平和の終わり

「心配はいらぬと言っておる。さがれ」と、アルハザードが言った。その目はどこか虚ろだ。

「は、はい、陛下・・・」と、衛兵が、王の無事を一応確認し、持ち場に戻る。


               *


(ルシア・・・・)

 と、寝床で一緒に寝ながら、ハーバートがルシアの髪をかきあげる。

「ルシア・・」と、言葉に出して言ってみる。妹は、眠り込んで起きない。時刻は午前4時だ。

 もう少しで夜明けだろうか。

 ハーバートはむくっと起き上がり、自分の部屋の机の座った。二人は、結婚前と同じ、2つに分かれた、だがつながっている部屋で暮らしていた。

「親愛なる ルシアへ」と、ハーバートは置手紙を書き始めた。

 今日も、ジラルドと一緒に、剣術の特訓を、早朝からするのだ。

 しばらく長い文章を書いた後で、ハーバートは、

「君がいてくれればそれでいい。」と締めくくった。

 一緒にご飯を食べて、一緒に笑う。

 一緒に寝て、一緒に起きる。

 一緒に持ち帰った仕事で悩み、一緒に答えを出す。


 そんな毎日が、いとおしかった。


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