第五章 新たなる王

エアレーズング

第5章 新たなる王


 イブハール歴6529年。世界アラシュアを守るための組織が、エルフの中にこっそりとできた。「エアレーズング」という名前だった。意味は「救済」だ。

 エアレーズングを起こし、統括していたのは、ロイ・ガルベストンという王族だった。

「私も、エアレーズングに入りたいわ」と、部屋で、ルシアが夫のハーバートに言った。

「エアレーズング??」と、ハーバートが聞き返す。「なにそれ??」

「世界アラシュアの困っている人間たちを助けようという一団よ!!最近できたらしいの!」と、ルシアが意気込んで言う。

「私たちにも、できることがあるはずだわ!」

「エアレーズング、ねえ・・・・」と、ハーバート。

「ルシアが入るなら、俺も入るよ」と、ハーバートが言った。

「けど、ルシアが入るのはまずいんじゃない??ウルドとして働いてるんだから、立場上、非常に悪いだろ」と、ハーバート。

「お兄ちゃん、そんなこと言ってたら、世界アラシュアは滅びるわ!エルフは、人間を見守るために生み出された者。使命は果たさなきゃ」と、ルシア。

「珍しいな、君がそこまで意気込むなんて」と、ハーバート。

「だが、確かに人間の方々が今困っているのを見捨てては置けないな・・・。分かった、お兄ちゃんも入る」と、ハーバート。

 エルフの人口は、約1万人。そのうち、エアレーズングに入っているのは、男女合わせ3000名を超えた。

 今や、宵闇の帝王・アルハザード王にとって、無視できない存在になっていた。

 アルハザードは、元賢者の、クロード・ロキ・グラニエをひどく嫌った。

 元賢者からの手紙も、破棄し、オーデル王と違って、話し合いにも応じようとはしなかった。

 イブハールの内情を心配したクロードは、この「エアレーズング」の長・ロイに連絡を取ってみることにした。

「ついに来たか・・・!!」と、ロイ・ガルベストンはにやりと微笑み、元賢者で今は神々の一人である、クロード神からの手紙をワクワクする思いで読んだ。

 ざっと、クロード神の自己紹介と、エルフと人間の両方を助けるために協力してほしい、との旨が書かれていた。

「あなたのことは知ってますよ、イブハールからずっと見てきましたから、クロード大賢者・・・」と、ロイは密かに呟いた。自室で、手紙を読みながら。

 ロイは、返事を書くため、羽ペンで羊皮紙にインクをつけた。

「 クロード神へ  エアレーズング代表・ロイ・ガルベスンより 

 

 お手紙拝見しました、クロード大賢者のことは、かねがね知っております、イブハールより、いつも下界のことは見守っていました。これでも、エルフの武人で、王族です。

 しかし、この飢饉と疫病が、悪名名高いシェムハザのせいだとは知りませんでした。

 一つ、大賢者様にお伝えしたいことがあるのです。エルフの軍勢、約2000名は、依然としてアルハザード王が支配しているのですが、どうもその者たちの様子がおかしい、と家族から連絡があったのです。目が虚ろとしている、挨拶をしても返事がない、瞳の色が赤い、などと、まるで何かに取りつかれたような風貌になっている、と。

 アルハザード王自体、どこか様子が変なのは以前から言われていますし、誰か、エルフを裏で操っている黒幕がいるのではないか、と我々は思っております。

 賢者様は、どうお考えですか。わたくし共は、クロード賢者様の味方です。人間を助けたいと思っています」



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