魔法使いが叫ぶ。

「アーネト・ヘラーク・テフネト、強(ごう)深瀬(しんせ)!!」と、相手の魔法使いが叫ぶ。

「チッ!!!」と言って、ハーバートはエルフの星の魔法で、襲い掛かる濁流の竜を防ごうと負けずに技を繰り出した。が、相手の方が勝り、ハーバートは濁流の中に飲み込まれてしまった。

「このまま窒息死か水死か・・・??」と、ハーバートは意識下で思った。

(俺を使え、宿主さんよぉ!!)と、久しぶりに悪魔の声を聴いた。ファウストの声だ。

(抜刀・粛正・ザ・ファウスト!!)と、ハーバートが心の中で叫び、剣をふるった。

「なにぃ!!??」と相手の魔法使いが驚く。

 確かに、水量もある濁流で相手を閉じ込めたはずなのに、それを破って、黒い光が放たれ、その隙間から、ハーバートが飛び出て来た。

「キサマ・・・まさか悪魔と??」と、相手の手練れの魔法使い。

(俺も死ぬのか・・・・??)と、ハーバートは愕然とした。相手が強い。


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