イブハールからの追放
数日後、ロイ・ガルベストンのもとに、貴族の女性に連れられて、クロード神がやってきた。
世に噂される大賢者の来訪に、ロイはかすかに緊張したが、悪化する世界アラシュアの現状に心を痛めていたので、堂々とした態度で、クロード賢者との来訪に応じた。
ロイ・ガルベストンが敬礼したので、クロードも敬礼を返した。
「お招きいただき、光栄です、ロイ殿下」と、クロード。
「こちらこそ!あなた様のような方のお力を借りることを待ち望んでいました。今では、我々単独で、世界アラシュアを救うこともできない。時間がないのは、あなたもご存知でしょう」と、ロイ。
一方、アルハザード王の執務部屋。
「陛下、時の賢者・クロード大賢者が、今は神々らしいのですが、イブハールに勝手に来たそうで、今、ロイ・ガルベストン殿下とお会いになってると・・・!!いかがいたしましょう??」と、アルハザードの側近が言う。
「なにぃ?!?!」と、アルハザード王が怒りの形相をする。
「そんなものを許可した覚えはない!行くぞ!!!」と、アルハザードがマントをまとい、エアレーズングの会合場所へ向かう。
「クロード神!」と、アルハザード王が、エアレーズングの会合場所に出向く。この場所に王が来るのは、これで10回目だ。
(例のアルハザード王か・・・)と、クロードが警戒する。
「困ります、クロード神、いや、クロード大賢者様!ここはイブハール、勝手に神々が入って来られても困ります!」と、アルハザード。
「神々に対し、その態度は失礼であろう、アルハザード王!!」と、ロイが応じる。
「私は力のある、宵闇の帝王・アルハザードだ!誰も逆らうことなぞ許さん!!あと、前々からこのエアレーズングは、うっとおしいと思っていた!よって、王の名にかけて命ずる、解散せよ、と!!」
と、その時、アルハザードが、ふところから杖・・ロッドを取り出し、掲げようとしたので、ロイが慌てて、
「待ちなされ、アルハザード王!!動かないでいただきたい、我々を洗脳する気だろうが、そうはいかない。悪の王笏座・・・クロード賢者が教えてくださったことだが・・・この名前に見覚えはないかな??」と、ロイ。
アルハザードが、ピタリと腕を止める。
事態を重く見たクロードが、ロイの前に立ち、シャイン・ソードを出して、アルハザードに対峙する。
「妙な動きしたら、腕ごと斬り落とす。いいな、アルハザード陛下!!」と、クロード。その殺気に、さすがのアルハザードも動けない。
「悪の王笏座・・・そして悪魔ルシファー。それがあなたの正体では・・・??」と、クロード。
「ええい、もういい!!」と、アルハザードが、途中まで掲げかけたロッドをおろす。
「エアレーズングに属するエルフは、本日をもってイブハールから追放する!!永久追放だ!!贖罪の烙印もおして出て行ってもらう!!永遠の命がそんなにいらないなら、喜んで出て行くといい!!」と、アルハザード。
「贖罪の烙印・・・そんなもの、押させませんよ!!」と、クロード。エアレーズング3000人の中には、幼い子供や戦えない女性も含まれる。軍事力でいえば、アルハザードの洗脳軍の方が勝っている。
アルハザードの後ろから、焼きごてを持った召使いが4名出て来た。これを首の下らへんに押し、エルフの永遠の命という特権を奪うつもりなのだ。
ヴィンセントとクラウス、ロディ、ジラルド、その他数名が、その焼きごてを持った召使いに剣を持って対峙する。
「早く行け!!」と、クラウス。
クロード賢者は、アルハザードの首元に、剣を突きつけたままだ。
ハーバートと、父のエッケハルトも手伝い、一般人をイブハールの外へと逃がす。
エルフは、魔法が使えるが、男性は魔法で、長い耳は隠せるものの、女性は耳は隠せないようになっていた。逃亡をはばむためだ。古い慣習だった。
クロードとアルハザード王の斬り合いも始まった。アルハザードが、懐から短剣を取り出し、クロードに数本投げつける。
それをクロードが華麗にかわす。
「始めましょうか、クロード大賢者!」と、アルハザード王。
「ルシア、お前も一般人に交じって、行け!!俺はあとで合流する!!」と、ハーバートが言った。
ルシアとナーラライネンは、涙ながらに、ハーバートと別れ、イブハールを後にするエアレーズングのメンバーとともに外界へと向かった。
「聞け、アルハザード王!!俺らエアレーズングは、新たなるエルフの王として、ロイ・ガルベストン陛下を王とする!!アルハザード王は認めない!!」と、ジラルドが叫んだ。
こうして、新たなる王を掲げて、エアレーズングの民の、放浪の日々が始まった。
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