ラ・リゼティクルとクロード
(クロード神、大丈夫ですか?!)と、クロードの脳裏に声がした。ユーフェミア神の声だ。
(エアレーズングには今、ハシントの内乱を止めに行ってもらっている。我々では止めきれないし、人手も足りない)と、アテナ神の声がする。
(俺は平気です。が、今の状態では、イブハールの内側が探れません)と、手足を鎖につながれて牢屋にいるクロードが神々と通話した。
クロードが牢屋に閉じ込められて3日目、いつものように拷問を受けたあと、口から血をぺっと吐いて、クロードは神々と話をしていた。と、その時、深夜、物音がして、「クロードさま、」と呼ぶ声がした。
「――誰です??」と、クロードが、味方の気配を察知して、小声で言った。
「わたくしを覚えておいでですか、ラ・リゼティクルです」と、女性のか細い声がした。
「・・・世界決戦の時の??」と、クロードが一瞬言葉に詰まり、言う。
「その通りです。助けに参りました、賢者様」と、ラ・リゼティクル。貴族の女性だ。
「あなたなら、てっきりエアレーズングの一員になって、逃げていると思っていましたが」と、クロード。
「ええ、わたくしもエアレーズングの一人です。ですが、賢者様がお一人で残ると聞き、父と一緒に、賢者様を助けるため、目を赤くする魔法を使い、機会をうかがっていました」と、ラ・リゼティクル。見れば、牢屋の鍵のほか、数本の鍵を持っている。
「さ、早く」と、ラ・リゼティクル。牢屋の戸を開け、もう一つの鍵で、クロードの手の鎖の鍵を解く。
「ありがとう、ラ・リゼティクルさん・・・」と、クロードが痛みに苦笑しつつ言った。
手と足枷の鎖を解いてもらい、自由の身になったクロードは、急いでエルフの女性に魔法で姿を変えた。目は、ラ・リゼティクルと同じく、わざと赤くしている。
「ここから早く行きましょう!」と、クロード。
二人は、足早に地下牢から脱出した。
*
「ロディ、あなたも行っちゃうの・・・?」と、エアレーズングの非戦闘員のキャンプ地で、ルシアがローデヴェイクに行った。二人は、森の中、立って話をしていた。集落から少し離れたところで。
「ルシア、悪いが、俺は戦わなければならない。俺は戦える、ここでおとなしく待ってるわけにはいかない。俺には力があるんだ!果たすべき使命がある!!」
「でも、ロディ、あなたには死相が見えるわよ!」と、ルシアが泣きながら叫ぶ。「行かないで!!」
そのルシアの泣き叫ぶ声に、ロードヴェイクも、心を揺り動かされたようだった。だが、振り向いて言った。
「君たちを守って死ねるなら本望だ・・・。ルシア、君はここを離れるな。俺からのお願いだ」と、ロディ。
「ロディ!!」
「姫様、もうやめましょう」と、ついてきていたアグネスが言った。
「・・・・でも・・・何もロディまで行くこと、ないのに・・・・」と、ルシア。
「ではね、ルシア!」と言って、ロディはそのまままっすぐ進み、ハシントへ遠征する一団約800名のところへ歩いていった。堂々と、しっかりと。
その幼馴染の姿を見て、ルシアは涙を流した。
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