宵闇の帝王

ノストラダムス神とアテナ神で、シェムハザを封印する手立てを考えついた、とだけクロードは知らされていた。世界決戦での、ハデスのこともある。仲間内でも、疑うことにしたのだ。なので、シェムハザ封印の法は、神々の内でも、限られた者しか知らない。

 クロードは、永久に王笏座の加護を得ることを許された一人だった。エルフの王・オーデル王に続き、二例目だ。

 だが、アテナ神によれば、シェムハザは地下から、世界アラシュアの大地を狙っているらしく、いずれ世界アラシュアの、肥沃な大地は荒れ果て、飢饉がくるかもしれない、そこまでは防ぎきれない、と話していた。

 クロードは、何度か、地下に封印されているシェムハザと戦うことを頼まれた。だが、いざ戦おうと地下に潜っても、シェムハザは逃亡して、姿をくらましたのだった。

 シェムハザ討伐に向けての情報収集もしていたクロードだったが、時は無情に過ぎ、世界決戦の246年後、イブハール歴6237年、エルフの王・オーデル王が、何者かに殺害された。発見者は、妹のミスティーナ女王だった。

 死因は毒殺によるもの・・・・と検死結果が出ていた。クロードは、神界から、かつてともに冥王ハデスと戦った、オーデル王に哀悼の意を込めて、墓前に花束を送った。

 次の年には、エルフは新たに王をたてた。アルハザード王という、武芸に長けた、オーデル王の近親者だった。

 神々の中には、アルハザード王の即位を疑問視する声も上がったが、結局はエルフのことはエルフに任せる、との判断に落ち着いた。アルハザード王が、悪の王笏座に支配されているとは知らずに。

 悪神シェムハザによる、世界アラシュアの大地の汚染問題が風化されだした、イブハール歴6456年頃・・・・アルハザード王即位から約200年後、忘れたころに思い出すかのように、世界アラシュアの大地は荒廃した。

 各地で、飢饉や疫病がはやった。荒れた大地が作物を枯れさせ、汚れた水が市民の命を奪った。

 

 イブハールでは、「人間は見捨ててイブハールを守る派」と、「人間の食物争いを止め、神々と協力する派」の二つに真っ二つに意見が割れた。飢饉や疫病は、当初は短期間のものであるかとも噂されていたが、とどまるところを知らず、世界アラシュアは、もはや人口がみるみる減っていった。

「人間を信用するな」と、アルハザード王が宣言した。

「人間を助けようとイブハールを出る者は、この私・宵闇の帝王・アルハザードが、イブハールから永遠に追放する。この飢饉や疫病は、悪神シェムハザが一枚かんでいるらしい。その報告が、神々から来た。我々には対処できない、重大な問題である。事態が落ち着くまで、みなイブハールから出ないように!!」と、その頃ではすっかり皆から「宵闇の帝王」と呼ばれていたアルハザード王が、おふれをだした。疑問視する声も多かったが、誰も逆らえない。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る