指輪の内側

「これで守護天使との契約も終わりだな」と、ジラルドが言う。

「天使セイレーンが、ルシア姫を守ってくださいます。加護のようなものです」と、ジラルドが言った。

「天使のご加護が、お二人にあるように、祈りをこめて。アーメン」と、ジラルドが言った。

 結婚式に出席している皆が、起立したまま「アーメン」と唱えた。

「お兄ちゃん、」と、ルシアが、「アーメン」と唱えた後、ハーバートにこっそり言った。

「指輪の内側を見て」と、ルシアが言った。

「?」ハーバートが、指輪を外して、その内側を見てみる。なんと、光る文字で、「兄は妹のために 妹は兄のために」と、刻んであった。朝の時点ではなかった文字だ。この指輪には、そもそも文字など刻んでなかったはずだった。

 やがて、見ているうちに、光は消えた。

「天使セイレーンが、認めてくださったのよ」と、ルシアが言って微笑む。

「君の指輪にも??」と、ハーバート。

「もちろんよ」と言って、ルシアが指輪を外して、内側を見せた。

 こうして、結婚式はおひらきとなった。

「ジラルドさま、」と、ルシアがジラルドに駆け寄った。

「今日はありがとうございます!これで、二人で楽しくやって行けそうです・・・アルハザード王からも逃れられるし!」と、ルシア。

「気にせず、ルシア姫」と、ジラルドが答えて笑った。

「俺にできることをやったまでです」

「それより、雨がひどくなる前に、早く宮殿の中へ。行きましょう」と、ジラルドが言った。

「ハーバート、おめでとう」と、ハーバートの先輩にあたるクラウスが言った。

「クラウスさん・・・」

「2000年間もお互い独身だったんだ、お似合いのカップルじゃないか」と、クラウス。

「そうっすね」と、ハーバートが照れる。

「ルシア、ハーバート!」と、母・ナーラライネンが涙ながらに駆け寄ってきた。

「いつまでも仲のいい兄妹でいなさい。両想いなんだから」と、二人を励ます。

「お母様・・・」と、ルシアがナーラライネンと抱擁する。

 続いて、ハーバートも、「母上・・・」と言って、母と抱擁を交わした。

「まったく、君たちときたら」と、エッケハルトが微笑む。

「アルハザード王の耳に入らないうちに、宮殿へ戻るんだね。ほら、傘」と、エッケハルトが、透明な傘をハーバートに手渡した。

「これから、二人で分かち合って生きていくんだ。いいね?僕からのアドバイスはそれだけ」

「はい、父上!」と、ハーバート。雨は小雨だが、若干ひどくなっている。



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